カギは日経平均1万7450円。郵政上場を控え、日銀が動く!

日銀が10月30日の金融政策決定会合で、2度目の追加金融緩和に踏み切る公算が高まっている。物価下落再燃への対抗手段が表向きの理由なら、裏の理由は株価浮揚によるアベノノミクスへの援護射撃だ。
「去年と同じだ」―。9月25日昼前、黒田東彦日銀総裁が安倍首相と会談した。首相官邸では常駐する政治担当記者に日銀詰めの経済記者も合流し、「アベクロ会談」の終了を待ちながら、昨秋を思い返していた。
日銀は昨年10月末、国債やETF(上場投資信託)の購入額を3倍に増やす追加金融緩和を実施。これに先立つ9月11日に黒田総裁が官邸を訪れ、首相と会談している。
黒田氏が官邸入りした時間は昨年も今年も正午前でほぼ同じ。会談の一報で株価が急伸した点まで一致する。市場が今回の会談を第3次金融緩和の最終調整と受け止めるのは当然だろう。
安倍政権発足後、政府と日銀は2%の物価上昇を政策目標に掲げ、規制撤廃や金融緩和などの策を講じてきた。しかし、今年4〜6月期のGDP(国内総生産)はマイナス成長に終わり、8月の消費者物価指数は2年4カ月ぶりに前年同月を下回った。しかも、11月4日には日本郵政グループ3社の上場を控える。銀行系証券のトレーダーは「昨年末の日経平均1万7450円を割り込むと、公的年金とみられる買いが入る」と言い、年足での陽線維持に向けた圧力がうかがえる。
日銀が再度の追加緩和に踏み切る理由はほかにもある。安倍首相が9月24日に公表した施政方針「新3本の矢」だ。首相は日本の目標GDPを600兆円とぶち上げた。年率3%成長を続けて、昨年度比で100兆円を超える成長を目指す。ただ、政府筋によると、これは「デフレ脱却が成功した場合」という条件が付く。
黒田総裁下の日銀は政府と政策協定を結び、物価上昇率2%を共通目標とする。日銀幹部は「目標は政府が決め、目標達成の手段は日銀が考えて実行するのが、基本的な役割分担だ」と指摘。そのうえで、「政府がGDP600兆円と言えば、日銀はそれに沿った最適な策をとることになる」と説明する。
黒田総裁はアベクロ会談後、「政府から金融緩和を求められたか」との記者団の質問に「要請はなかった」と答えた。先の日銀幹部による政府・日銀の役割分担に従えば、首相が緩和を求めたのではなく、「黒田総裁が安倍首相に緩和方針を伝えた」可能性がある。黒田氏は「デフレ脱却にあらゆる手段を講じる」と繰り返している。

※この記事は「ネットマネー2015年12月号」に掲載されたものです。