圧巻のライヴを魅せた人間椅子(撮影・KASSAI=3PO DESIGN WORKSHOP)

 今年デビュー25周年を迎えたロックバンド人間椅子が22日、幕張メッセで行われたOZZFEST JAPANに出演した。13年の1回目に続き2度目の出演を果たし、ギターボーカルの和嶋は「夢はまだまだ続いていると思いました。ありがとう。さらに“30年、50年、100年と人間椅子を続けていく」と力強く宣言した。「なまはげ」や「どっとはらい」など全5曲を演奏しフェスを盛り上げた。

 約2年半ぶりに開催された“OZZFEST JAPAN”。13年に続き、人間椅子は2回連続の出演となった。STAGE BでBlack Label Societyがパフォーマンスを繰り広げる最中、人間椅子が登場するSTAGE Aではセッティングが始まったが、メンバーがステージに上がり行われているその様子に引きつけられたかのようにステージ前にはすでに多くのファンが集まっており、音は聴こえないものの、メンバー(とスタッフも忙しそうに動き回る)の姿を食い入るように見つめている人も多く現れた。

 彼らのライヴはある意味、この時点から始まっていたとも言えるだろう。Black Label Societyのライヴが終わると、さらに多くのファンがフロアの前方へと動き出し、さらに人口密度が上がると、待ちわびているファンへのサービスといった感じで3人はフライング気味に「洗礼」をさわりだけプレイ。フロアからは歓声があがると、続いて「見知らぬ世界」へ。フロアにはリフに合わせてヘッドバンギングの波が広がっていく。最後にナマジマノブが銅鑼を試し打ちすると、ひと際大きな歓声が上がった。観客もすでに準備万端といった雰囲気が出来上がった。

 メンバーが一旦ステージから降りると、鈴の音とともにSEの「此岸御詠歌」が流れ出し、改めて3人が登場。ナカジマのカウントから「なまはげ」に突入し、いよいよ“本編”が始まった。観客はリフに合わせて拳を振り上げ、中盤で鈴木研一が見栄を切り、和嶋慎治がステップを踏みながらギターを弾くと大歓声を上げた。続く「冥土喫茶」では鈴木が“地獄の声を聞かせてくれ”と煽ると“Oi!Oi!”とコールで応え、会場に一体感が生まれていく。3曲目の「どっとはらい」まで熱気溢れる演奏を立て続けに聴かせ、広い会場を一気に人間椅子の色に染め上げていった。

 MCでは13年の第1回に出演して夢が実現した。今回も出演できて夢はまだまだ続いていると思いました。ありがとう”と和嶋が感謝の言葉を述べ、さらに“30年、50年、100年と人間椅子を続けていく”と力強く宣言。すると“100歳になってもやるの?お互いの名前もわからなくなっているかもよ。ギター、山田慎治!”と鈴木が間違えた名前で和嶋を紹介して笑いを誘い、会場は演奏中とは一転して和やかな雰囲気になった。2人のやりとりはまるで楽屋で話している続きのようでもあり、そんな飾らなさも人間椅子の魅力の1つではないだろうか。

 和やかな雰囲気を再び一変させたのは、続く「宇宙からの色」の冒頭に配された和嶋のギター・ソロ。情感の昂ぶりを感じさせる迫真のプレイで聴衆の耳を奪い、ソロが終わるとフロアからはうめき声とも言えるような感嘆の声が上がった。そして“最後に一発”の鈴木によるおなじみのコールに導かれて、締めくくりは「針の山」。その演奏はハード・ロックを愛する者ならば快哉を叫ばずにはいられないほど躍動感に溢れており、気がつけばフロアの後方に陣取っていた、おそらく人間椅子初体験と思われる観客までもが頭を振り出していた。中盤で和嶋がジャンプを繰り返すと、会場も飛び跳ね始め、さらにはなんとクラウドサーフまで出現。25年を超える彼らのキャリアの中で、これは初めての現象だったのではないだろうか。

 35分という短い時間ではあったが、ギター・ソロの場面で顕著だったように卓越した技量に裏づけされた演奏で魅せ、そしてその強靭なアンサンブルが放つサウンドで見る者を突き動かす。和やかなMCも含めて人間椅子というバンドの魅力が凝縮された圧巻のライヴだった。彼らがステージを降りたあとも続いた“人間椅子”コールがこの日のライヴの充実ぶりを雄弁に語っていたように思う。

 彼らは、来年16年2月3日に通算19枚目のアルバム『怪談 そして死とエロス』を発売する。合わせて全国ツアーも行う。【竹内伸一】

セットリスト

01.なまはげ
02.冥土喫茶
03.どっとはらい
04.宇宙からの色
05.針の山

終演後のメンバー3人の感想

「ステージからの眺めは、前回以上に素晴らしかった。幸せな時間でした!」(ナカジマ)。

「大きなステージだと動き回っているうちに、マイクに戻れなかったりするんですけど、今回はそういうこともなくてほっとしました。興奮してちょっと息はきれたけどね(笑)」(鈴木)。

「今回は2回目で、より良いものを見せなくてはと、ちょっとプレッシャーを感じたりもしていたんだけど、多くのお客さんを飽きさせないライヴができたように思う。すごく達成感があります。ライヴをやって、自分達が思っている以上に人間椅子の音楽を求めている人がいるんだと改めて感じたし、さらに頑張らなくてはと思いを新たにしましたね」(和嶋)。