めちゃくちゃな恋愛をしている女優も少なくないから。映画「愛を語れば変態ですか」福原充則監督に聞く

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11/28公開の映画『愛を語れば変態ですか』。インパクトのあるタイトルで監督デビューを果たしたのは劇作家・演出家の福原充則だ。大劇場の作・演出を務めたかと思えば何もない野原につくった特設の劇場で公演も行う。ふつうの人々のなかにある真理を切れ味鋭いセリフによって描く。先週放送された『視覚探偵・日暮旅人』(日本テレビ)や現在放送中のコント番組『SICKS』(テレビ東京系、毎週金曜0:52〜)でも脚本を手がけている彼が、長年の夢であった映画に挑み、いったいどのような作品をつくりあげたのか。


女優に興味がなかった演出家が、女優を美しく撮りたいと思うまで


──『愛を語れば変態ですか』はどういう経緯で撮ることになったんでしょう?
「プロデューサーが僕の芝居を見に来て、声をかけてくださったんです。僕はもともと映画監督になりたかった人間なので、『わーい!』と(笑)」
──原作は、福原さんがかつて上演された芝居なんですよね。
「そうです。昔、3回ほど作・演を依頼されてやったマンションマンションという劇団の作品です。1本目だし、自分でもどういう話かわかっているほうがやりやすいかなと僕から提案しました。これまで手がけた作品はむちゃくちゃなものも多いんですが、これだったらギリギリ映像化できるかなと」
──(笑)。「映像化できる」と思ったポイントはどこだったんですか?
「とにかく女優さんをきれいに、魅力的に撮りたかったんですよ。じつはこれまでは、女優というものにまったく興味がなかった。主宰しているピチチ5(クインテッド)という劇団でも、毎回女優は1人しか呼ばないという方針でずっとやってきました」
──すごく意外です。福原さんの舞台では、『墓場、女子高生』にキラキラした女優がおおぜい登場したり、『サナギネ』に出演していた岸井ゆきのさん、清水葉月さんのW主人公がとても魅力的だったりと、女優を輝かせる演出家の印象さえありました。
「あ、『墓場、女子高生』もひとつのきっかけになっていますね。あれは最初、ENBUゼミという演劇の学校のために書き下ろしたものなんです。受け持ったクラスに女の子が多かったから」
──女性がたくさん登場する作品にせざるを得なかった?
「そうです。でも書いてみたら面白かったんですね。僕、姉がいるので、庄司陽子先生のマンガをたくさん読んでたし、大島弓子先生のマンガにもさんざん影響を受けてきたんですよ。そういうことを急に思い出した」
──それで、女優というか、女性を描くことに興味が。
「年をとって余裕が出てきた、というのもあるのかもしれません。若い頃って、女優さんとの距離のとり方がよくわかんなくて、すぐ好きになっちゃってた(笑)。さすがにもう40代で、十何年芝居をやってきて、いい芝居をしたからって女優にほれなくなりました。そしたら冷静に女優を見られるようになった」
──なるほど(笑)。
「あと、僕はずっと男側の視点から恋愛の話を書いてきたんです。でも僕自身さほど恋愛によって成長しているわけではないので、ちょっと書くことがもうなくなってきて……。公演のたびに女優さんから女性側の視点による感想を言われたり、『私も演じたい』と言われたりして、どんどん考えるようになったというのもあります。女優さんの中にはめちゃくちゃな恋愛をしている方も少なくないので、参考になりますし(笑)」
──いざ興味を持ち始めたら男優さんよりも面白い部分があった?
「そうですね。情熱的な人が多いですから。それは、舞台でも映像でも、ものすごい数の人を魅了する集中力や人間力を、恋をすると一人の人にぶつけるわけですから、とんでもないですよ、女優さんの恋愛は。愛情が強すぎて生死に関わるんじゃないかというくらいの感じで人を愛している姿を見ると、ちょっと描いてみたいなと思ったんです。この作品も最初はそういう動機で書いたものです」
──なるほど。結果、『愛を語れば変態ですか』では黒川芽以さんがエキセントリックなまでの博愛精神を持った女性を演じていらっしゃいますが、とにかくかわいくて魅力的でした。
「ああ、ならよかったです」


笑いができればぜんぶできる


──キャストの皆さん、それぞれにインパクトがありますね。とくに永島敏行さん演じる不動産屋の特徴あるしゃべり方は、最初こそ不思議ですが、次第に「そういう人なんだな」と納得してしまいます。
「僕も、あのしゃべり方だった理由は説明してもらってないです(笑)」
──あれは永島さんからの提案だったんですね?
「そうです。リハーサル1日目に『監督、俺ちょっと考えたことあるんで』って話しかけてくださったそのしゃべり方がもうすでにおかしかったんですけど、面白かったんでお任せしました。面白さとリアリティの間で永島さんが考えてきてくださったアイディアです」
──不遜な態度のバイト役を演じていたキングオブコメディの今野浩喜さんとは、よくお仕事をご一緒されている印象があります。
「そうですね。とくに最初にやった舞台(『サボテンとバントライン』)は今野さんの初舞台だったんですよね。そういうこともあって仲良くしていただいています。といってもプライベートで遊んだりするわけじゃないですけど。ものすごく信頼しています」
──チャンカワイさんこと川合正悟さん(Wエンジン)も出演されていましたが、お笑い芸人の方が奇をてらった感じでなく、自然に場になじみながら魅力を発揮していたのが、観ていて心地よかったです。
「笑いができれば全部できる、と僕は思っているんです。どんなネタでも、観ている人に好かれないと笑ってもらえないですよね。だから何をやらせてもお客さんに好かれる人たちだと思います。間の取り方や、どんなふうに話のグルーヴを持って行くかもぜんぶわかっているので、芸人さんは全員芝居ができると思うんですよ。あとは照れの問題ですよね。まじめな芝居をやるのか、笑いの分量が少なくてもやるのか、あとは自分の好みの笑いでなくても割り切ってセリフを口に出してくれるのか。お二人ともその点では気が合う。いや、お二人の中では割り切ってやっているのかもしれませんけど(笑)」


200点が出ると喜べない、舞台という表現


──リハーサルはどの程度なさったんですか?
「1日半くらい。全部のシーンはやっていないです。僕はふだん、1ヶ月稽古をしている人間なので、ほぼ何もしていないくらいの感覚ですよ。でも黒川さんは『1日もやったら大丈夫』とおっしゃっていたので、すごく頼もしかったです」
──その頼もしさはまるで主人公・あさこのようですね。ご自分では、できあがりを観てどう感じましたか?
「なんて答えるのがベストなんだろう。『完璧です』『最高です』と言えればいいんですが、性格的にそういうことが言えない人間なので。ただ、役者の芝居がアップで観られるのは本当にうれしいことでした」
──ああ、そこは舞台ではありえないこと。
「はい。あとはスクリーンで観られるものをつくったということ自体がうれしかった。僕は映画にしろ舞台にしろ、劇場が好きなんですよ。若い頃、映画をずーっと観ていたんですが、べつに上映されている映画は何でもよかったんです。ただ映画館にいられればよかった。朝一の10時の回から最終回までいたことも何度もある。今回は、映画館にいていいという資格を得たというような喜びがあります」
──映画館で上映されるものを作ったことで資格を。
「あと、舞台って、うまくいった回もあんまりいい気持ちにならないんです」
──なぜですか?
「うまくいけばいくほど、『でも毎日ここまではできないんだろうな』と思ったり、200点の回が出てしまうと『もうこれ以上はないな』と寂しかったりする。二度とないことをやっているんだなと思うと、良くも悪くもうんざりするんです。でも、映画はもう永遠にこの瞬間の、この役者さんの表情を観てもらえる。それがいちばんうれしいことですね」
(釣木文恵)

後編に続く

ふくはら・みつのり●1975年、神奈川県生まれ。02年、ピチチ5(クインテッド)を旗揚げし、脚本・演出を務める。その後マンションマンション、産卵シーズン、ニッポンの河川などさまざまな劇団やユニットを次々旗揚げ。09年には宮崎(正しくは大が立)あおいの主演舞台『その夜明け、嘘。』の脚本、演出を務める。俳優の富岡晃一郎と立ち上げたベッド&メイキングスではお台場の公園に劇場を建てるところからはじめた『南の島に雪が降る』や、かつて双数姉妹がやった、円形劇場を半分に分けて2つの物語が同時に進行する『サナギネ』などさまざまな表現方法を使いながらシンプルで強い芝居を上演。15年『つんざき行路、されるがまま』で岸田國士戯曲賞最終候補。映像の脚本も手がけ、12年には『琉球マブヤー THE MOVIE 七つのマブイ』で映画初脚本を手がける。現在放送中のコント番組『SICKS』(テレビ東京系、毎週金曜0:52〜)でも脚本とシリーズ構成を手がけている。


『愛を語れば変態ですか』
脚本・監督/福原充則 出演/黒川芽以、野間口徹、今野浩喜(キングオブコメディ)、栩原楽人、川合正悟(Wエンジン チャンカワイ)、永島敏行ほか
11/28より新宿ピカデリーほか全国で上映