フィオレンティーナのパウロ・ソウザ監督【写真:Getty Images】

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過去最高の序盤戦。フィオレンティーナはなぜ好調?

 今季はフィオレンティーナが好調だ。開幕後は7戦で6勝を挙げ、第12節現在で9勝3敗の首位に立っている。なぜ彼らは好スタートを切ることができたのだろうか? そこには、パウロ・ソウザ監督が追及する“機能美”があった。

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 セリエA序盤戦では、フィオレンティーナの勢いが凄かった。第7節のアタランタ戦で開幕6勝目を挙げ、17年ぶりに単独首位に立つ。かつてジョバンニ・トラパットーニ監督のもと、ガブリエル・バティストゥータにマヌエル・ルイ・コスタ、エジムンドらを擁した1998/99シーズン以来の出来事。そして開幕7戦で6勝を挙げたのは、クラブ史上初の出来事だった。

 その後代表ウィーク明けのナポリ戦では1-2と惜敗し、勝ち点ではインテルに並ばれたものの、第12節終了の時点で首位を守っている。得点24に失点は9と、チームとして高い攻撃力を示しながら守備の硬さも両立させている。

 シーズン前を振り返れば、このクラブに関する明るい話題はなかった。ポゼッションサッカーを定着させたビンチェンツォ・モンテッラ監督とは喧嘩別れし、昨シーズン後半の主役だったモハメド・サラーには逃げられた。シーズン後にレンタル元のチェルシーへ買い取りオプションを行使したはずが、選手側の拒否条項を行使され破談になった(その後フィオレンティーナはこれを不服とし係争に出た)。

 その一方で、スター選手の補強はなし。ユベントス時代の活躍で選手としては有名だった新監督のパウロ・ソウザについても、バーゼルで結果を出していたとはいえセリエAでの手腕を不安視する声も大きかった。しかし彼らは、見事に下馬評を覆す活躍を見せた。

 実際のところ、その萌芽というものはプレシーズン時点で現れていた。そしてPSMではバルセロナを、またチェルシーをそれぞれ撃破。相手も主力が休養明けでコンディションが不揃いだったとはいえ、チームの特色は既にでていた。

 ラインを整えながら激しくプレスを掛け、ボールを奪えば縦に速いショートカウンター。守備時には4-5-1気味にゾーンを敷き、攻撃ではサイドバックの一角が飛び出す3-4-2-1と化す。モンテッラ時代よりもハードワークを重視し、攻守に組織的な規律を強める方向へとスタイルを変えていたのだ。

イタリアのファンも「機能美」を称賛

 振り返れば、バーゼル時代もハードワークで結果を出していた監督である。守備時には緊密なゾーンを敷き、タフなプレスから素早く速攻へと切り替える。スイスでは「窮屈で退屈」という評価もあったようだが、イタリアのサッカーファンの間では「マルチェッロ・リッピ時代のユベントスのような機能美だ」と評価する声もあった。

 余談になるが、柿谷曜一朗がバーゼル時代にソウザのサッカーと合わなかった理由はこの辺りにも見える。

 前方にスペースがある状態では卓越した個人技が活かせるのだが、攻守の素早い切り替えを求める戦術の中では、彼の持つリズム感とボールタッチがスピードダウンにつながってしまう。そして何より、ハードワークに走るタイプでもない。

 ともかく、こうしてフィオレンティーナはプレシーズンの時点において、戦術的な完成度で他のチームに先んじた。

 そうなれば開幕ダッシュも必然。開幕戦では、中盤のビルドアップがなっていなかったミランを、徹底的なハイプレスと縦へのスピーディな速攻で攻略。第6節では、やり過ぎの補強が影響し連係が固まっていなかったインテルにアウェーで走り勝った。

ハードワークで輝く個の力

 徹底したハードワーク戦術のもとで、個もしっかり輝いた。新戦力ではバテ・ボリソフから移籍したニコラ・カリニッチは、卓越したスピードと執拗なフォアプレス、そして何より7ゴールという得点力で主力に定着している。ボルシア・ドルトムントでハードワーク重視のサッカーに慣れていたであろうヤクブ・ブワシュチコフスキも、すぐに戦術に順応した。

 しかし注目すべきは、昨季までパッとしなかった選手たちが一気に蘇り、素晴らしいパフォーマンスを発揮していることだ。

 能力は高いがムラっ気も高かったヨシップ・イリチッチは、中盤と前線のリンクマンを任されるうちに調子の波も安定した。主力に定着できなかったマティアス・ベシーノは、高い運動量を見せながら丁寧かつスピーディに繋げるセントラルMFとして、ミラン・バデリと強力なコンビを中盤で形成している。U-21代表の将来有望株フェデリコ・ベルナルデスキも、攻守両面で仕事のできるアウトサイドとして主力に定着している。

 どの試合でも運動量では相手チームを上回る。「我々の好調の要因は日頃のワークにある」とソウザ監督は胸を張るが、実際練習で作り上げたコンディションの高さと戦術的な機能美は毎試合で光る。

 課題は、長いシーズンでこの調子が持続できるかどうか。前線では長期故障離脱から復帰したジュゼッペ・ロッシや若手のクマ・ババカルがいるが、ハードワークという点で主力に割って入れるかどうかは現在微妙。戦術への順応性をチームとして高め、現時点での主力が疲れ出した時に用いるバックアップを増やしたいところだ。

text by 神尾光臣