中村俊輔「香川はやることが多すぎる」…日本代表・背番号10を生かすアドバイス

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 1月のアジアカップでベスト8敗退に終わったことを皮切りに、試練の続いた2015年の日本代表。年内最終戦となった11月17日の2018年ロシア・ワールドカップ アジア2次予選のカンボジア戦(プノンペン)も引いた相手に苦しみ続け、オウンゴールと本田圭佑(ミラン)の得点で2−0と辛勝。後味の悪さを残してしまった。

 その大苦戦から3日後の20日、日本代表で長らく背番号10の重責を担った中村俊輔(横浜F・マリノス)を直撃するため、マリノスタウンへ足を運んだ。今の日本代表チームと背番号10番の後継者である香川真司ドルトムント)の停滞について、アジアと世界を熟知する彼に、どうしても話を聞きたかったからだ。

 実際、香川の代表での苦悩は日本中が危惧するところだ。トーマス・トゥヘル監督率いる今シーズンのドルトムントでは、ピエール・エメリク・オーバメヤン、マルコ・ロイス、ヘンリク・ムヒタリアンとともに“ファンタスティック4”と称されて輝きを放っている香川だが、日本代表ではカンボジア戦のように消える時間が圧倒的に長くなる。

 では、なぜ香川は代表で輝けないのか。

 この疑問は、アルベルト・ザッケローニ監督時代から日本代表が抱える大命題といっても過言ではない。その要因をチームメートの長友佑都(インテル)は「僕ら(代表選手の)一人ひとりがドルトムントの個々のレベルに達していないのが、正直なところ。ドルトムントの選手たちは個人能力がすごく高くて、1人でマークをはがす能力があったり、フリーになったり、数的優位を作ったりすることができる。真司を代表で生かしきれないのは、僕ら周りの責任でもある。彼自身もギャップがあって難しいと思います」と主観と客観を交えながら分析した。

 香川に10番を託した俊輔も、長友の発言に自身の思いを重ね合わせていた。

ドルトムントだと、香川の周りにいるダブルボランチや前線の3人の誰かの近くに寄ってきて、ポンポンポンってボールが回るし、ゴールまで一気に持っていける。その連動性はちょっとレベルが高すぎる」

 俊輔はまるで自分自身が今も香川と一緒に日の丸を着けてピッチに立っているような実感をにじませつつ、ため息交じりにこう語った。そして核心を突く言葉を口にしたのだ。

「代表での香川はやらなきゃいけないことが多すぎる」

 さらに俊輔は鋭い分析を続け、今の“背番号10”を取り巻く状況の難しさを代弁した。

「香川は『点を取らなきゃいけない』って考えるだけじゃなくて、『ゲームも作らなきゃいけない』と思って、チームの土台の部分も頑張って作っている。だから目立たない試合もあるし、得点が入らない試合も出てきちゃう。俺なんかはゲームを組み立てて支配するタイプだったから、『まあまあ動いて、アシストして、FKで目立ってるな』って評価になる。俺がたくさんの得点に絡めたのも、ボランチや周りの選手がいいパスをくれたり、1つ2つ手前の仕事を他の選手がやってくれたから。それで俺は自分のプレーに専念できた。だけど、香川はそうじゃない。やらなきゃいけないことが多すぎて、はるかにプレーの難易度が高くなってると思う」

 俊輔が代表でプレーした2000〜2010年の約10年間は3−5−2や4−4−2のフォーメーションが軸で、前線は2トップがほとんどだった。だが、香川が10番を背負った2011年以降の日本代表は4−2−3−1が基本。前線は1トップが大半を占めている。それも香川の難しさを助長していると彼は見ている。

「今の代表って1トップでしょ。俺がやってた時は2トップだったから、自分がボールをもらってパッと顔を上げて前を見た時は2トップを生かせばよかった。今だとサイドに1人、前に1人しかいないから、得点をダイレクトにお膳立てできるチャンスはどうしても減る。香川も近くの誰かと連動しようとしてるんだけど、2人だけの関係で終わってることが多いように見える」