W杯アジア2次予選、カンボジア戦。前半は守備を固めるカンボジアを攻めあぐね、逆にカウンターから攻め込まれることも多かった。前半だけなら、カンボジアの狙いどおりに進んだ試合だったと言っていい。

 ところが、そんな前半の試合展開から一転、後半に入ると日本が次々にチャンスを作り、2−0で勝利した。

 ハーフタイムを境に試合の流れを変えるきっかけとなったのが、MF柏木陽介の投入である。

 MF山口蛍とともに2ボランチを組んでいたMF遠藤航に代わり、後半から柏木がピッチに入ると、背番号7の左足から放たれる敵DFラインの背後を狙った浮き球のパスで、日本は次々とチャンスを作った。

 終わってみれば、5日前に行なわれたシンガポール戦(3−0)に続き、柏木の存在ばかりを際立たせる結果となった。対照的に、前半45分間のみの出場で退いた遠藤は、あたかも前半の"戦犯"であったかのようだ。

 確かにこの日の遠藤はパスミスをはじめとするボールコントロールの乱れが目立ち、自らのミスからカウンターを受けるピンチも招いた。だが、イージーミスが見られたことは柏木も同様であり、柏木個人が特別にスーパーな仕事をしたかというと疑問は残る。

 チームとしてのゲームプランを含めた試合展開のアヤが、ふたりの(あくまでも印象として)明暗を分けはしたが、だからと言って、柏木は「二重丸」、遠藤は「バツ」と評価してしまうのは、あまりフェアではないように思う。

 実際、柏木自身もこんなことを話している。

「前半に出た選手がみんな頑張って、(10月に行なわれた親善試合の)イラン戦(1−1)もそうだったけど、オレは後半から出て、(スペースが)空いてきたところでプレーしている。それに、(前半にベンチから)相手の出方も見たうえでプレーできているから」

 要するに、先発メンバーとして試合開始から出場することと、試合途中から出場するのとでは、そもそもプレーの条件が異なるということだ。

 柏木は、「オレはシンガポール戦でいい芝の中でプレーできたけど、今回のカンボジア戦に出た選手はピッチが(慣れない人工芝で)難しい中でプレーしなければいけなかった。しかも前半は、相手が(試合前に予想していた以上に)高い位置から(プレッシャーをかけに)出てきたっていうところで少し焦りがあったのではないか」と語り、「(自分は)運がよかったっていうのもあると思う」と続けた。

 つまり、後半からピッチに立った柏木は"おいしい"役回りを担ったに過ぎないということだ。

 もちろん、遠藤本人は反省の弁を口にする。

「後半は陽介くんとかがシンプルに裏を狙っていたように、自分もそういうところは狙っていければというのはある。FWが裏へ走ったところに、一度浮き球で五分のボールを出して、そのセカンドを拾うとか、そういうことをやってもよかった」

 日本は前半、DFラインの背後よりも、むしろ相手が守備ブロックを作って待ち構えている狭いエリアへ、無理に突っ込んでいくような攻撃が目立った。遠藤が言う。

「オカさん(FW岡崎慎司)と(MF香川)真司くんのところでの縦のコンビネーションをやっていこうという指示もあったので、その辺の崩しを自分が縦に(パスを)入れることによってできればよかったけど、相手も密集していたので難しさはあった」

 前半に関して言えば、やはり遠藤個人というよりも、チームとしての攻撃の狙いに問題があったことは否めない。遠藤は、「でも自分のミスも多かったし、代えられたのはしょうがない」と潔く認めたが、決して遠藤を外したことが理由でチームは好転し始めたわけではない。攻守両面において、それほど前半はチーム全体の機能性が低かった。

 柏木が「(本田)圭佑くんにも『オレが(裏に)飛び出たらボールをくれ』って言われていて、その瞬間にパスを出すこともできた。そうやってみんなで話し合いながら意思の疎通ができていたし、チームとして後半、どうやっていくのかっていうところでは、前半の問題点を改善できた」と振り返った後半との違いである。

 結果として、ふたりのボランチの明暗を鮮明に分けることになったカンボジア戦。だが、試合前日にキャプテンのMF長谷部誠が、「こういう予選を通じて若手が成長するのは必要なこと」と語っていたように、3年後のロシアW杯を見据えるならば、20代前半の若い選手が台頭してくることは不可欠な要素である。せっかく伸び盛りにある22歳の選手を、この1試合で不合格にしてしまってはもったいない。

 これをきっかけに「やはり若い選手では厳しい」というムードが蔓延してしまわないことを望みたい。

浅田真樹●文 text by Asada Masaki