今季の女子ツアーは早くも最終戦、LPGAツアーチャンピオンシップ・リコーカップ(11月26日〜29日/宮崎県)を残すのみとなった。

 同大会は、限られた選手しか出場できない国内最後のメジャー大会(※)。まさに現在の日本女子プロゴルフ界を代表する実力者が集い、それらトッププレーヤーが1年の集大成として挑む試合だけあって、毎年見応えのある戦いが繰り広げられる。
※出場できるのは、今季ツアー優勝者、大会前週までの賞金ランキング25位までの選手など。

 注目は、やはりイ・ボミ(27歳/韓国)だろう。今季ツアーでは「イ・ボミ一色」と言っていいほどの活躍を見せてきたうえ、その勢いはここに来てさらに増しているからだ。

 というのも、先の伊藤園レディス(11月13日〜15日/千葉県)で優勝して目標とする賞金女王を確定させると、続く大王製紙エリエールレディス(11月19日〜22日/福島県)でも独走V。白熱する終盤を迎えてなお、2週連続優勝という離れ業をやってのけたのだ。

 加えて、年間獲得賞金も女子選手初の2億円突破という快挙を達成。大王製紙エリエールレディスの優勝によって、男女合わせての史上最高記録(※)も更新した(11月24日現在、2億2581万7057円)。その圧倒的な強さから、最終戦でも大本命に挙げられている。
※かつての年間最高獲得賞金は、2001年に伊澤利光が獲得した2億1793万4583円。

 しかし今大会には、イ・ボミの前に大きく立ちはだかるであろう、強力な"ライバル"が参戦する。

 チョン・インジ(21歳/韓国)である。

 彼女のことは、日本のゴルフファンもよくご存知だろう。なにしろ、韓国の現役大学生ながら、今年5月の国内最初のメジャー大会、ワールドレディスチャンピオンシップ・サロンパスカップ(5月7日〜10日/茨城県)で日本ツアー初参戦、初優勝という快挙を果たすと、2度目の来日となった国内メジャー第3戦の日本女子オープン(10月1日〜4日/石川県)までも制覇。メジャー大会2戦2勝という驚異の結果を残して、日本女子ゴルフ界に衝撃を与えたからだ。

 しかも彼女は今季、世界のメジャー大会、全米女子オープン(7月9日〜12日/ペンシルベニア州)においても、初出場、初優勝という金字塔を打ち立てた。さらに、韓国女子ツアーでも今季は5勝を挙げて、初の賞金女王の座を獲得。今、世界で最も注目されている若手女子プロゴルファーのひとりである。

 おかげで地元・韓国では、チョン・インジは完全にスター扱いにある。あらゆるメディアに取り上げられ、その人気はかつて韓国ゴルフ界を席巻したイ・ボミやキム・ハヌル人気をしのぐ勢いだという。

 それにしても、彼女はなぜ、急に飛躍することができたのか。もともとその技術の高さには定評があり、アマチュア時代には韓国代表にも名を連ねていたとはいえ、数年前までは決して際立った存在ではなかった。それが今季、一気に頭角を現して、韓国をはじめ、日本、アメリカでも輝かしい結果を残してきた。

 その理由の一端と思えるものが、チョン・インジが韓国メディアに答えているインタビュー記事の中にあった。どのメディアも必ず「どんな性格なのか?」という質問をしているのだが、彼女はそのつど、以下のように回答している。

「すごく頑固な一面があって、どんなことに対しても、まずは自分が理解できていないと納得しない性格です。理解できるまで質問し続けるので、(私に)説明する人は最後には嫌気が差してしまう方もいます(笑)。それは、ゴルフのレッスンでもそう。自分で理解し、納得するまで、簡単には受け入れないし、修正しないスタンスでいます」

 チョン・インジは、まさしく芯が強い女性である。一度始めたことは、最後までやり抜く強い信念も持ち合わせている。そんな彼女が、自らが納得するゴルフができるようになったのが今季だったのではないか。

 また同時に、計り知れないメンタルの強さを保持していることも、彼女の回答から伝わってくる。それこそ、チョン・インジの強さの源だろう。初めての日本やアメリカ、さらに大舞台であっても結果を残すことができたのは、そうした何事にも動じない精神的な強さがあったからに他ならない。

 自分で納得のいくゴルフが確立し、いよいよ覚醒のときを迎えたチョン・インジ。世界ランキングでもトップ10入りを果たした(11月24日現在、9位)。そして、今後については、今季韓国ツアーの最終戦を終えたあとのインタビューで、「来シーズンの前半戦は、米ツアーに適応するため、積極的に米ツアーの試合に出る予定です」と、米ツアー本格参戦を明言。そのうえで、目標についても次のように語った。

「来年は、米ツアーで新人賞を期待する声もありますが、そこはあまり考えていません。目標にしているのは、来年のリオ五輪出場です。韓国国旗を胸につけて、五輪でプレーしたい気持ちが今は一番強いです。そのためには、世界ランキングのポイントを上げなければいけません。米ツアーに挑戦するのは、そのポイントが高い、というのも理由のひとつです」

 世界ランキングのトップ10の中に、6人もの選手が名を連ねる韓国は、間違いなく世界トップレベルにある。言い換えれば、韓国人選手の五輪出場権(最大4人)争いは、最もハイレベルで熾烈なのだ。日本で断トツの賞金女王に輝いたイ・ボミ(世界ランキング16位。韓国人選手では8位)でさえ、厳しい状況にあることを思えば、そのレベルの高さがわかるだろう。

 とはいえ、日本、アメリカのメジャータイトルをことごとく手にしてきたチョン・インジ。これから、その実力がますます上がっていくことを考えれば、熾烈な争いも苦にせず、難なく五輪代表の座をつかんでしまいそうである。

 そのチョン・インジが、ツアーチャンピオンシップ・リコーカップ出場のために再び来日する。断トツの賞金女王となったイ・ボミをはじめ、日本ツアーの実力者にとっても、脅威の存在となる。

 実は大会前、チョン・インジは出場を予定していた今季の米女子ツアー最終戦、CMEグループ・ツアー選手権(11月19日〜22日/フロリダ州)を欠場。痛めていた肩の状態が思わしくなく、韓国国内で治療に専念していた。そのため、今大会の出場も危ぶまれていたが、土壇場になって出場を決断。日本ツアーの、3つ目のメジャータイトル獲得への思いは強い。

 はたしてチョン・インジは、三度日本でセンセーションを巻き起こすのか。近い将来、世界的な大スターになるかもしれない、彼女のプレーから目が離せない。

text by Kim Myung-Wook