11月23日に行なわれたフィギュアスケート全日本ジュニア、女子フリー。女王の座を争うハイレベルな戦いに決着をつけたのは、昨季女王のプライドをみせた樋口新葉(わかば)だった。

 王座を巡る戦いは、選手同士の意地の見せ合いでもあった。

 その発火点となったのが、両膝の痛みで練習ができなかったことが響き、SP15位にとどまった三原舞依だ。回転不足やルッツのエッジ注意という小さなミスはあったが、すべての要素をまとめてフリー7位の111.04点を獲得。「昨日は(ジュニアGP)ファイナルへ行かせてもらえる者としてすごく悔しい結果になった。やらなければと思いすぎて守りに入っていたと思ったので、今日は『失うものはない』と思って最初から攻めた」と、合計を160.12点に伸ばした。

 それに続いたのが、同じファイナル進出者の本田真凜だった。SPは7位で第3グループ17番滑走。「SPはずっと練習ではできていたのに、よりによってここで失敗したので『何で?』という思いがありました。去年まではノービスから出場していましたが、今年はみんな同じ立場のジュニア。フリーは初めのポーズを決めた時から怖くてしかたなかった」と言うが、最初の3回転ルッツを耐え、次の3回転サルコウからの3回転連続ジャンプを決めると流れに乗って完璧な演技を見せた。最後のジャンプだった3回転フリップでは惜しくも転倒したが、それ以外はすべてでGOE加点をもらう完璧な演技。合計を168.88点にして意地を見せた。

 最終グループに入っても会場の緊張感は続いた。1番手はSP5位で昨年の世界ジュニア6位の坂本花織。ジュニアGP2戦目以降は右脛の疲労骨折で1ヶ月間練習を休み、11月に練習を再開すると、転倒して尾骨にヒビが入る満身創痍の状態。大会3日前になってやっと3回転+3回転が跳べたという状況ながらも、ルッツのエッジエラー以外はノーミスの演技を披露する。「ジャンプに集中していたので表現までは意識できなかった」と得点は111点台にとどまったが、合計では本田を上回って170点台に乗せた。

 首位が目まぐるしく変わる中で登場となったのが、連覇を狙う樋口だった。SPでは初めてノーミスの演技をしてトップに立ってはいたものの、夏に発症した疲労骨折に近い腰の故障が完治していない状態で不安はあった。だが、「昨日のショートが良かったので、今日は朝の練習から全部出し切るつもりでやった」という樋口は、気持ちよく跳べるためにと1週間前にルッツ+ループからルッツ+トーに変更した冒頭の3回転連続ジャンプを慎重に決めると勢いに乗った。後半に入ってすぐの2回目のルッツ+トーの3回転連続ジャンプもきれいに決め、終盤の3回転フリップでは着氷で手をついたが、その動揺も見せずにダブルアクセルからの3連続ジャンプを決める圧巻の演技。122.40点を獲得し、合計を189.23点にしてトップに立つ。

 しかし、樋口の高得点に対し、その後に滑った選手たちも動揺しなかった。SP3位の新田谷凜は最初のルッツが2回転になったが、それ以外はミスも最小限に抑える安定した演技で合計を175.97点とし、年長の高校3年生としての実力を示した。

 さらに今年のジュニアGP選考会では調子を崩して代表に入れなかった中学3年生の横井ゆは菜も、難度の高い3回転連続ジャンプは入れていないものの、ミスは最初の3回転ルッツのエッジエラーだけに抑える演技で117.24点を獲得。合計では新田谷を逆転して表彰台を確定させた。

 そして最終滑走となった白岩優奈も、SP終了時点で4.06点差と樋口を逆転できる可能性もあるプレッシャーの中、ミスは2つ目の3回転連続ジャンプ(サルコウ+ループ)のループの回転不足だけにとどめる堂々の演技で樋口に次ぐ121.39点を獲得。

「自分の前ですごい選手がたくさん滑っていたけど、自分のやってきたことを信じてこの試合を楽しもうと思った。目標にしていた2種類の3回転連続ジャンプは決められた。1つが回転不足になったのは悔しいけど、自分ができることは出し切れた」

 こう話す白岩は「ショートが1番滑走でフリーは最終滑走という珍しいことも経験できた」と笑みを浮かべたが、合計を184.16点にして樋口に次ぐ2位。中2での制覇は逃したが、ジュニアGP2連勝でファイナル進出を果たした実力の確かさは証明した。昨年のこの大会はSP27位でフリーに進めなかった。それ以来、スケーティングの重要性を意識し、キャシー・リードの指導のもと、コンパルソリーなどで滑りを改善してきた努力の積み重ねが、この大会でも活きたのだ。

 大きなミスを1つすれば、ガクンと順位が下がってしまうような緊迫した戦い。「フリップのミス1つだけで負けてしまって、ファイナル進出を逃したクロアチア杯の時が一番精神的にはつらかったけど、全日本ジュニアは自分の中で一番大きな大会だと思っていたので、そこにベストを持っていけるようにしようと気持ちを切り換えたので、結果には満足している」という樋口。今季は、昨シーズンの大躍進への周囲の反応の大きさに加え、夏場のケガでプレッシャーを感じ続けた。だがそんな苦しさを、「去年より力はあるはず」と自分を信じて乗り越えて得た189点台という高得点の優勝だけに価値は大きい。

 彼女が連覇を果たしたことも、追いかける選手にとっては大きな発奮材料になるだろう。現ジュニア世代の中学生パワーは、これからの日本女子フィギュアを大きく変えていきそうな能力を秘めている。

折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi