スマートフォンアプリを組み合わせて高さが変わるデスク(写真はAspirus DeskのFacebookより)

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 前回、腰痛と姿勢の関係、「そもそも良い姿勢とは何か」ということを説明した。今回はより具体的に、腰痛と良い姿勢の関係について考えていきたい。

 たとえば、米国整形外科学会(AAOS)では、仕事中に腰痛を感じたらオフィスの椅子や座り方に問題がないか点検するべきあり、それには次のようなアドバイスが挙げられている。

●背中を(自然な範囲で)やや反らせて座る
●腰の部分に支えがある椅子を選ぶ
●頭と肩がまっすぐになり、支えられている姿勢を保つ
●机の高さを調整し、身体を傾けなくても手が届くようにする
●1時間ごとに休憩をとる。立ち上がって歩き回ったり、背中を伸ばしたりする

 前回、良い姿勢とは「自分の筋肉を使って保っている姿勢」、悪い姿勢とは「自分の筋肉ではなく身体の組織の引っ張りや突っ掛かりで保たれている姿勢」と説明した。それを踏まえて考えてみると、上記の米国整形外科学会のアドバイスは理にかなっている。背中をやや反らせて座るというのは、自らの筋肉で支える姿勢だ。その他のアドバイスも基本的には「身体に負担をかけない姿勢」である。

 しかし、もっとも重要なことは、最後のアドバイス「1時間ごとに休憩を取る」だ。なぜこれが最も重要なのか?

同じ姿勢を続けることが最も悪い

 実は「理想的な姿勢」は、ないに等しい。どんな理想的な姿勢でも、同じ姿勢を続けることで筋肉が収縮し続け、その部分に大なり小なり負担がかかる。どんなに理想的な姿勢も、同じ姿勢を持続することで、それは「良い姿勢」ではなくなってしまうのだ。

 健康被害は腰痛だけではない。長時間、座り続けると、心臓病や糖尿病のリスクが増大されることが、すでにいくつかの研究で明らかになっている。がんの発生率にも関連があるといわれている。

 一定の間隔で姿勢を変えて体に違う刺激を与えることで、負担が軽減、またリセットされた状態になる――。これは海外ではもはや常識で、北欧では「同じ姿勢で一定時間仕事をしてはならない」という法律まである。加えて、「従業員50人以上の企業は理学療法士を雇い健康に対するアドバイスをもらうこと」という法律もある。

スマホのアプリと連動して高さが変わるデスクも登場

 しかしながら、デスクワークの場合、仕事を中断してまで姿勢を変えることは難しい。そこで登場するのが、可動式デスクだ。デスクが縦に可動することにより、立ってデクスワークをすることが可能となる。世界ではさまざまな可動式デスクがすでに登場している。これにより、腰痛予防はもちろん、前述したように心臓病や糖尿病の予防にもなる。つまり健康的に仕事ができる。

 その可動式デスクにスマートフォンアプリを組み合わせている製品も登場している。これは一定の時間になるとアラームが鳴り、デスクの高さを変更するように促したり、1日で座って仕事をした時間、立って仕事した時間を記録して管理してくれたりする。さらにボタンひとつで予め設定したデスクの高さに変更してくれるので、変更するたびに高さを微調整する必要もない(参考:https://youtu.be/H7b8GMvqi_E)。

 このように、可動式デスクが世界で開発されているということは、世界が同じ姿勢(座位姿勢)を取ることの危険性を認めていることでもある。近いうちにデスクは縦に可動するのが当たり前になるのかもしれない。


三木貴弘(みき・たかひろ)
理学療法士。日本で理学療法士として勤務した後、豪・Curtin大学に留学。オーストラリアで最新の医療、理学療法を学ぶ。2014年に帰国し、現在は東京都で理学療法士として医療機関に勤務。その傍ら、一般の人に対しても正しい医療知識をわかりやすく伝えるために執筆活動にも力を入れている。執筆依頼は、"Contact.mikitaka@gmail.com"まで。