国立社会保障・人口問題研究所「第14回出生動向基本調査(独身者調査)」より

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 11月11日付の前回記事『若者既婚者の約半数が結婚前に同棲経験? 同棲に潜む意外なリスク』では、イマドキ男女の「同棲」事情について触れた。

 女性にとって、「望まぬ妊娠リスク」もある同棲だが、支持する20代独身男女は85%と多い。ゆえに、「そろそろ日本でも、同棲婚容認に向けた法改正が必要ではないか」とも書いた。

 一方で、同棲生活が恋愛特有のトキメキを奪うと考える男女もいる。だが、そもそも現実の「(結婚)生活」にトキメキは必要なのだろうか。

●恋愛と結婚は「混ぜるなキケン」

 多くの男女は「いつかは結婚したい」と言う時、そこに「恋愛結婚」をイメージしているだろう。だが、そもそも恋愛と結婚は相容れないもの、矛盾するものなのだ。

 矛盾は、大きく分けて2つある。1つ目は、「生理的・科学的」な矛盾だ。

 たとえば、筆者も『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)で何度か紹介した、アメリカの人類学者ヘレン・フィッシャー氏の有名な研究。彼女に一度対面取材したことがあるが、フィッシャー氏によると恋愛には主に2つのステージがあるという。

 まず第1ステージでは、脳内で快楽を司るドーパミンが放出され、盲目的な恋愛、子づくり(セックス)へと向かわせる。ここでは、男女ともに異性を「性的魅力」で惹きつける必要もあるから、それぞれの体内では男性・女性ホルモンも活発につくられる。

 だが、次の第2ステージで放出されるセロトニンやベータエンドルフィンは、癒し系の物質。恋愛初期のトキメキを抑え、落ち着いた生活や子育てに向かわせるホルモンだ。

 実はこのステージで、男性の体内に、驚くべき変化が表れる。

 それは、「子づくりを終え、子育てに向かう段階に入った」となった途端、男性の体内で男性ホルモンであるテストステロンが大きく減ってしまうのだ。逆に分泌されやすいのがプロラクチン。なんと、母乳を生成したり母性本能を引き起こすとされるホルモンが男性の体内でもつくられるのだ。

 一般に女性は交際前の段階では、昨今はやりの「壁ドン」や「顎クイ」のように、多くが男性には男性らしさを求める。しかし、いざ結婚、子育てとなったとき、生理的・科学的に必要とされるのは男性らしさより母性だ。だからこそ、男性の体内でもプロラクチンが生成されたりする。つまり、恋愛初期にいくら男性らしい男性を求めて結婚しても、幸せな結婚生活や出産によって、夫は男性らしさを失ってしまうのである。

●女性らしさ、男性らしさを相手に求める矛盾

 2つ目は、いまだに男性は交際相手に女性らしさを、女性も相手に男性らしさを強く望むという矛盾である。

 たとえば、リサーチ会社「R&D」が2014年に行った調査では、「あなたが好ましいと思う女性は?」との質問に対して、20〜26歳の独身男性が支持したトップ3は、次のとおりだった。

1位:「優しい/包容力がある」(61%)
2位:「家事能力が高い」(58%)
3位:「見た目が良い」(54%)

 いずれも、いわゆる女性らしい女性だ。これは「お付き合いしたい女性は?」との質問への回答でも同じだった。逆に「仕事を遂行する能力が高い」「高い給与を得ている」「地位・名誉を持っている」ような、自立した女性と付き合いたいとする男性は、いずれも1割前後しかいなかった。

 片や、女性は女性で、マイナビウーマンが2015年に行った調査によると、「自分より収入の少ない男性は恋愛対象にならない」と答えた22〜34歳の女性が62%もいる。男女平等が当たり前のようにいわれる社会にもかかわらず、いまだに6割以上の女性が、結婚どころか恋愛でも男性の年収を意識するのだ。表面上は「結婚相手は性格が合う人がいい」「付き合う男性は、優しければもう何もいらない」などと言うわりに、実際はシビアな女性の恋愛観が伺える結果だ。

 もちろん、生活していくために、ある程度の年収は大事だ。女性は結婚、出産後、一時的に働けなくなることもあるから、男性に一定の収入を望むのはわからないこともない。

 ただ、女性の高学歴化と社会進出に伴い、日本でも若い男女の年収はほぼ同額か、むしろ逆転現象さえ起きている。

●共働き&イクメンがデフォルト?

 また、昨今の女性活躍推進により、現代特有の共働きとイクメン志向が若者たちの間でもデフォルトになってきている。そして結婚後の生活でも、女性に稼ぎを求め、男性に家事・育児を欲するという、いわば「妻に男子力」「夫に女子力」を求める傾向につながっているのだ。

 たとえば、厚生労働省が行った13年の調査によると、出産後も働く女性の割合は年々増加傾向にある。また、同年の総務省調査でも、20〜30代女性のうち「働く女性」が7割に達した。社会全体の労働力不足や女性の社会進出、男性側の年収の伸び悩みが主な原因だろう。

 さらに、女性誌「CREA」(文藝春秋)が11年に行った調査によると、25〜39歳未婚男性の9割以上が「未来の妻にも働いてほしい」と希望、結婚後の妻に「稼ぎ力」や「男子力」を求める男性も増えている様子が顕著になった。

 一方の女性はというと、実はこちらも男性に稼ぎを求めるだけではない。

 国立社会保障・人口問題研究所の11年の調査によると、「結婚相手(未来の夫)の『家事力』を重視する」と答えた18〜34歳の未婚女性は62%。さらに驚くことに、これは「経済力を重視」との回答より、20ポイントも多い。

 つまり現代の結婚では、夫には「女子力」、妻には「男子力」が必要とされているといえる。結婚前の恋愛段階で、いくら男性に「男性らしさ」を、女性に「女性らしさ」を求めても、結婚後にはあっという間に求める要素が逆転してしまう。実は、これが結婚後のパートナーへの不満にもつながっているのだ。

 たとえば先日、筆者があるビジネス誌と行った調査でも、「生まれ変わっても今の夫と結婚したい」と答えた20〜40代前半の既婚女性は、わずか4割強しかいなかった。逆に半数以上は、「別の男性がいい」と答えた。同じ調査で、「結婚生活で、夫に幻滅したこと」との問いに対するダントツの回答は「家事・育児において役に立たない」だった。つまり、結婚後に露呈した夫の女子力のなさが、妻に「こんな夫と結婚しなければよかった」と感じさせていたのだ。

●連帯結婚の制度化の検討を

 これらを鑑みても、恋愛と結婚は元来、相容れないどころか相反するもので、極端に言えば「混ぜるなキケン」なのである。

 そんな今こそ恋愛結婚の幻想から解放され、もっと現実的な「連帯結婚」を目指すべきではないだろうか。

 同時に大人たちも、そろそろ「男は稼いでなんぼ」「女は家事・育児ができて当然」といった旧来型の価値観を見直し、若者の連帯結婚を後押しする制度(同棲婚や事実婚などを受け入れる法整備、サポート体制など)を真剣に考えて実行すべき時期だろう(前回記事参照)。

 なぜなら、「結婚は、恋愛結婚が当たり前」「若者は誰もが異性に惹かれて、恋愛、交際して結婚するもの」といった価値観は、昭和のほんの短い間だけに通用した“幻想”であり、すでにその賞味期限は切れてしまったのだから。

 次回は、フリースタイルの結婚を後押ししない今の日本に焦れて、「もう夫はいらない。子どもだけ欲しい」と、極端な方向に向かってしまう、イマドキの女性たちのちょっと怖い実例をご紹介しよう。
(文=牛窪恵/マーケティングライター、世代・トレンド評論家、有限会社インフィニティ代表取締 編集=平澤トラサク/インフィニティ)