グラップラー刃牙的哲学入門書が文庫に。おもしろそうだから買ってみた新刊

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先週おもしろそうだからとりあえず買ってみた新刊文庫一覧!
先週の目玉はこれ。

グラップラー刃牙的哲学入門書が文庫化


『史上最強の哲学入門』(河出文庫)。


著者は人気ブログ「哲学的な何か、あと科学とか」の飲茶氏だ。
飲茶氏は『グラップラー刃牙』のファンだという。本書の表紙は板垣恵介氏によるもの。
地上最強の哲学者はだれか? エンタテインメントを目指した哲学入門書で、とにかく読みやすい。

モヤモヤするアンソロジー


岸本佐知子編訳『居心地の悪い部屋』(河出文庫)には、ブライアン・エヴンソン、ジョイス・キャロル・オーツら英米・カナダの12人の作家が書いた、編者いわく〈モヤモヤ〉する短篇小説12篇が選ばれている。


編者が編者だけに、モヤモヤ度はお墨つきだ。この〈モヤモヤ〉は、SNSでよくつかわれている「もやもやする」という陋劣な新語とは無関係です。
アンナ・カヴァン『アサイラム・ピース』(山田和子訳、国書刊行会)中の1篇「母斑」が、本書には「あざ」という岸本訳で収録されている。

津村節子、夫・吉村昭をしのんで2点


津村節子のエッセイ2点が同時文庫化した。
『夫婦の散歩道』(河出文庫)は40篇以上の短い文章を集めたもので、そのうち3分の1弱が亡夫・吉村昭についてのものだった。巻末に吉村司氏(息子さん)の短文を収録。


『三陸の海』(講談社文庫Kindle)は東日本大震災の被災地ルポだ。


2011年、三菱重工長崎造船所内史料館に吉村昭コーナーができた。同造船所は戦艦武蔵の出生地であり、吉村の代表作『戦艦武蔵』(新潮文庫Kindle)の舞台でもある。
同年3月11日、そのオープニングセレモニーの日に、東日本大震災の一報が入った。
翌年、津村さんは吉村の太宰賞受賞作『星への旅』(新潮文庫Kindle)の舞台となった岩手県下閉伊郡田野畑村を訪れる──。

吉村昭が1896年・1933年・1960年の三陸津波を題材とした『三陸海岸大津波』(文春文庫Kindle)や『関東大震災』(文春文庫Kindle)の著者であることを考えると、ちょっとほっとけない1冊だと思う。

アジアの差別を考える本で、むかしの伝奇小説も考える


ノンフィクションではもう1点、小説家野間宏が今年亡くなった民俗学者沖浦和光(かずてる)と1982年におこなった対談をまとめた『アジアの聖と賤 被差別民の歴史と文化』(河出文庫)を挙げておこう。


差別問題を左翼的な立場から論じているので、ちょっと(かなり?)左翼的なロマンティシズムを感じる部分も多いが、1970-80年代の半村良の伝奇小説や五木寛之の『風の王国』と併走する想像力のありかたを見ることができて、これ自体がひとつの資料としての意味を持っていると見ることもできる。

といったところがおもしろそうだからとりあえず買ってみた! 先週はタイミング的に河出文庫の新刊ばかり買った週でした。
前回の文庫速報に続き、お買物のご参考になれば幸甚です。
以上、ほぼ週刊「千野帽子のむくどり文庫速報」でした!(名前の由来は前回参照)
(千野帽子)