カンボジア戦ではリスクを冒して『新たな組み合わせ』をテストしたハリルホジッチ監督。そのチャレンジ精神は評価したい。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 後述はするが、課題はいくらでも見つかる2連戦だった。それでもまず、アウェーで積み上げた勝点6を評価したい。ハリルホジッチ監督の「レベルは違いますし、同じように準備はできない」という言葉を借りるまでもなく、ワールドカップ予選と本戦はまったくの別物。とりあえず勝利が前提のゲームで数字上最高の結果を得たのだから、そこは素直に称えるべきだ。
 
 ハリルホジッチ監督自身も、しっかりとこの2連戦で掲げた“公約”を果たした。メンバー発表会見の時から口酸っぱく繰り返した『サイドアタック』が奏功したシンガポール戦、「リスクでもある」としながら『新たな組み合わせ』をテストしたカンボジア戦の両方で、『チャレンジ』の姿勢は貫いている。
 
 これまでは起用メンバーがやや固定化したため“マンネリ”感が強かったが、10月のシリア戦に勝利して当面のライバルを上回ったことで、ようやく殻を破りつつあるのだろう。しっかりとアジア対策を練ったうえで新たな戦術、人材を試した11月シリーズでの戦い方は、内容はどうあれ先見的だった。
 
 そのうえで、金崎、柏木という計算の立つ戦力が見つかったのも好材料となる。前者は所属する鹿島でのパフォーマンスそのままに、アグレッシブな突破で前線を活性化。CFの競争意識を助長させている。なによりシンガポール戦の鮮烈な先制ゴールは、観る者に希望を抱かせた。右足の打撲でカンボジア戦を棒に振ったのはつくづく惜しまれるが、今後も多くのチャンスが与えられるはずだ。
 
 後者に関しては、ゲームメーカーとして違いを見せつけた。今回はボランチに長谷部、遠藤、山口、柏木の4人が選ばれたが、先に挙げた3人はそれぞれ局面ごとのインテンシティに強みを持つ選手。試合の展開を読み、流れを作るタイプの柏木は希少である。
 
 新たな背番号7は左足で組み立て、崩し、FKも得意とする。「毎回言っているけど、この相手にならできて当たり前」と言い切る上昇志向も頼もしい限りだ。本人が語るように、今後はさらに高いレベルの試合でパフォーマンスが維持できるかが見どころになる。
 金崎、柏木という新たに計算の立つ選手が見つかったとはいえ、その柏木が不在だったカンボジア戦の前半で顕著だったように、チームとして上手くいかない時間帯は短くなかった。その大きな要因となったのが、“臨機応変さ”の欠如だ。
 
 そもそも11月シリーズは、これまで中央突破に固執した反省を踏まえ、サイド攻撃にプライオリティを置いて臨む2連戦のはずだった。すなわちハリルホジッチ監督はこれまでを振り返って、「ダメなら次善策を採用しよう」というメッセージを発したわけだ。
 
 しかし、試合のなかでその次善策を採れたかと言えば疑問符が付く。例えばカンボジア戦の前半は指揮官から「裏をすごく要求された」(宇佐美)そうだが、明らかにスペースは消されていた。合理性に欠いた攻めを繰り返して「すべてが上手くいかなかった」(宇佐美)のも無理はないだろう。
 
 ならば裏へのボールに固執せず、サイドチェンジなどで横に揺さぶりながら崩す必要がある。そこで全体の意思統一ができずに攻め方を変えられなかったのは看過できない。
 
 カンボジア戦の前半ほどではないにせよ、早い時間帯でリードを奪ったシンガポール戦でも、少なからず一本調子の傾向が見られた。2-0の状況下でリスクをかけにくいのは理解できるが、それなら逆に相手を呼び込んでカウンターを狙っても良かったはず。後半に中だるみを招いたのは、流れに身を任せ過ぎて、判断力が足りなかったからだ。
 
 また、2試合を通じて前後半でパフォーマンスがガラリと変わった点も(シンガポール戦は前半○、後半×。カンボジア戦は前半×、後半○)、流れのなかで状況を変える一手が見つからなかったことの証左となる。ハーフタイムのミーティング以外で、どう戦況を変えるか。選手にも指揮官にも、臨機応変さは求められる。