岡崎がPKを蹴ったのは、2011年アジアカップ準決勝、韓国とのPK戦以来、4年ぶりだった。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 カンボジア戦の47分、岡崎慎司がペナルティスポットへ向かった時は、驚いた。
 
 この侍ストライカーがPKを蹴るのは、2011年アジアカップ準決勝、韓国とのPK戦以来、4年ぶりだ。当時はふたり目のキッカーとして、ゴール左上の隅へ思い切り蹴り込んだが、今回はグラウンダーで狙おうとして失敗。コースがあまりにも甘く、ほとんど入る可能性を感じないPKになってしまった。

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 低調なパフォーマンスに終始していた試合を一気に好転させ、プレッシャーから開放される可能性を秘めたPKだったが、モノにすることはできず。ちょっと嫌な空気になったが、その4分後、オウンゴールで先制できたのは幸運だった。
 
 失敗を懸命に取り返そうとする、岡崎の姿勢には胸を打たれるものがある。相手チームがプレミアリーグのクラブだろうと、カンボジアだろうと、常に全力を尽くそうとする姿勢を、心からリスペクトする。
 
 だが、それでも、決めるべきPKであったことは間違いない。そもそも、なぜ岡崎が蹴るのか? 異論があるのは、そこだ。
 
 結果論でもあるので難しいところだが、基本的にPKは、セットプレーのキッカーが務めるべきだと考えている。同じシュートでも、インプレーのそれと、セットプレーのそれは、まったく質が違うからだ。
 
 軸足をどこに踏み込むのか。上半身をどのくらい倒すのか。身体をどこへ向けるのか。足のどの面に当てるのか。フォロースルーはどうするのか。
 
 キックフォームを決めるのは、インプレー中に関しては、ボールである。ボールの勢い、角度、高さなど、目の前を動くボールに合わせて、蹴りたい方向へ蹴るためのキックフォームを、“リアクションで”作る。それがサッカーにおける通常の技術だ。
 
 ところが、セットプレーは少し異なる。
 
 最初からボールがピタッと止まっているのだ。それに対して、キッカーは後ろに下がり、助走の距離を取る。まず、このような動作自体が、インプレー中にはほとんど存在しない。ボールが最初から止まっているので、リアクションでキックフォームを作れず、“自らアクションして”、キックフォームを作る必要がある。例えるなら、ゴルフに近い。サッカーにおいては、少し特殊な状況と言える。
 
 クリスチアーノ・ロナウドがFKを蹴る時、いつも決まって5歩下がることは有名だ。セットプレーのキッカーとして熟練した選手は、ルーティンを持っている。いつも同じように助走し、同じ角度で、同じ面に当てる。プレッシャーのかかる場面でも、ルーティンさえ守ればいい。ボールはいつも止まっているのだから、なにも変わらない。「PKはメンタル」と言うが、メンタルを支えるのは、ルーティンだ。
 
 日本代表のPKキッカーは、岡田ジャパンでは中村俊輔や遠藤保仁、ザックジャパンになってからは、本田圭佑が務めてきた。全員、FKのキッカーでもある。
 
 今回は本田がベンチスタートになり、事前に岡崎がキッカーに指名されたが、やはり本田の代役にも、セットプレーのキッカーに慣れている選手を指名するべきだった。
 
 宇佐美貴史はG大阪でFKを蹴っているし、後半から投入された柏木陽介は、浦和でかなり多くのセットプレーを任されている。彼らが「本田がいないなら俺が蹴る」と、ミーティングで主張しても良かったのではないか。
 
 ハリルホジッチは「23人のチーム」を強調している。最終予選が始まるまでに、もっとディテールにこだわり、もっと主張する姿を見せて欲しい。ハリルジャパンを、もっともっと熱くしてくれ。

文:清水英斗(サッカーライター)