Q:これまで運動もできなかったので、退職後は趣味で登山をしようと思い、富士山に挑みました。疲れもさほど残らなかったのですが、翌日、かかりつけの病院で定期健診を受けた際、腎臓や心臓の機能が相当低下していると言われました。登山がよくないのでしょうか。(65歳・無職)

 A:登山もそうですが、ハードな運動は内臓を痛めます。例えば100キロ走ったことで腎機能が極端に悪化し、入院して治療を受けたという話を聞いたことがあります。激しい運動は肝臓や腎臓、心臓などの機能を低下させます。内臓に多大な負担をかけるからです。
 心臓機能の指標にBNPがあります。これは主に心室から分泌されるホルモンで、血圧を低下させ、利尿を促します。心臓の心室に負担がかかると分泌量が増し、負荷を軽減させます。このような働きがあるので、心不全の診断に用いられます。
 激しい運動を行って、心臓の心室に負担がかかると、BNPの分泌量が増加し、血中の数値が異常に高くなります。実際に日々の診察の中でも、退職後にハードな運動をしている人たちは、これら臓器の検査数値が一過性で上昇しているケースがよくあります。

●基礎体力をつけよう
 ご質問の方は、疲れがさほど残っていなかったそうですが、自覚症状ほど当てにならないものはありません。体が悲鳴を上げていることは、腎臓や心臓の機能低下が証明しています。機能低下は一時的なものですが、養生することが大事です。しばらく激しい運動は控えましょう。
 ご質問の方の健康状態は分かりませんが、これまで運動していなかったのに、いきなり富士登山とは無謀すぎます。退職後、元気でスポーツに興じたりする人たちは「自分は若いし、体力もある」と思っていますが、実は自分で思っているほど若くもないし、体力もないものです。
 退職した年齢で、激しいスポーツに耐えられる体をつくるには、5年ぐらいはかかります。毎日、軽めのジョギングや筋トレなどを行って、基礎体力をつけながら、もっと低い山から挑戦しましょう。

岡田研吉氏(研医会診療所漢方科医師)
東邦大学医学部卒。ドイツ留学中に東洋医学に関心を持ち、帰国後、国立東静病院で漢方を学ぶ。独自の漢方処方で生活習慣病等に成果を上げている。著書『さらさら血液が長生きの秘訣』など多数。