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キリンはこのほど、「プラズマ乳酸菌メディアセミナー 冬の健康リスク低減対策〜乳酸菌の可能性〜」を開催した。同セミナーでは、順天堂大学大学院 医学研究科感染制御科学講座 山本典生准教授、東海大学大学院 医学研究科 石井直明教授、キリン 基盤技術研究所 藤原大介主査らが登壇。インフルエンザなどの冬の健康リスクおよびプラズマ乳酸菌のウイルス感染防御効果について語られた。

○冬の死亡リスクが高い「インフルエンザ」

はじめに、山本准教授による「冬の健康リスクの現状と対策」と題した講演が行われた。 冬の代表的なウイルス感染症といえば、ノロウイルスや季節性インフルエンザ、ロタウイルス、風邪ウイルスなどがある。毎年、冬に流行することから、予防を徹底している人も多いことだろう。中でもインフルエンザは、年代を問わずワクチンの予防接種が勧められている。では、実際のインフルエンザのリスクはどれほどのものなのだろうか。

厚生労働省の発表(平成26年人口動態統計)によると、日本人の死因1位は「悪性新生物(がん)」で全体の死亡総数に占める割合は28.9%、2位が「心疾患」で全体の15.5%を占めている。そして、3位は「肺炎」で全体の9.4%。この肺炎には細菌感染(肺炎球菌など)やウイルス感染(インフルエンザウイルスなど)も関与している。

主な死因別に平成27年の1月と6月の死亡数を比較すると、がんの1月の死亡数は6月の1.09倍とほとんど差がない。一方で、冬にリスクが大きく上昇すると考えられるのは、心疾患(1.78倍)、肺炎(1.72倍)、インフルエンザ(86.94倍)、腸管感染症(2.07倍)。極めてリスクが高いインフルエンザをはじめ、これらの疾患は冬場の対策が重要であることがわかる。

インフルエンザの有効な対策として、まずワクチンの予防接種が思い浮かぶが、山本准教授は、「1つの対策に頼るのではなく、あらゆる予防策、治療法を用いてインフルエンザに対応する必要があります」と注意を促した。

その理由として、インフルエンザウイルスは激しく変化していくことをあげる。予測を超えたウイルスの変化が起きるとワクチン用ウイルスと実際の流行ウイルスが相違してワクチンの有効性が低下する可能性や、さらに薬剤耐性ウイルスが広がる可能性も否定できないという。

厚生労働省は、インフルエンザの予防法として次の6つを推奨している。

1. 流行前のワクチン接種

2. 飛沫(ひまつ)感染対策としての咳(せき)エチケット

3. 外出後の手洗い等

4. 適度な湿度の保持

5. 十分な休養とバランスのとれた栄養摂取

6. 人混みや繁華街への外出を控える(やむを得ず外出するときにはマスク着用も一つの防御策)

特に"バランスのとれた栄養摂取"については、「感染症対策には免疫力が非常に重要です。免疫力が強ければ感染症をよりよく抑制できると考えられています」としながら、「ヨーグルトなどの免疫力を上げるといわれる食品を積極的に摂取する予防法にも期待しています」と話した。

○免疫力アップにプラズマ乳酸菌

続いて登壇した藤原主査は、「キリンの乳酸菌研究」の概要とともに、プラズマ乳酸菌のウイルス感染防御効果について発表した。

まず、「免疫力の低下と感染症リスクは密接な関係にあります」と藤原主査は話し、免疫力が低下すると感染症が発症しやすいという報告があることを指摘した。また、免疫力低下には日常生活の状態が直結しており、加齢やストレス、栄養不足などが原因になりうるという。

そして、免疫を高める機能がある食品素材として注目されているのが「乳酸菌」だ。乳酸菌の機能性には、腸内菌叢(きんそう)の改善のほか、アレルギーの改善、コレステロールの低下、制がん作用、抗肥満などがあり、世界で研究されている。

一般の認識では混同しがちだが、人間の体には細菌とウイルスがいる。これまでの乳酸菌の免疫研究では、細菌とウイルスに対する免疫が別々に存在することにフォーカスされてきたとのこと。例えば、細菌を主に認識する細胞はマクロファージで、それが活性化することで対細菌免疫系が働く。一方、ウイルスに対しては、司令塔であるプラズマサイトイド樹状細胞(pDC)が活性化すると、対ウイルス免疫系(NK細胞・キラーT細胞・ヘルパーT細胞・B細胞)を動かし、ウイルスを攻撃・排除する仕組みとなっている。

このことから同社は、「理論上、pDCを動かせれば対ウイルス免疫系を総括支配できる」と考え、2010年にpDCを活性化する乳酸菌探索プロジェクトを開始。そうして、乳酸菌はpDCを直接活性化できないという前提を覆し、極めてまれに活性化できるものがあることを発見した。それがラクトコッカスラクティスJCM5805株(以下プラズマ乳酸菌)だ。同研究では、プラズマ乳酸菌がpDCを活性化すること、そしてインフルエンザウイルスに作用することが確認されたという。

マウスを使った動物感染実験では、2週間プラズマ乳酸菌を予防投与した結果、致死量のウイルスを与えても70%のマウスが生存した。一方のヒトにおいては、30〜50代を対象にプラズマ乳酸菌を与えた群と疑似飲料を与えた群に分けて研究をしたところ、プラズマ乳酸菌飲用群はpDCの低下を防ぐ結果を示した。

「これらの結果は、ヒトがプラズマ乳酸菌を摂取することで、インフルエンザや風邪を防げる可能性があることを示しています」と藤原主査。

○さらなる効果検証へ

キリンと東海大学 医学部は、プラズマ乳酸菌のヒト・風邪・インフルエンザに対するさらなる効果を検証するために、共同で臨床試験を実施。同セミナーでは、その成果について石井教授が発表した。

同試験は2014年12月〜2015年3月までの12週間、18〜39歳の東海大学の大学生と教職員657名を対象に、プラズマ乳酸菌摂取群と非摂取群に分けて実施。参加者は、12週後に医師による診断と免疫学的検査(血液)を受けるほか、参加者専用のスマートフォンアプリに日誌・体調アンケートを毎日入力した。

その結果、風邪・インフルエンザの罹患(りかん)率は、プラズマ乳酸菌摂取群で29.8%、非摂取群で37.0%となった。また、試験期間中の自覚症状では、「のどの痛み」「せき」などの項目において、プラズマ乳酸菌摂取群で有意に減少し、特に重症者での有意差が顕著だった。

このほか、pDC活性はプラズマ乳酸菌群においてのみ有意に上昇し、NK細胞活性は非摂取群よりもプラズマ乳酸菌群で高かった。さらに、ウイルス防御に重要なインターフェロンα遺伝子やビペリン遺伝子はプラズマ乳酸菌群で有意に上昇した。

「プラズマ乳酸菌は、風邪などの上気道疾患症状を軽減し、大学生活における健康の保持・向上へ貢献が可能であることがわかりました」と石井教授。

いずれもインフルエンザ・風邪対策としてのプラズマ乳酸菌の可能性を示した結果だが、インフルエンザウイルスの型(A型・B型)への適応、量や年齢との相関、飲料以外の食品への応用など、今後も引き続き検証をしていくとしている。

前述したとおり、インフルエンザウイルスは激しく変化する特徴があり、ワクチンを打っても感染する可能性はある。プラズマ乳酸菌のウイルス感染防御効果を参考に、免疫力をアップする食品を意識的にとるなど、さまざまな対策を講じてウイルスに負けない体づくりを心がけてみよう。

(須藤妙子)