白髪染めに皮膚障害の可能性!(shutterstock.com)

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 ひと昔前、一世を風靡したかつての女性アイドルが、美容院で装着するクロスをまとい、クリームを自ら頭になじませた後、きれいに染め上がった髪を披露、商品名を歌い上げる。そのとき商品のパッケージが画面に大きく映される----。

 こうした白髪染めのコマーシャルを、テレビで見ない日はない。現在、大手メーカーのCMに出ているのは、高島礼子、菊池桃子、牧瀬里穂など。50代の大台にのった高島礼子はまだしも、菊池桃子や牧瀬里穂は清純派アイドルのイメージが強いだけに、軽いショックを受ける読者も多いのではないだろうか。

なぜパッチテストが必要なのか?

 白髪染めのCMの途中や最後に、決まって表示される文言がある。それは、

●使用上の注意をよく読んで正しくお使いください。
●ご使用前には毎回必ず皮膚アレルギー試験(パッチテスト)をしてください。[医薬部外品]

 というもの。ここでいう「パッチテスト」とは何だろうか? しかも「毎回必ず」とわざわざ念を押してまで注意を喚起するのはなぜだろうか?

 花王株式会社のサイトを見ると、パッチテストのやり方が以下のように記されている。

 「混合液を腕の内側に10円玉大に薄く塗り、自然に乾燥させた後、30分位後と48時間後の2回、テスト部を観察します。その2回の観察で、または観察途中の48時間以前であっても、発疹、発赤、かゆみ、水疱、刺激などの異常があった場合は、染毛できません。直ちにテストを中止し、混合液を洗い流してください。48時間後にテスト部位を観察して、異常がなかった場合は、時間をおかず、すぐに染毛してください」

 1回だけならまだしも、毎回これを行うというのは、かなり面倒ではないか。テストをせず、異常が出たら止めるという方法では駄目なのだろうか?

毛染めによる皮膚障害の実態

 10月23日、消費者庁の消費者安全調査委員会は、毛染めによる皮膚障害についての報告書を発表し、注意を呼びかけた。それによれば、ここ5年間の皮膚障害の推移は毎年154〜238件、全治1ヶ月以上という重い症状のものは18〜44件となっている。

 また、インターネットによるアンケート調査の結果、毛染めを行う場所は自宅が46.7%、美容院が36.8%、両方が16.5%。「毛染めの前にセルフテストを行ったことはあるか」という問いに対しては、68%もの人が「セルフテストは知っているが、実際に行ったことはない」と回答している。「毛染めの前にはいつも行う」と回答した人は、わずか2.3%だった。

 皮膚障害を起こすのは医薬部外品に分類される酸化染毛剤だ。これは「染毛成分が毛髪の内部深くまで浸透することによって染めるため、(中略)色落ちが少なく長期間効果が持続する」というもの。毛髪の内部を酸化剤によって、酸化させ発色したり、色を定着させたりする。酸化染料には、パラフェニレンジアミン、メタアミノフェノール、パラアミノフェノール、トルエン-2、5-ジアミンなどがあり、これらの物質が皮膚障害のおもな物質になっている。

 先の報告書には、毛染めによって起こる疾患の事例が写真付きで記されている。

 「頭皮が赤くなって吹き出物のようなものが現れ、かゆみが出て、髪の毛が抜け落ちたりした」「顔面が赤く腫れ、浸出液が滴る状態になり、初めて医療機関を受診した」「ひどい手荒れのため、皮膚科医で治療を受けていたところ、耳たぶや頭皮にもかぶれの症状が出てきた」......。まれではあるが、アレルギーによって急激なショック状態を引き起こす、アナフィラキシーとなるケースもある。これは血液循環障害や呼吸困難を来し、死に至ることすらあるという。

 こうした被害に遭いたくなければ、パッチテストはやはり毎回行うべきだ。

 このほかに半永久染毛剤を代用するという方法もある。これは医薬部外品ではなく化粧品に分類されているもので、代表的な商品にはヘアマニキュアがある。皮膚障害となることが少ない代わりに、酸化染毛剤ほどの色持ちが期待できないという欠点がある。

 面倒でも毎回、パッチテストをしてから酸化染毛剤を使うか。それともときどきヘアマニキュアで代用するか。またはリスクを避けるために染毛自体をとりやめるか----。皮膚障害を負うリスクとどう向きあうのか。それは利用者自身に委ねられている。
(文=編集部)