レトロな純喫茶がじわじわと人気。写真は東京・上野の『王城』

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 昭和時代から続く純喫茶は、経営者の高齢化や建物の老朽化により閉じたり、ファーストフードやコーヒーが安価で手軽に飲めるコンビニに追いやられて、残念ながら減少の一途を辿っている。その一方で今、昔ながらの喫茶店が「落ち着く」と若い女性を中心にじわじわと人気が高まりつつある。

 その理由について、喫茶店をこよなく愛し、十数年で足を運んだ喫茶店は全国1300軒以上という“東京喫茶店研究所二代目所長”で『純喫茶へ、1000軒』(アスペクト)の著者の難波里奈さんは、こう語る。

「懐かしいメニューがきっかけの一つなのかもしれないのですが、純喫茶は若い女性に人気があって、最近ではたくさんの方が通っていると感じます。核家族の環境で育ち、上の世代の方たちと話す機会が少なくなったなかで、お店で年配の方たちとお話するのも楽しいようですね。昭和のインテリアは今見てもモダンでセンスの良いものがたくさんあります。ほかにもどこかほっとする安心感を求めて通うのではないでしょうか」

 Twitterで純喫茶の写真をアップする女性も増えている、と難波さん。純喫茶のリアルタイム世代ではない20〜40代の人たちが興味を持ち始めているのは、SNSの普及により、あまり知られていなかった純喫茶の魅力が伝わりやすくなったこともきっかけのようだ。

「最近、若い女性のお客さまは確実に増加しています。マスコミで取り上げていただけた事も大きいですし、Facebookなどで写真を中心に料理や店内を発信していることも、みなさまの理解をいただけていると思います。そういう意味では、男女若い方へのハードルは下がってきているように感じています」(上野『王城』のオーナー)

 たまにはお手軽なコーヒーショップではなく、純喫茶でレトロな雰囲気を味わいながら、手作りの食事やコーヒーをゆっくりいただくのも贅沢なひととき。そこで、休日に、仕事の休憩時間に寄りたい、食事が美味しい喫茶店6選を難波さんに紹介してもらった。

■平均律(東京・学芸大学)

「もともと表参道で大変人気の店で、閉店後、再営業したお店です。ファンが待ち望んだ再開店でした。どっしりとした木のカウンターにひとりで座ると、目の前で入れているコーヒーやフレンチトーストを焼くバターの“ジュ〜”としたいい匂いがして、食べる前から楽しめます。ママさんが聞き上手なので、誰が行っても優しく迎えてくれます。オススメはフレンチトーストと、あまりほかの店では見たことのないウィンナーコーヒーです。透明のグラスに砂糖を入れ、熱いコーヒーを注ぎ、ミルクを注ぐ三層になっていて、横から見ても楽しめます」

■ニット(東京・錦糸町)

「モデルさんが来店したりテレビでも紹介されるなど、若い女性にも人気のお店。分厚いホットケーキがとても人気です。注文してから焼き上がるのに20〜30分かかりますが、その理由は1枚1枚丁寧に焼かれるため。3〜4cmの厚さのホットケーキが2枚乗っていて、中央に爪楊枝で固定されたバターも美しく、これだけでお腹がいっぱいになるボリュームです。店内が広いので、すんなり入れて、白シャツに黒いズボンという正装をした、気持ちの良い接客をして下さる店員さんのおかげでいつもゆっくりできるところも気に入っています」

■リスボン(東京・三鷹)

「いちばんの特徴は、個人営業の純喫茶なのにも関わらず、コーヒーのサイズが普通、スモール、大きめから選べることです。マスターはニコニコとしたダンディで優しい方。『ランチバスケット』という名前でありながら一日中食べられるメニューは、パンが日替わりで2種類と、スパゲティサラダ、くだものとヨーグルトがついて、手が込んでいるのに480円で食べられます」

■メラミ(東京・三越前)

「ここの看板メニューは、『赤スパ』というナポリタンのようなケチャップで炒めたスパゲティ。懐かしい感じがして美味しいです。ここは男性のお客さんが多いです。オフィス街にあるのでお昼は会社員の方たちで賑わっています」

■カスタム(東京・神田)

「食事メニューの種類がとにかく多いのが特徴です。全て手作りなので美味しいのですが、特にマスターがオススメするのはたらこスパゲティーです。マスターが音楽好きの方で、お店ではいつもオールディーズが流れています。地下にあるのに、広くてゆったり。オフィス街のガヤガヤとした喧噪から離れた静かな空間で落ちつきます。仕事帰りにごはんを食べるのにもオススメです。音楽に興味があれば、マスターとお話しても楽しいと思いますよ」

■王城(東京・上野)

「アメ横にある王城さんのオススメは、ナポリタン。太めの麺でしっかりした味つけが美味しいナポリタンです。店内も、ゴージャスな雰囲気。シャンデリアや上等なゴブラン織りの椅子などヨーロピアンテイストで整えられています。オーナーは漢方の病院を持っているお医者さんでもあり、漢方の視点を重視したメニューの『黒糖しょうがミルク』は寒い季節に温まってほしいという気遣いから考案されたということです」

 休日にコーヒーを飲みながらゆっくりと読書をしたり、仕事帰りに懐かしい味わいのナポリタンとコーヒーでほっとひと息…。忙しない日々を過ごしている時こそ、ゆったりとした時間の流れに身を置くのもいいかもしれない。

写真提供■難波里奈さん