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●シンプル化の哲学を受け継ぐ「Dell Blueprint」
PCやサーバ機器からソリューションベンダーへと変貌を遂げたデル。企業向けソリューションの展開に当たり、同社が長年取り組んできているテーマが「ITのシンプル化」だ。オープン化とIAサーバのコモディティ化により、ITはあらゆる企業がビジネスを行ううえで欠かせないツールになった。ただ、その一方で異種混在環境によるITの複雑化が進んだことで、多大な管理コストと運用負荷が企業の重荷になった。デルが取り組んだITのシンプル化は、企業が直面するそうした課題に、標準化、統合化、自動化でこたえるものだった。

Ahmad氏によると、ソリューションベンダーとしての戦略も、デルが取り組んできたこのシンプル化の哲学の延長線上にあるという。

「企業がベンダーにロックインされずに、ヘテロジーニアスな環境下で、オープンなアーキテクチャをスケーラブルに展開できるようにすることがデルのシンプル化の哲学です。買収によって製品や事業を統合するというよりは、さまざま企業とアライアンスを組み、ユーザーのIT環境をシンプル化していくことが我々のミッションです」とAhmad氏。

そもそも、これまでにデルが買収してきたセキュリティ管理や運用管理、ネットワークやストレージ、仮想化製品などは、複雑化するソリューションのシンプル化を目指したものだ。製品開発からサービスのサポートまでを一貫して提供できるようになった現在でもオープンである意味ベンダーニュートラルな製品展開を続けている。たとえば、ソリューション提供においては、ネットワーク機器ではオープンないわゆるホワイトボックスを推進し、ストレージ機器ではVMwareやNutanixと連携したSDS製品を展開する。また、仮想化環境基盤ではマイクロソフト、VMware、RedHatなどをパートナーとしアプライアンス製品を展開する一方、OpenStackも積極的に推進する。

そんなオープンさにこだわるデルが、ソリューション提供の基本戦略として提唱しているのが「Dell Blueprint」だ。

「ユーザー企業はいま、従来のITと新しいITの両方に対応していく必要に迫られています。デルでは、両方のITに対応していくことをFuture-Ready ITと呼んでおり、そのための戦略がDell Blueprintです」とAhmad氏。

文字通り、ユーザーに対してITのこれからを示した青写真となるものだ。

○ユーザーに求められるワークロードを7つのカテゴリーに分類

デルのDell Blueprintは「検証済みソリューション設計書」に位置づけられ、現在、ワークロードごとに7つのカテゴリーとして体系化されている。

7つのカテゴリーとは、「UC&C」「VDI」「Business Processing」「Virtualization」「Cloud」「Bigdata & Analytics」「HPC」を指している。この分類は2014年からはじまり、少しずつ具体的なソリューションが展開されていき、今年の「Dell World 2015」で、ほぼかたちとして仕上がったという。

UC&Cは、マイクロソフトの「Lync」や「Skype」といったユニファイドコミュニケーション&コラボレーションに関する製品を取り扱う。VDIは「VMware Horizon View」や「Citrix XenDesktop 」「Dell Wyse」といった製品群で、Business Process Workloadは、SAPやOracleのミドルウェア、業務アプリケーション製品群で構成。また、Virtualizationは、マイクロソフト、VMwareの各仮想化ソフトのほか、「EVO:RAIL」などのコンバージドインフラを扱い、Cloudはハイブリッドクラウドを構成するための製品が中心となる。Bigdata & Analyticsでは、マイクロソフトのAnalytics Platformや、Cloudera Apache Hadoop Solution、SAP HANA Applianceなどで構成。HPCでは、ハイパフォーマンスコンピューティング向けのサーバやストレージ構成の提供が中心となる。

「従来のITと新しいITの両方で求められるワークロードごとに、ユーザーが対応しやすいようにカテゴリーを分類しています。事前に検証したソリューションのアーキテクチャを推奨構成として提示するとともに、ハードウェアやソフトウェアを統合した具体的なソリューション製品として提供します。これにより、ユーザーは、取り組みの進捗や必要に応じて、将来に向けたITをシンプルに利用することができるようになるのです」(Ahmad氏)

●事前検証して提供される2つのソリューション
これら7つのBlueprintを具体的にソリューションとして実装したものが「リファレンスアーキテクチャ(Reference Architecture)」と「エンジニアドソリューション(Engineered Solution)」の2つだ。

リファレンスアーキテクチャは、ソリューションのアーキテクチャを示した設計書で、どのような機器をどう構成すればいいかが詳細に記されている。Webサイトからダウンロードして参照することで、実装を容易に行うことが可能になる。

たとえば、仮想化/クラウドのリファレンスアーキテクチャとしては、以下が提供されている。

・「Reference Architecture: VMware vSphere 6.0 U1 on Dell PowerEdge FX2」
 モジュール型サーバ「PowerEdge FX2」における、vSphere 6.0 U1を使った仮想環境構築の推奨構成

・「Hyper-V Dell PowerEdge VRTX Reference Architecture」
 小規模統合型インフラ「PowerEdge VRTX」におけるHyper-Vの推奨構成

・「Dell Red Hat Cloud Solutions Reference Architecture」
 「Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform 7」を用いたクラウド基盤の推奨構成

このリファレンスアーキテクチャで使用しているPowerEdge FX2やPowerEdge VRTXはデルが提供する統合型インフラ製品だ。それを最適に利用するための仮想化製品の構成例を推奨構成として提示することで、ユーザーの検証や運用時のトラブル対応などの負担を削減しているわけだ。リファレンスアーキテクチャでは、ユースケースごとにどのくらいのROIが期待できるかといった検証データも公開されている。

そのうえで、このリファレンスアーキテクチャに基づいて事前に機器や構成をセットアップし、顧客の環境に合わせてすぐに利用できるように提供するのがエンジニアドソリューションとなる。たとえば、仮想化/クラウド/ビッグデータ&アナリティクスに関連するエンジニアドソリューションとしては、以下のような製品が提供されている。

・「Dell Engineered Solutions for VMware EVO: RAIL」
 事前検証、セットアップ済みで提供されるVMware EVO: RAILのソリューション

・「Dell XC Web-scale Converged Appliance」
 Dell PowerEdgeサーバとNutanixソフトウェアを統合したソリューション

・「Dell Engineerd Solutions for SAP HANA」
 SAP HANAをPowerEdgeサーバに展開しモジュール単位で拡張できるソリューション

導入当初は規模に応じたサイズ(L、M、S)を選択し、事業拡大とともにスケールアウトさせるといった展開も可能だ。エンジニアドソリューション自体は、アライアンスパートナーの新製品展開やユーザーニーズの変化にあわせて、随時拡充していく予定だという。

○「Blueprintは日本市場に適している」

Ahmad氏によると、Dell Blueprint、リファレンスアーキテクチャ、エンジニアドソリューションはグローバルで同一のものが展開される。各国の企業やパートナーとの取り組みで得られた知見やノウハウをグローバルレベルでまとめ、それを標準的なモデルとして、各国で横展開できることも強みだという。

なかには、大規模企業を中心に固有のニーズが生まれることもあるが、そうした場合は、その企業に向けてカスタマイズを施せるようなソリューションの提供も行う。たとえば、自前でデータセンターを保有し、サービスを展開するサービスプロバイダーやテレコム企業、大規模なエンタープライズに対しては、Dell Datacenter Scalable Solutions (DSS)というソリューションの提供も開始することを発表した。

Ahmad氏は、Blueprintとその実装であるソリューションは、日本市場のニーズにも適していると指摘と、次のように展望を示す。

「日本は、7つのBlueprintすべてに対して高いニーズがあります。特に、成熟市場ということもあり、ハイブリッドクラウド、ビッグデータ、HPCの分野で、先進的な取り組みを行っているという印象を持っています。Blueprintのなかでも、ビッグデータとアナリティクスは新しいITへの取り組みの中心となるもの。アライアンスパートナーとの連携をさらに深め、ソリューションの拡充を進めていくことで、日本企業の取り組みを強力に支援していきたいと思います」(Ahmad氏)

(齋藤公二)