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キヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)は10月から、スウェーデンのClavisterのセキュリティ製品の取り扱いを開始した。ClavisterはOSから独自開発したセキュリティ製品を展開している。

現段階でキヤノンITSの取り扱いは次世代ファイアーウォールのみにとどまっているが、「これまで取り組んできたセキュリティビジネスとはまったく異なる、IoTソリューションへのClavister製品を導入するビジネスが展開できる可能性がある」とキヤノンITソリューションズ執行役員セキュリティソリューション事業部長の近藤 伸也氏は話す。

何故、Clavister製品には組込製品向けセキュリティビジネスを展開できる可能性があるのか、その理由についてたずねた。

キヤノンITソリューションズでは、自社開発製品にとどまらず、海外他社製品や国内他社製品と幅広い製品を取り扱ってきた。そこに新たにClavister製品が加わった。

「当社はこれまで20年、日本でセキュリティビジネスを展開してきた。Clavisterはこれまで当社が扱ってきた製品にはない特徴を持っている」と話すのはキヤノンITソリューションズの基盤・セキュリティソリューション事業本部セキュリティソリューション事業部セキュリティソリューション営業部部長の崎山秀文氏。

Clavister製品は、Linuxをはじめとしたオープンソースを使わずに完全独自開発したOSを使用。フットプリントが11Mと軽量で、不要なプロセス処理がなく、ハードウェアリソースを効率的に利用するため高速に動作し、脆弱性が少ないという特徴を持っている。

「当社は20年前、スウェーデン国内の軍用セキュリティソリューション構築からビジネスを開始した。国防車両向けのセキュリティ製品だったために、フットプリントの小さいシステムである必要があったことから、OSSは利用せず、自社開発を選択した」と、この特徴が生まれた背景についてClavisterのCEOであるJim Carlsson氏は次のように説明する。

Clavisterのシニアバイスプレジデントでグローバルセールスを担当するJames Bystom氏は、「OSSは脆弱性の影響を受ける可能性があるが、独自開発であれば脆弱性の影響を受けることはない。さらにハードウェア上を走るコードも全部内製であり、外部の影響によるトラブルが起こることがない。さらに、ソフトウェアのサイズが小さく、フットプリントが小さくなるというメリットも生むこととなった」と説明する。

崎山氏はスウェーデンのClavister本社に訪問し、「実際に開発現場や製品テストを行っている現場を見ることができた。テストについては、外部の企業にテストを任せる企業も多いが、Clavisterは自社ソフトを搭載したアプライアンスの耐久テストまで社内で行っている。製品の品質に対する強いこだわりを持っていることが伝わってきて、信頼も増した」と話す。

こうした特徴を活かし、ClavisterではIoT向けセキュリティ製品の開発に取り組んでいる。

「これまでネットワークセキュリティ製品を開発、提供してきたが、今後はあらゆるデバイスがネットワーク上で利用される。我々がネットワーク製品で培ってきた技術、ノウハウはIoT向け製品にも活かすことができると考えた。ただし、IoTサービスは都市向けやビル用などさまざまなレベル向けのものがあり、セキュリティゲートウェイはどうあるべきか、さまざまな検討を行っている段階だ」(Bystom氏)

確かにIoTは、これまでのオフィス向けセキュリティ製品とはまったく異なる用途であり、連携するソリューションも多岐にわたる。カメラや湿度を測るセンサーなど、これまでのオフィス用セキュリティ製品とは異なるデバイスとの連携も必要になることから、IoTセキュリティ製品の設計がどうあるべきか、さまざまな企業の試行錯誤が始まった段階である。

Clavisterでは、「IoTにおいても最初からセキュリティ対策を考慮した設計であるべきではないかと考えている。当社の製品の特徴である独自仕様でハードウェアリソースを活かす、フットプリントが軽いといった点はIoTに利用するのに向いている」(Carlsson氏)と見ており、IoT向けビジネスを重要なビジネスチャンスと位置づけている。

「ノキアは2020年には3030万台の自動車がネットワークに接続され、トラフフィックすべてがLTEでやり取りされると試算している。これが実現すれば利便性は高まるが、インターネットに接続された自動車をハッキングすることができるという報告も行われている。ネットワークにつながった自動車へのハッキングは、生命を脅かす事象となるだけに、どうセキュリティを担保するのかは重要な課題となってくるだろう」(Carlsson氏)

キヤノンITSの近藤氏も、「自動車向けセキュリティといった生命の危険につながるセキュリティに対しては、従来型のベストエフォートでは済まない。一段階高いレベルのセキュリティ担保が必要となる」と指摘。それだけに慎重に事を進めなくてはいけないものの、「新しいセキュリティビジネスとしてIoT向けには積極的に取り組んでいきたい」と前向きなコメントが得られた。

Clavister製次世代ファイアーウォールの製品発表時には、「2020年には25億円」という売上目標を発表したが、「IoT製品の売上見込みは、この中に含まれていない。この売上目標とは別の売り上げが見込める」と近藤氏は話す。

売上見込みを別とした理由は「我々が取り扱っているウイルスメール対策ESETに対しては、医療レセプトシステムを開発するメーカーから声がかかり、医療システム向けのウイルスメール対策に取り組んだ経験がある。こうした業界や特定機器、システムに特化したセキュリティ対策は、IoT向けセキュリティにつながっていくものとなるのではないかと考えている」(近藤氏)とのことで、オフィス用セキュリティとは異なるセキュリティシステムに取り組んだ経験から、新たな市場開拓ができる算段のようだ。

とはいえ、「実際に経験して感じるのだが、オフィス向けセキュリティは固定された世界だが、IoT向けセキュリティとなるとどこにつながるのか、わからない。ClavisterのBystom氏と話しているのは、IoT向けセキュリティはオフィス向けと異なり、よりエンドポイントに近づけて設計する必要があるのではないのかということ」(崎山氏)と、技術的にも新しいチャレンジが必要となることも確かだという。

新しいチャレンジではあるが、キヤノンITSとしては、「長年セキュリティビジネスを展開してきた経験、キヤノンITSブランドはこの分野にも活かしていくことができる」(崎山氏)と積極的に取り組んでいく計画だ。

(三浦優子)