自律飛行型ドローンはできますか? 東大の若き研究者・此村領に訊いてみた

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本誌で毎号、J-WAVE「HELLO WORLD」とともに「SF映画的ギミックの実現度」を追求するこのコーナー。今回のテーマは『オブリビオン』にも登場した自分の意志で自由に飛び回る「自律飛行型ドローン」。若き研究者・此村領に、このテクノロジーの行く末を訊ねた。(『WIRED』VOL.19より転載)

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HELLO WORLD」のナビゲーターDJ TAROと『WIRED』が今回訪ねたのは、東京大学博士課程に在学中で、自律飛行型ドローン「Phenox」を開発する此村領氏。ドローンの未来について伺うべく、ラボを訪ねた。

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HELLO WORLD(以下HW) 現在此村さんが開発していらっしゃる「Phenox 2」は、従来のドローンと何が違うのでしょうか?

此村(以下K) 一般的なドローンは、人がコントローラーで外部から操作しますが、Phenox 2は、水平方向と下方向に付いているカメラと距離センサーによって自分の周囲の環境を把握し、自分で判断して飛行をするという自律飛行型ロボットです。正直、ぼくはドローンという言葉があまり好きではなくて、自分としては「空飛ぶ小型コンピューター」をつくっている感覚なんです。

HW コンピューター、ですか。

K はい。航空宇宙工学を専攻しているので誤解されがちなのですが、Phenoxの開発をはじめたのは、回路が好きだからなんです。大学に入ってからハマったのですが、とにかく回路を小さくすることに夢中になって、「小さくて賢い装置が役に立つのはどの領域だろうか」と考えたときに、「ホヴァリングするロボットをつくればいいんじゃないか」という答えに行き着いたんです。飛びながら自分で考えることができるモバイルロボットに、どんな可能性があるのかを確かめてみたくなったというか。

此村 領︱Ryo Konomura
1989年茨城県生まれ。東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻(知能工学研究室)博士課程在籍。Phenoxのチーフクリエイターとして、人間の日常生活や仕事を支援する、画期的なロボットを生み出すための理論・実験研究に取り組んでいる。2013年度IPA未踏IT人材発掘・育成事業に採択。

HW 「飛びながら自分で考えるモバイルロボット」と聞いて真っ先に思い浮かべるのは、トム・クルーズが主演した『オブリビオン』に登場した、丸いドローンです。外敵から重要施設を守るべくパトロールをしたり、顔認識で敵と味方を見分けたり……。あれって、Phenoxの進化系ではないでしょうか?

K 『オブリビオン』、実は観てないんです。でもそんなドローンが出ているなら観てみようかな。確かに、Phenoxは周囲の環境に合わせて飛べますし、例えば着ている服やメガネの有無を判断することで、人を判別することは現時点でも可能です。何しろ「パソコン」なので、Linux上でプログラムを書けば、さまざまな行動を自律的に行ってくれます。顔認識は計算処理が重いので、スペック的にまだ難しいですけれど。

HW 今後解決するべき課題があるとすれば、どんな点でしょうか。

K いまは2方向のカメラで「特徴点」というものを取り、その差異で自分の位置をリアルタイムで計算しているのですが、まだ人がいる空間をルンバのようにスイスイ飛ばすまでには至っていません。その精度を上げていき、あとは自ら充電する方法を編み出さないと、完全な自律型とはいえないと思っています。飛行だけではなく、Linuxを動かすのにもパワーがいりますからね。

HW 此村さんは、この先Phenoxがどのような用途に使われていくと予測しているのでしょうか?

K さまざまなアプリケーションが考えられますが、ぼく自身はとにかく小型化することに注力し、あまり用途に関しては考えないようにしています。例えば「Phenoxを警備用に使ってほしい」とぼくが言ったら、そういう方向に限定されてしまいますからね。自由にアプリケーションを開発してほしいと思っています。

HW 注文してくるのはどういった業界の方々ですか?

K 大学のほかは、例えば通信、警備、自動車、ゼネコンといった分野で新規事業の研究をしている部門からのオーダーが多いです。

HW 自律型ロボットが進化をすると、コミュニケーションの分野での活躍も期待できるのではないかと思うのですが……。

K まさに、ヒューマン・コンピューター・インタラクションの領域において、「ふわふわと移動するロボット」と、どんなコミュニケーションを取ることが可能かという研究が進んでいますよ!

HW ペッパーのような人型とはインタラクションが違いそうですね。

K 見た目の違いもありますが、ペッパーって、ネットワークから情報を集めることで成り立っている知能じゃないですか。それだと実態がどこにあるのかがあいまいになり、少なくともぼくは愛着がわきません。ぼくは1対1の関係性を人とロボットの間で構築できるといいなと思っていて、それにはロボットの中でシステムが完結しているからこそ可能な、クローズドなコミュニケーションが不可欠だと思っているんです。ぼくがPhenoxで実現したいのは、実はそういった親密なコミュニケーションを生み出すことなんです。

11月19日(木)22:00〜放送。HELLO WORLD(81.3FM J-WAVE)
さまざまなトピックスを多角的かつ魅力たっぷりに紹介するプログラム「HELLO WORLD」(月〜金曜日の22:00〜23:30)。国内外のIT情報やガジェットへの造詣が深い、DJ TAROのナビゲートによる11月19日(木)放送の同番組では、『WIRED』編集部がスタジオに登場。

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