注目のアイスペア、平井絵己(写真左)&マリオン・デ・ラ・アソンション(同右)組

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今、大きな盛り上がりを見せているフィギュアスケート。その人気種目といえば、まずは女子シングル、そして男子シングルが挙がる。しかし、その他にも、ペア、アイスダンス、そしてシンクロナイズドスケーティングといった種目が存在する。どれも熱心なファンには人気の種目だが、テレビ放映の機会も少ないため、一般的にはさほどポピュラーな存在とは言えない。

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だが、近年、世界国別対抗戦のような団体競技としての大会が開催され、また、オリンピックにおいても団体種目が採用されたこともあり、ペア、アイスダンスの重要性と注目度は日増しに高まっている。先日、前橋市で開催された東日本選手権においては、西日本の所属選手、ジュニアも含めた総勢8組のアイスダンスカップルがエントリーするという、例年にない盛り上がりを見せた。ここでは今週末に長野市で開催される、NHK杯へ出場予定の2組を、前後編に分けて紹介したい。

■ 平井絵己&マリオン・デ・ラ・アソンション

まず紹介するのは平井絵己&マリオン・デ・ラ・アソンション組。シングル競技で活躍していた平井絵己と、フランス、リヨン出身のマリオン・デ・ラ・アソンションがカップルを結成したのは2012年。年々実力をつけ、昨シーズンには国際大会でも評価を受けるまでに成長した。

平井「今季の目標は世界選手権に出場することです。毎年それを目指して頑張っていますが、今季は特に、大きく進歩して目標を達成したいという思いが強いです。そのためにも、出場を予定しているチャレンジャーシリーズ、“ゴールデンスピン”でポイントを取っておきたいと考えています」

平井選手は“ポイント”と表現したが、これは世界選手権への出場資格として課させられたミニマムスコアのことだ。世界選手権やオリンピックなどには、技術点に関するミニマムスコアが設定されていて、昨シーズン及び、今シーズンの試合でこの点数をクリアしていないと出場資格が得られない。

今季、世界選手権でのアイスダンスのミニマムスコアは、ショートダンスで29点、フリーダンスで39点と設定されている。平井&アソンション組にとってはなかなか厳しい数字だが、NHK杯よりはゴールデンスピンの方が得点が出やすい傾向があるため、十分に可能性がある。ところで、平井選手はいつごろからアイスダンスへの転向を考えていたのだろうか。

平井「大学4年生まで、アイスダンスは考えていなかったんです。お誘いを受けたとき、将来のためにもシングルだけでなく、他の分野も経験しておきたい、と考えたのがきっかけです。ただ、実際にやってみると、アイスダンスは本当に奥が深い。毎年進歩していることを実感できるので、楽しくやらせていただいています。リヨンを本拠地にしていますが、私のフランス語は…ぼちぼち?」

アソンション「いや、絵己のフランス語は悪くないよ。どんどん進歩しているよ」

アソンション選手は、平井選手とカップルを組むまでフランス連盟の所属選手として活動してきた。どうして平井選手をパートナーに選び、日本連盟への所属を選んだのだろうか。

アソンション「フランスでは良いパートナーに巡り合えなかったことが一番の理由です。以前のパートナーとカップルを解消してから、新たなパートナーを探していました。でもフランスでは見つからなかった。そんな時、絵己がリヨンに練習に来ていて、トライアウトしてみないか、とのお話をいただいたんです。そして、彼女とカップルを組むと決めたんですが、当初はどちらの連盟に所属するか決め切れずにいました。最終的には二人で話し合って決断しました。私はフランスの連盟に留まることにこだわりは持っていませんでしたので、機会があれば他国に所属を変えてもいいと思っていました。絵己とカップルを組むまで、日本や日本の連盟とは全く関わりがありませんでしたが、日本のスケート事情については良い話を沢山聞いていました。それに、私の最も好きなスケーターは高橋大輔なんです。だから、日本のためにスケートができることは幸せです」

今季初戦となったこの試合では、フリーダンスでリフトのミスはあったものの、妖艶な演技で観客を魅了した。年々、着実に進歩している二人に、将来のオリンピック出場を期待する声も出てくるが、その点についてはどう考えているのだろうか。

平井「今の段階では難しいかな、と考えています。マリオン(アソンション)が日本国籍を取得するためには、日本に居住しなければなりません。オリンピックに出場したい気持ちはもちろんありますが、まずは世界選手権を目指して頑張ります。その先、可能であれば、オリンピックに出たいなと考えています」

アソンション「もしも日本のパスポートが取れたら(笑)、その目標に向かって戦いたいという気持ちはあります。でも今の段階では不可能だと分かっていますから、そのことは考えないようにしています」

数年来の目標である世界選手権出場に向け、二人のモチベーションは一層高まっているようだ。NHK杯での活躍を大いに期待したい。

<後編に続く>

【東京ウォーカー/取材・文=中村康一(Image Works)】