学術論文の捏造、盗用、偽装は地球レベルで蔓延中!?

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 今冬のワクチン接種を済ませた方も、まだ思案中という方も、「予防接種が子供たちの自閉症を誘発する」という都市伝説をご存じか?

 端緒は1990年代初頭に発表されたアンドリュー・ウエイクフィールド医師の断定論文だ。当時の欧米では、ワクチンと自閉症の関連性が疑われて社会問題化していたため、同医師の論文発表は接種拒否層の親を増大させ、その結果、全米では、麻疹や百日咳、おたふく風邪が数十年ぶりに流行したという。

 が、ワクチンの価値観を根底から揺さぶり、下手をすれば子供たちの命まで左右しかねない選択を迫った同論文の主張が、実は「捏造」であることがのちに判明! 問題の執筆者は、2010年、イギリス政府から医師免許を剥奪されるという笑えないオチがついたのだ。それでも風評被害は、インフルよりもたちが悪いのか、5年後の今も間違った噂は地球を徘徊中だ。
 
捏造、盗用、偽装天国の趨勢は地球レベルで蔓延中!?

 わが国の今年の10大NEWSには、デザイナーの佐野研二郎氏がデザインした2020年東京五輪のエンブレムに「パクリ(模倣)疑惑」が持ち上がったことから「佐野る」がノミネート。旭化成建材による杭工事「データ偽装」問題は目下真相究明真っ只中だが、例のSTAP細胞騒動をふり返るまでもなく、医学やライフサイエンス界では権威効果を生む学術誌上での「小保方る」行為はもはや伝統芸か!?

 たとえば、信じがたいニセ論文の常習癖とその数量で発覚後に学会を震撼させた確信犯が、オランダのディーデリック・スターペル教授(当時)。本国では著名なこの社会心理学者がぶち上げた論文の一つが、「肉好きな人間は自己中心的!」という、肉通の寺門ジモンも初耳認定するであろうキャッチーな仰天因果説だ。

 しかし彼の人望のなさか、恥知らずな先人への義憤が決壊したのか、同論文の公表後、即座に教え子2人から「捏造」を告発されてアウト......。大学側も「不正」を正式に認めて、調べれば芋蔓式で発覚したエセ論文数が10年間で55本の量産王だったとか。しかも博士号剥奪後に不正癖を居直って綴った自伝『脱線(原題:ONTSPORING)』を上梓......。

 バイオ医学・ライフサイエンス分野の研究に限っても、権威ある論文データベース「PubMed」上で「撤回論文」扱いが2012件(2012年5月時点)。紀要『PNAS』の詳細審査では内67.4%が「不正行為」によるもので、「凡ミス」の21.3%を大きく引き離して増殖中というから、学術誌の最新話題を孫引きしてマスコミが煽っても一般人の冷静さが問われる時代なのか!?

コピペ投稿者と告発探偵の上をゆく偽造学術誌徘徊!

 このような撤回案件が地球レベルで蔓延急増中の背景には「コピペ⇔告発」文明の衝突が読み取れるが、最近、斯界を荒らしているのが捏造寄稿者よりも役者が数段上ともいえる「ニセ論文誌」の出没だ。具体的には専用サイトを持たない科学論文誌2誌『Archives des Sciences』『Wulfenia』をウェブ上でなりすまし(偽装)して投稿論文を募っては掲載料を騙し取る詐欺手口だ。

 両誌の詐欺サイト上では前者の編集委員会が87名、ニセWulffenia誌上では同35名、いずれも著名学者名が列挙されているが、もちろん無許可ないしは架空の陣営だ。権威づけや売名目的でカモにされる著者負担金は500ドル(約5万円)程度らしいが、被害者には上昇志向がより強い発展途上国系の研究者が多いらしく、アルメニアの銀行口座に還流された後は泣き寝入りしかないのが現状らしい。

 一方、詐欺未満でも野心家たちが負担する掲載料目当てで論文の信憑性などは二の次、執拗に「論文発表」を促すメールを送り続けるインチキ系の学術誌もどきも横行中だ。

 ハーバード大学の学生が試しにココア味のシリアルCMをパロって、文章作成ソフトに委ねて支離滅裂な論文をでっち上げ、計37誌の曖昧誌に投稿した結果、計17誌から「(掲載推奨の)快い返事」が来たというから笑えない。これでは懸賞落選者に「才能を惜しむ」的な手紙を送って呼び寄せ、半ば詐欺的に金を負担させる自費出版社系の手口と変わらない。「学術誌ってなんだ? それな!」と日本の高校生たちさえ苦笑しそうな権威失墜談だ。
(文=編集部)