「いやぁ、神様、いますね(笑)」

 試合後のミックスゾーンに姿を見せた岡崎慎司は、開口一番、そうつぶやいた。

 4試合連続のベンチスタートとなったが、73分に途中交代で投入されると、勝負を決定づける3点目を挙げた。岡崎が「一世一代の珍プレー」と形容したその得点は、たしかに不思議な形で決まった。

 コーナーキックの混戦から右SBのダニー・シンプソンがシュート。GKを直撃してフワリと宙に上がったボールを、岡崎が滞空時間の長いジャンプで押し込もうとするが、ヘディングは空振りしてしまう。ところが、バウンドしたボールが岡崎のおでこに当たり、最後は右足で泥臭く押し込んだ。

「あの場面で、誰か他の選手も競っていたんですか?(記者:いや、誰も......)。ハハッ(笑)。もう、周りの状況が全然わからなかったんですよ。(ヘッドが合わずボールが地面に)落ちて、『やべぇ!』と思ったんですけど、おでこに当たって、俺の前にボールがこぼれて。とりあえず、入ってくれてよかった」

 運も味方につけた岡崎が、安堵の表情を見せた理由はもうふたつあった。ひとつは、ニューカッスル戦の4日前に行なわれたW杯アジア2次予選のカンボジア戦である。この試合で初めて日本代表のキャプテンマークを巻いたものの、0−0の状況で痛恨のPK失敗。無得点に終わり、やり切れなさと不甲斐なさを抱えたままイギリスに戻ってきた。「(カンボジア戦で)キャプテンやって、PKを外したと思ったら、こんなゴールが生まれて......」と漏らした言葉からも、胸のつかえが少しばかり和らいでいるようだった。

 そしてもうひとつが、レスター・シティで約3ヶ月ぶりにゴールを奪ったこと。初ゴールを挙げたのは8月15日の第2節ウェストハム戦になるが、以降10試合にわたってゴールがなく、直近4試合ではベンチスタートを命じられていた。最近ではリード時の"守備的FW"として起用されることが多かっただけに、待望の2点目を挙げた意義はやはり大きい。

「フォワードとして何試合も点が獲れないのは嫌ですね。地道に仕事をこなしつつ、光明をつかもうとすることが大事で、今日がそのキッカケになればいい。これでまた、(自分に)流れが戻ってくると思えば」。フォワードとしての重責を果たし、定位置取りに向けてクラウディオ・ラニエリ監督へアピールできたことに、ホッとした様子だった。

 ここでもう一度、試合を振り返ってみたい。序盤はほぼ互角の展開だったが、ブラジルW杯のグループリーグでも対戦したコートジボワール代表のMFシェイク・ティオテが20分で負傷交代すると、ニューカッスルの守備組織は破綻した。「彼はよかった。潰し屋的な感じでプレーしていて、『痛いな』と思っていた。だが、彼が交代したことで、守備のバランスは完全に崩れた。それまでは割と、『良いチームだな』と思っていた」と岡崎が言うように、ティオテの交代はターニングポイントであった。

 ここから試合の流れを一気に引き寄せたのが、現在リーグ得点王のジェイミー・バーディーある。前半ロスタイムに鋭いカットインで敵をかわし、豪快にネットを揺らした。この結果、元オランダ代表のルート・ファン・ニステルローイがマンチェスター・ユナイテッド時代に達成した「10試合連続ゴール」の記録に並んだ。

「バーディーが決めてくれたあの1点も、シュートまでがめちゃめちゃ速く、ほぼ個人技で決めてしまった。シュートをバーに当てたりとか、そのあと何回も可能性のあるプレーをしていた。圧倒的にひとりで何かできてしまう」と、岡崎も破竹の勢いでゴールを量産するイングランド代表ストライカーの活躍に感心しきりだった。

 試合の主導権を完全に握ったレスターは、62分にもFWレオナルド・ウジョアが追加点を挙げる。ベンチスタートの岡崎に「投入」の声がかかったのは、その9分後だった。2トップの一角としてフィールドを広く動きながら、パスコースを作ったり、チェイスに走ったりと、攻守両面で活力を注入。バーディーが途中交代で退くと、4−2−3−1の1トップにポジションを移し、自身も追加点を挙げて3−0の勝利に貢献した。

「本当に今は1分・1秒でも出場時間が欲しいって感じ。今日も(MFアンディ・)キングが先に『アップしろ』と言われていて、『俺じゃないのかな』って思ったけど、やはりこういうところで使ってもらえるのは、まだ自分がつなぎとめられていると思う。まあ、出たときにはいつも流れを変えているし、自分がチームを支えている気持ちもある」

 これでレスターは4連勝を飾り、プレミアリーグの首位に立った。「弱小クラブが首位になっているのではなく、可能性のあるチームだと思っている。自分たちには形がある。途中で誰が出てもレベルを落とさず、違いを生み出せるのはこのチームの良さ」と岡崎が語るように、昨シーズンは残留争いを演じたレスターは、着実に力を伸ばしている。

 そして、彼自身も久しぶりにネットを揺らした。ただ一方で、ポジションを争うウジョアがゴールを挙げると、アップ中の岡崎はタッチライン際で手を叩いて祝福し、2−0のリードで投入されてもチェイシングなどの守備タスクを黙々とこなした。そんなひたむきな姿があるからこそ、「バーディーや(MFリヤド・)マフレズのような攻撃で引っ張っている選手がいるなかで、チームの一員として貢献できている」との言葉にも重みがある。

 次節は、リーグ2位につけるマンチェスター・ユナイテッド戦。この大一番でも、彼の言う「神様」は日本代表FWに微笑んでくれるだろうか。

田嶋コウスケ●取材・文 text by Tajima Kosuke