電車に乗れない...精神に後遺症を遺す「痴漢被害」 通報まで至らない実態9割、最大の抑止力とは?

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電車内での痴漢被害に悩む高校2年生が、母親と一緒に考案した痴漢抑止バッジ(最初は痴漢抑止カード)を身につけるようにしたところ、毎日のように遭っていた痴漢の被害にあわなくなった…そんな体験に基づいた「Stop痴漢バッジ」の製作プロジェクトが注目を集めています。
これは、バッジを社会に普及するため、痴漢被害にあっている女性たちが受け入れやすい缶バッジのデザインを、クラウドソーシングサービス「クラウドワークス」で公募し、さらに缶バッジの製作資金や普及活動における支援者の募集をクラウドファンディングサービス「FAAVO東京23区」で実施するというもの。プロジェクトにおいては、2つのクラウドサービスを活用することで、多くの人が痴漢被害に対し目を向ける機会となる効果も期待しているとのことです。

被害女性たちによるこのような取り組みが必要な背景には、検挙されにくい痴漢行為の実態があるようです。

被害者の9割が「泣き寝入り」という実情


痴漢抑止バッジを考案した高校生が当初身につけていたカードには「痴漢は犯罪です」「私は泣き寝入りしません!」という文言がはっきりと目立つ形で記されていました(現在のバッジにも同様のメッセージは書かれています)。

これは、上記の高校生が満員電車で痴漢被害に遭った際に、どうしていいかわからず泣き寝入りせざるを得なかったから、という経験によるものです。
警察庁が平成23年に発表した「電車内の痴漢撲滅に向けた取組みに関する報告書」によると、痴漢被害に遭った女性の9割近く(89.1%)が、「警察に通報・相談していない」ということも判明しています。さらにこの調査では、「痴漢に遭ったとしてもどこに相談していいかわからない」「通報がしにくい」という意見も多くみられました。


痴漢に遭ったときに女性たちがとった行動(複数回答)を見てみると、304人中「我慢した」160人(52.6%)、次いで「その場から逃げた」137人( 45.1%)、「犯人に対して何らかの行動を起こした」82人(27.0%)となっており、逃げるので精一杯、行動を起こせる人は少ないことがわかっています。


痴漢行為は、都道府県の迷惑防止条例違反で検挙されますが、悪質な行為の場合は、刑法で強制わいせつ罪として扱われます。被疑者にとっても社会的な制裁は計り知れないはずですが、こうした女性たちの心理をわかったうえでの行為であることもうかがえます。

精神的なダメージは計りしれない


上記の報告書では、痴漢に遭ったことで精神的ダメージを受け、通勤時間帯の満員電車に乗ることができなくなったり、痴漢被害のストレスから情緒不安定になるなど、被害者が心身の健康に受ける影響についても、触れています。被疑者が捕まって検挙されたとしても、これらの後遺症は生じる可能性があるわけです。

そこで大切なことは、痴漢行為をさせない「抑止」です。


報告書のなかの調査で実施した「痴漢防止に効果的だと思うことは?」(複数回答・男女に実施)の質問では、以下のような結果となりました。

・「女性専用車両」1,719人(52.8%)

・「電車内の防犯カメラ」1,476人 (45.3%)

・「警察の取締り強化」1,255人(38.5%)

すべての女性が女性専用車両に乗れるとは限らないわけですが、「防犯カメラを設置しています」というステッカーなら、すべての車両に貼ることは可能です。またときどき検挙のニュースがありますが、車内に警官を配備することは実際に効果的といえますし、女性の駅員さんがホームで目を光らせていてくれるだけでも、安心感があります。


そして何よりも、女性自ら痴漢を「抑止」する方法として、だれもがつけやすいバッジができたら...。このバッジのプロジェクトには大きな意義があるといえるでしょう。

日本においては、痴漢という性犯罪ですら性的興奮をあおるテーマとして商品化されてしまう実情がありますが、こうしたプロジェクトを契機に社会の風潮・モラルが変化することも、「弱者への性暴力」を根絶するためには必要なことでしょう。

<参考>
http://bylines.news.yahoo.co.jp/ogawatamaka/20151102-00051063/
(痴漢被害に遭い続けた女子高生が考案した「痴漢抑止バッジ」が大人を動かした)
https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/h22_chikankenkyukai.pdf
(電車内の痴漢防止に係る研究会の報告書について 警察庁)