和食の基本である「だし」をとる実演をするにんべんの堀江さん

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 和食が2013年に世界文化遺産となって以来、日本の食材や調味料への関心が高まっている。なかでも、ティーバッグのような袋に昆布やかつおぶし、しいたけや煮干しの粉末などが入った「だしパック」が、手軽にプロのような「だし」を味わえると自宅用や贈答用に人気を集めている。

「贈答用というと、以前はかつおぶしの詰め合わせがほとんどでした」というのは、株式会社にんべん経営企画部の堀江直行さん。

「最近は『だしパック』の人気が高いですね。和食への関心が高まっていることもあるのでしょうが、『だし』そのものに皆さんの興味が集まっています。だしをドリンクとして飲める日本橋の店舗には、連日、多くのお客さんがいらっしゃいます。外国からの方も多いんですよ。昆布だし、かつおぶしだしでは飲みづらくても、昆布とかつおぶし、昆布と煮干しといった合わせだしになると、ほとんどの方に美味しいと言われます」

 きちんと「だし」をとれば美味しいと知ってはいても、かつおぶしを削り、昆布や煮干しを戻し湯を沸かし、さらに濾すには手間がかかる。もっと手軽にだしをとりたい要望に応える形で生まれたのが、顆粒や粉末のだしの素だ。ロングセラー商品の「シマヤだしの素」が発売されたのが1964年、「ほんだし」が1970年に発売され、長く家庭の味として親しまれてきた。また、だしの素市場も2000年頃までは成長を続けていた。

 ところが2000年代に入ってから、高齢化や家庭で料理をする機会が減っていることなどから、だしの素の需要は減り続けている。そのなかで「だしパック」だけが最近5年で約1.5倍に伸ばしている(株式会社インテージ調べ)。

 百貨店のお歳暮担当者も、和食の「だし」は贈答品のラインナップに欠かせないという。

「健康ブームに和食ブームが重なり、素材の良さを生かせる本格的な『だし』をというニーズが高いです。最近は、3分程度でだしがとれる手軽さや、無添加で天然素材の『だしパック』が人気です。だしパック人気の火付け役となった九州の茅乃舎だしについてお客さまに質問されるのですが、うちでは取り扱っていないのが残念です。味の良さでは負けない商品が他にもありますので、そちらを試飲していただいています」

 しょう油醸造からスタートした福岡の総合食品メーカー、久原本家グループが販売する「茅乃舎だし」は福岡の店舗以外では通販でしか手に入らない、知る人ぞ知る存在だった。ところが、2010年に東京ミッドタウンへ出店したのをきっかけに知名度が高まり、和食ブームの後押しもあって、今では「だしパック」を象徴する商品となった。

 その後、全国にあるしょう油醸造やかつおぶし製造等、「だし」のノウハウを持つメーカーが製造する「だしパック」が全国の消費者に発見された。さらにヤマキの「鰹節屋の味わいだしパック」やにんべん「薫る味だし」など大手メーカーも「だしパック」の新製品を送りだし、量販店のPB商品にも登場している。

 世界の中の日本を意識するとき、和食は欠かせない要素だ。和食の基本は「だし」と「すし」。素人でもプロのような味が出せる「だしパック」人気は、しばらく続きそうだ。