やる気を削ぐ言動にめげず、首尾良く仕事をこなす秘訣は?
 他人のやる気を削ぐのがやたらとうまい人がいる。口を開けばケチをつけ、これ見よがしにため息をつく。トラの衣を借るキツネよろしく、“えらい人”の代弁者になりたがる。こうした仕打ちにもめげず、首尾よく仕事をこなすにはどうすればいいのか。

 今回は、尾張藩が所有する”松茸山”の管理を任された若侍の奮闘を描く『御松茸騒動』(朝井まかて/祥伝社)からヒントを探りたい。

 主人公・小四郎は“御松茸奉行”となり、2000本もの松茸を上納するよう命令される。しかし、松茸は不作続きで、関係者のやる気もゼロ。そんな中、小四郎はどうピンチを乗り切るのかという物語だ。

◆「やれ。やってみぬでは、何もわからぬではないか」

 御松茸奉行の同輩・栄之進は、主人公・小四郎にたびたびハッパをかける。”決まりは破れない”と松茸狩りを躊躇する小四郎に、「やってみぬでは、何もわからぬ」と助言したのも栄之進だった。

「やれ」の一言で済ますのは、乱暴なように見えて、実は理にかなっている。たとえば、やる気を削がれても、「やる」を選べば、思考停止を避けられる。手を動かせば、新たな思考の回路も開くのだ。

◆「割り切るとは、分けて考えるということですがや」

 小四郎は自他ともに認める生真面目な性格。仕事で壁にぶつかり、””割り切るしかない”と言われても、憤慨するばかり。そんな小四郎に松茸山のふもとに住む老人・権左衛門は「割り切るとは、分けて考えるということ」と諭す。

「割り切る」というと、我慢を強いられるイメージがある。しかし、「分けて考える」なら、脇によけるだけでいい。やる気をそぐような発言には耳を傾けない。“思考の邪魔者”はすかさず排除するのだ。

◆「最後は巡り合わせよ」

“出世し、己の力を確かめたい”と願っていた小四郎。しかし、御松茸奉行として日々、松茸と格闘するうちに、仕事観が変わる。同僚の栄之進曰く「最後は巡り合わせよ」という。

 現場の士気を下げ、仕事を滞らせるような存在は確かに、邪魔だ。しかし、反面教師と考えるとこれほど役に立つ人材はいない。その言動を観察すれば、チームの足を引っ張る要因が如実にわかる。

 やる気を削ぐ発言に出くわすと腹も立つし、つい手も止まる。だが、モチベーションの主導権は本来、自ら握るべきだ。ネガティブな言動にも惑わず、あわよくば推進力に変える。そう腹を括ると、イヤミなひと言からも、アウトプットの質を上げるヒントが見つかる。

<文/島影真奈美>
―【仕事に効く時代小説】『御松茸騒動』(朝井まかて/祥伝社)―

<プロフィール>
しまかげ・まなみ/フリーのライター&編集。モテ・非モテ問題から資産運用まで幅広いジャンルを手がける。共著に『オンナの[建前⇔本音]翻訳辞典』シリーズ(扶桑社)。『定年後の暮らしとお金の基礎知識2014』(扶桑社)『レベル別冷え退治バイブル』(同)ほか、多数の書籍・ムックを手がける。12歳で司馬遼太郎の『新選組血風録』『燃えよ剣』にハマリ、全作品を読破。以来、藤沢周平に山田風太郎、岡本綺堂、隆慶一郎、浅田次郎、山本一力、宮部みゆき、朝井まかて、和田竜と新旧時代小説を読みあさる。書籍や雑誌、マンガの月間消費量は150冊以上。マンガ大賞選考委員でもある。