2015年も残りわずか。ドラマ好きとしてはじょじょに来年の大河ドラマ「真田丸」のことが気になっている。
堺雅人が演じる、「真田丸」の主人公は、真田幸村(信繁)。今から400年前に起った徳川対豊臣の戦い・大阪夏の陣において、豊臣秀吉側につき、徳川家康を討ちに出た勇猛果敢かつ叡智にたけた武将として知られているが、実のところ彼は、40代の働きざかりの頃、九度山で引きこもっていて、大阪の夏の陣、冬の陣において短期間限定で力を出し切ったことにより、戦国ヒーローのひとりとして語り継がれるようになった。
このへんのことに詳しい歴史好きなディープなひとも、来年の大河、三谷幸喜さんだし、ちょっと気になるぅと思っているライトなひとも、真田幸村について予習復習しておきたいと思ったとき、映画「講談 難波戦記─真田幸村 紅蓮の猛将─」は大いに役立つ。


講談師の語りをそのまんま


江戸時代から語り継がれ、真田幸村ヒーロー伝説の原点とも言われる講談で、
豊臣が破れた後は、徳川によって出版禁止になってしまった実録本(事実をもとに書かれた小説)を、講談師が語り継いだものなので、当然ながら真田贔屓に書かれている。


今回、その物語をもとに俳優たちが演じるのか、と思いきや、そうではない。講談師の語りをそのまんま撮っているのだ。
座って扇子を打ちながらたったひとりで語り続ける講談師の姿を映画にするとは、なかなかチャレンジングな作品だが、一部アニメーション(昔の絵巻物の絵が立体的になったようなもの)で見せたり、資料映像も挿入したりで、飽きさせない。
それに、講談師の情熱的でスピーディ、それでいて明晰な語り(「修羅場読み」という手法)を聞いていると、みごとなまでに鮮やかにビジョンが浮かんでくるのだ。
これこそ今回の映画化の肝。目をつぶっても見える、今までにない映画、と言っても過言ではない。詩のボクシング、なんて言葉があるが、真田の部下たちの名前や戦での行動など、言葉の連打だけで、戦の臨場感が立ち上っていき、
物語を緩急自在に語る講談師・旭堂南湖(2009年文化庁芸術祭新人賞受賞)、彼こそがヒーローだと思い始めてしまうほど。
15万の兵を率いる巨大権力・徳川家康が、長らく窓際のような生活を送っていた弱者・真田幸村の鮮やかな作戦によって不利な状況に追い込まれていくところを描いたため発禁になってしまったというだけに、正しいとされている史実とは違ったもうひとつの真実を語り継ぐという行為すら極めてヒロイック。

映画館の暗闇が戦国時代の合戦の場に


話芸といえば、落語が代表的で親しみやすくもあるが、この映画を見て、講談も気になってきた。語りがかなりかっこいいのだ。
がんじがらめの現実社会に生きてる身として、ひととき痛快な気分を味あわせてもらえるし、なによりも、映画館の暗闇が、戦国時代の合戦の場になるような体験を味わってほしい。
(木俣冬)


映画「講談 難波戦記─真田幸村 紅蓮の猛将──」
出演 旭堂南湖
監督 勝呂佳正
原作 「講談・難波戦記」(旭堂南湖演)
製作・配給 株式会社フラッグ 協力 武蔵野エンタテイメント

新宿武蔵野館ほか全国順次公開
公式サイト