三菱自動車工業本社(「Wikipedia」より)

写真拡大

 三菱自動車工業の開発部門の管理職2人が、新型車開発の遅れを理由として諭旨退職となっていたことが明らかになった。新型車の開発担当者が「適切な報告を怠った」(広報部)ことで、戦略モデルの開発スケジュールの大幅な見直しを迫られた責任を明確化するためとしている。諭旨退職とは社員の自主的な退職を求める一方、期限内に退職を申し入れなければ懲戒解雇するというもので、事実上の懲戒処分といえる。新型車の開発遅れで責任者が「クビ」になるのは「業界でも珍しい」(日系自動車メーカー開発担当役員)。三菱自系サプライヤーなどからは、今後の新型車開発で開発部門が「萎縮するのでは」と懸念する声も出ている。

 三菱自は、2016年にSUV「RVR」をフルモデルチェンジする計画だった。同社は「RVR」や「アウトランダー」などのSUVと、電気自動車・プラグインハイブリッドカーの電動化技術の2つに注力して事業の拡大を図っていく計画を策定していた。特に、SUVは新興市場から北米などの先進国市場まで、グローバルで成長が見込まれており、その中でも小型SUVであるRVRは戦略モデルとして重要な車種だった。

 RVRはグローバル展開するモデルとして高い低燃費化目標を掲げており、これを達成するため、車両の軽量化がキーとなっていた。諭旨退職となった管理職2人は、RVRの軽量化の責任者だったが、三菱自によると「目標重量を達成できないことが明らかになったにもかかわらず、重要な機関決定の場でも開発の遅れを報告しなかった」(同社執行役員)。目標としていた車両重量や燃費の目標を達成できないことが明らかになり、同社は新型車の開発スケジュール全体の見直しを余儀なくされた。

 燃費などが目標を達成できないと、各国の燃費規制やインセンティブにも影響するためだ。三菱自では、RVRの16年のフルモデルチェンジを先送りし、代わって現行RVRのプラットフォーム(車台)を使って小型SUVの新型車を17年に投入する。同時に、RVRの次期モデルは19年度までに開発して市場投入する計画に仕切りなおした。

●「厳しすぎる」との声も

 三菱自にとって重要な戦略モデルで新車開発スケジュール全体を見直すことになったとはいえ、これらを理由に退職を迫られるケースは珍しい。戦略モデルの開発計画の遅れは、同社の業績にも大きな影響を及ぼすことの重大性を考慮したと見られるものの、同業他社からも「処分は厳しすぎるのでは」との見方も出ている。
 
 経営責任を明確化するため、相川哲郎社長をはじめ役員数人が報酬の一部を自主返納することや、開発部門役員の降格も決めた。新型車投入計画の遅れで販売会社や顧客に迷惑をかけるためだ。

 一方で、厳しすぎる処分に対して社内やサプライヤーからは「開発部門の自由度がなくなる」など、今後の影響を懸念する声も上がっている。新型車に設定している性能の目標や、開発スケジュールの厳守ばかりが先行し、「おもしろくない無難なクルマしかできなくなるのでは」(サプライヤー)との声も上がっている。
(文=河村靖史/ジャーナリスト)