副業を赤字申告することで払った税金が戻ってくる

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 サラリーマンの多くは、「税金」について、不公平感を抱えているに違いない。確かに自営業者などに比べて節税の手段は限られているが、あの手この手で、ぎりぎりの抵抗を試みている人たちがいる。彼らは「サラリーマン無税族」と呼ばれる。

 節税しているサラリーマンの間で最もポピュラーな手法が、副業による収入に対し経費を計上して“赤字”になること。その赤字をサラリーマンとしての収入と相殺して確定申告し、天引きされた所得税を取り戻す方法だ。

 営業マンのA氏は昨年9月からネットでブログを開設しアフィリエイト広告(成果報酬型広告)による副業を始めた。ブログで商品を紹介し、誘導されたユーザーが販売サイトで商品を購入すると報酬が入る仕組みだ。12月までの収入は20万円。

 これに対し、新しく用意したパソコン代、通信費、ネット副業についてのセミナー代、ソフト代、家賃の一部といった経費を計上すると、100万円超の赤字になる計算だ。

 A氏の本業の年収は約500万円で、所得税と住民税の合計は15万円ほどだった。だが、副業の赤字分をサラリーマンの収入と相殺すると税金の計算のベースとなる「課税所得」がゼロになり、天引きされた所得税はすべて還付された。住民税は、1人数千円の「均等割」だけは払う必要があるが、所得に応じた税金(所得割)はゼロになったという。

「自宅の家賃や光熱費の一部も、副業に必要な部分だけ経費計上する人は少なくない。副業開始直後は赤字になるケースが多いので、とくに初年度は“税金ゼロ”になる人がいる」(税理士)

 古本や中古のDVD、CDなどを安く仕入れネットで転売する「せどり」も副業として人気だ。仕入れた商品は売れれば仕入額はもちろん経費となる。売れなければ「在庫」なので経費計上できないが、自宅に在庫を置くことで家賃の一部やネットで相場を調べる名目での通信費を経費として申告しサラリーマン収入と相殺する人も多いという。

 絵心のあるサラリーマンのB氏は趣味が高じ、イラストレーターの副業で年間100万円の収入を得ているという。

「画材などの費用や家賃・光熱費といった経費が180万ほどかかり、約80万円の赤字です。本業の年収は約500万円ですが、副業の赤字を申告することで、税金は約40万円のところ24万円まで圧縮できています。

 しかも画材は、イラストの仕事をしていなくてもどうせ趣味で買っていたもの。税金が減って手取りが数十万円近く増えたことで十分得をしています」(B氏)

 ほかにも、店舗に来店して接客態度などを覆面調査するミステリーショッパー、デザインやネーミングなど報酬の出るコンテストへの参加など、趣味と実益を兼ねた副業が人気だ。

 節税できているとはいえ、副業が赤字を出しているというA氏、B氏の例に矛盾を感じるかもしれない。しかし、多くの「副業節税サラリーマン」は家賃や商品の運搬に使う車など、本業のみでは計上できなかった経費を積み上げているのだ。

 中には趣味のサークルで知り合った“同業者”との飲み会を“勉強会”にすることで経費計上している人もいる。旅行が趣味で旅行ついでに購入したアクセサリーの販売を副業ではじめた夫婦は、旅行代の一部を仕入れ費用として計上し、所得税の還付を受けた。

 ただし、家賃や旅行代といった経費がどこまで認められるかは税務署の判断に委ねられる。最近では家族との食事や私的な旅行、キャバクラでの飲み代などまで経費として申告する人がいて、税務署も目を光らせている。そうした副業収入とは関係ない費用や生活費などは、むろん経費に含めることはできない。

 また、副業を始めてから一切の利益を出さず赤字続きでは事業とはみなされず、「単なる趣味」と判断される。副業が実態を伴っておらず悪質だと判断されれば、脱税として告発されることも考えられる。さらに、サラリーマンが副業をする際には勤務先の許可を得ておく必要があることをお忘れなく。

※SAPIO2015年12月号