円高でも企業の狒枋蠧〞。TPP、マイナンバー特需も

年末にかけての日本株は円高や海外の景気不安がマイナス材料として警戒される。しかし、企業業績は着実に上向いており、株価の反転を予想する市場関係者が多い。日経平均は再び2万円台に乗せる流れにあるようだ。

10 月1日に発表された日銀短観では、企業が収益計画の前提とする想定為替レートは117円39銭だった。8月の中国・上海株暴落以降、リスク回避の円買いが 進んだ局面でも、1ドル=118円で円高が止まっている。輸出企業の業績予想の下方修正に対する懸念もあるが、現実には追い風が弱まった程度だろう。

一方で、小売りなど内需企業はインバウンド需要に支えられ、順調に業績を伸ばしている。SBI証券のシニアマーケットアナリスト・藤本誠之氏は「輸出型の製造業株から、内需株へ買いのターゲットが移っていく」と予想する。
中国株安が訪日客の減少につながるとの見方もある。しかし、上海株暴落時と調査期間が重なった今回の日銀短観でも、大企業・非製造業の業況判断指数は3カ月前に比べて2ポイント改善し、企業経営者が緩やかな業績拡大を実感していることが裏づけられた。

日 経平均をひとつの銘柄として見た場合の1株当たり利益は9月末時点で1269円。藤本氏は「日経平均は1万7000円割れが底。PER(株価収益率)16 倍として、上値は2万300円台が導き出される」と、株高を予想する。中間決算時に内需企業を中心に業績予想の上方修正が加わり、金融緩和がプラスされれ ば、株価水準はさらに切り上がることになる。

eワラント証券のCOO(最高執行責任者)・土居雅紹氏は「例年、冬にかけて外国人投資家の買いが活発化する」と海外勢の季節習性を指摘する。年末までの日経平均は高値2万円との見立てだ。

土 居氏は日銀の後押しも予想する。国債やETFの購入枠拡大や低格付け社債の購入などが日銀のとれる具体策として挙げられるが、「最もインパクトがあるのは マイナス金利の導入だ」という。民間銀行が日銀に預ける当座預金にマイナス金利を導入して滞留資金をあぶり出せば、銀行が融資を積極化させるほか、米国債 購入も増えて為替が円安に動くなどの効果が見込めるという。

来夏の参院選を前に株価を高くしておかなければ、「アベノミクスは失敗だった」と批判されかねないことも、追加緩和シナリオの現実味を増している。

ただ、土居氏は「来年は株価下落に注意したい」と警告する。中国バブル崩壊や米国株の割高是正が日本株の悪材料になる恐れがあるという。

個 別テーマでは、10月にスタートしたマイナンバー制度が挙げられる。食料品にかかる消費税の還付制度との連動を財務省が打ち出しただけでなく、通院履歴を ビッグデータとして活用した疾病予防策の展開など事業規模の拡大が見込まれる。マイナンバーの導入で株取引など金融取引で得た利益が全面的に把握されるた め、「個人富裕層が含み益の表面化を嫌って売りを渋り、短期的に需給が引き締まる」といううがった見方も出ている。

交渉が長期化したTPP(環太平洋経済連携協定)交渉も10月に妥結した。交渉参加12カ国の間で対立の激しかったのは医薬品の独占販売を左右するデータ保護期間と乳製品、自動車部品の3分野だが、妥結前後の株高で短期的なメリットは織り込まれた面がある。
農業分野では、豚肉の関税引き下げ効果が最も大きく、日本ハムなど食肉大手に最も早く好影響が出てくるだろう。

※この記事は「ネットマネー2015年12月号」に掲載されたものです。