東芝、三井不動産、旭化成など、最近、不祥事で名前が挙がるのは、どれも一流企業ばかりだ。そこで働く社員たちは当然、「一流企業に勤めるサラリーマン」であることに誇りを持っていたはず。だが、たったひとつの不祥事でプライドは打ち砕かれ、その影響はさらに家族にまで及ぶ。

 異物混入事件以降、業績の悪化している日本マクドナルド社員の男性(45)の話は切実だ。

「事件の後に、小学生の子供の授業で、『父親の職業について調べる』という宿題がありました。一応、私は店長として何十人もの部下やアルバイトを使っている立場ですので、サービス業の大変さや飲食店のルールなどを子供に教え、立派なレポートが仕上がりました。それを授業参観日に発表することになったんですが、なぜかうちの子供だけが発表させてもらえなかった。

 先生がランダムに指して発表していく形だったんですが、うちの子は最後まで指されなかった。それで時間切れ。まわりの父兄の間では、『やっぱり、○○ちゃんのパパは、マックだから』という声がちらほら聞こえてきました」

 さらに悲劇は続く。

「会社から『ご迷惑をかけた』ということで、社員たちにバリューセットのギフト券が10セット配られました。それを妻が子供の友人たちに配ろうとしたら、1人のお母さんから『いらないわよ』と拒否され、『いま人に配らない方がいいわよ。嫌味に受け取られるから』といわれたそうなんです。妻も子供もそんなに信用を無くしたのかと、ショックを受けていました」

 家族に及ぶのは経済的な影響だけではない。慰安婦記事の誤報問題で揺れた朝日新聞社員の妻がいう。

「保護者会に出ると『ご主人、朝日の記者さんなんでしょ、大変そうね〜』と嫌味たらしくいわれてしまう。夫もすごくナーバスになって、フェイスブックもツイッターもやめ、毎年欠かさず出ていた同窓会にも欠席の通知を送っていました」

 不祥事で業績が落ちれば、収入減のほか、リストラや転職などの憂き目にあう社員も続出する。だが、転職した後も“悪評”がついて回るというからやりきれない。東京電力の33歳元社員がため息をつく。

「福島原発事故で多額の賠償金を背負ったため、会社側から年収ダウンに応じるか、転職するかの選択を迫られ、家族とも相談して転職を希望しました。

 しかし、大手電機メーカーの原発担当として再出発したものの、転職先でも原発事業は低調で、『これも東電のせいだ』と他の社員から冷たい視線を浴びる日々。もちろん社内での出世の可能性はゼロです。東電に残った同僚からは“逃げ出した男”とみなされ、連絡しても会ってもくれない。今は“残って仲間と一緒に再建に尽力したほうがよかった”と後悔しています」

 不祥事が原因ではないが、業績悪化でもはや一流企業の面影もないシャープでは、こんなケースまで。

「50歳の親戚男性は、何かにつけて『僕はシャープで働いていて』が口癖でした。身なりも派手で、奥さんがいるのに飲み屋で若い女性を口説いては、その自慢話をしていた。3年前に経営不振が報道された時でも『早期退職制度で辞めて起業する』と景気のいいことをいっていました。

 でも退職金のほとんどを離婚した元妻に慰謝料として支払ったあげく、再婚するつもりだった女性にも逃げられて……。結局、事業にも失敗してしまった。今年になって病気で入院しましたが、お見舞いに行った親戚によれば、今は生活保護を受けているそうです」(45歳女性)

 これも一流企業の社員であるがゆえの見栄が生んだ悲劇といえなくもない。

※週刊ポスト2015年11月27日・12月4日号