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注目のH-IIAロケット29号機がまもなく打ち上げられる。打ち上げの予定時刻は11月24日の15時23分。ウィンドウは15時23分〜17時07分で、天候の理由等により、この範囲内で打ち上げ時刻がずれることもある。マイナビニュースではこれより、現地種子島からのレポートを随時掲載していくので、どうぞお楽しみに。

まず1本目のレポートでは、H-IIAロケット29号機の注目点をご紹介したい。

1つめは、久しぶりの204型の打ち上げになるということだ。H-IIAロケットには現在、固体ロケットブースタ(SRB-A)の搭載本数の違いにより、202型(2本)と204型(4本)の2種類があるのだが、204型が使われたのは2006年12月に打ち上げられた11号機のみ。じつに9年ぶりに見られる姿なのだ。4本ブースタ自体はH-IIBロケットでも見られるものの、H-IIAでとなると、かなりレアだ。

さらに細かい点を言うと、前回の204型の打ち上げでは、搭載する衛星が大きかったために、フェアリングもロケットの直径より太い5Sタイプが使われていた。今回はスタンダードな4Sタイプが搭載されているので、この形態は正真正銘、今回が初だ。

ブースタの数が違うと、離床時の上昇速度が変わってくる。H-IIAロケット29号機の推力は、第1段エンジンが1,100kN、SRB-Aが9,050kN(4本分)。離床時の推力はほぼこのSRB-Aで稼いでいるため、初の204型だった11号機の打ち上げを見ていたときに「はやっ!」と驚いた記憶がある。今回はどんな打ち上げになるのか、ロケットファンとしては気になるところだ。

2つめの注目点は、ロケットが「高度化仕様」になっていることだ。H-IIAロケットの静止トランスファー軌道(GTO)への打ち上げ能力は、202型が4トンで204型が6トンであるが、これはロケット側に都合のいいGTO(静止化増速量=1,830m/s)へ打ち上げる時の数字で、世界標準のGTO(同1,500m/s)の場合には、これが3分の1程度にまで下がってしまっていた。

静止化増速量が多いGTOだと、GTOから静止軌道へ移動するときに、衛星側の燃料消費量が増えてしまう。その分、衛星は燃料を多く搭載する必要があるし、搭載しなければ運用期間で使える燃料が減り、寿命が短くなってしまう。いずれにしても衛星にとっては有り難くない話で、商業打ち上げの獲得に向けた大きな課題の1つとなっていた。

高度化仕様のH-IIAでは、第2段の運用時間を大幅に延長し、GTOの遠地点側での再々着火を可能にした。従来は、近地点側で第2段を再着火し、そこで衛星を分離していたが、高度化仕様の第2段はそのまま飛行を続け、遠地点側での再々着火の後、衛星を分離する。効率の良い遠地点側で噴射することで、世界標準のGTOへの打ち上げ能力を、202型で2.97トン、204型で4.82トンまで改善することができる。

この長時間飛行(ロングコースト)のために、白色塗装で燃料の蒸発を抑えるなど、様々な改良が施された。また遠地点側でエンジンを噴射する場合、100%の推力だと強力すぎて軌道投入の精度が悪くなるため、推力を60%に抑えるスロットリング機能も追加されている。

そして3つめの注目点は、前述の高度化仕様に密接に関わるのだが、H-IIAロケットにとって、初の商業打ち上げミッションとなることだ。今回搭載する衛星は、カナダTelesatの通信放送衛星「Telstar 12 VANTAGE」。これまで、相乗りとして海外衛星を搭載したことはあったが、主衛星が民間の純粋な商業打ち上げとなると、これが初めてだ。

国の衛星だけだと、年度による打ち上げ回数の変動が大きく、少ないときは1回しかないような年もある。そうなると設備や人員が無駄になってしまうため、三菱重工業(MHI)が事業として維持していくためには、これを補う形で、商業衛星の打ち上げを受注する必要がある。今回の打ち上げを最高の形で成功させ、今後のさらなる受注に弾みを付けたいところだ。

(大塚実)