「無痛〜診(み)える眼〜」(フジテレビ水曜よる10時)第7話より

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西島秀俊主演のドラマ「無痛〜診(み)える眼〜」(フジテレビ水曜10時)。


"兄弟のようにじゃれ合う西島秀俊と伊藤淳史


原作は久坂部羊の『無痛』(幻冬舎文庫)。ドラマでは、オリジナルエピソードがふんだんに盛り込まれ、原作とはずいぶん趣が異なる。例えば、為頼の"診察眼”に対する葛藤。たしかに、原作の為頼も悩んではいるが、どちらかというと斜に構えた印象のほうが強い。一方、ドラマの為頼はごくまっすぐに葛藤し、戸惑い続ける。痛みに苦しむ恩師の姿に動揺し、白神院長の研究に希望を見出す。

為頼医師と早瀬刑事(伊藤淳史)との兄弟のようなじゃれ合いも、ドラマオリジナルだ。凄惨なエピソードがあまりに続くと疲れてしまう。見る側の疲弊感をフォローするためなのか、女性ファンを意識してなのか、おちゃめな西島秀俊を味わうタイムも、毎回用意されている。第6話では、まず義姉役の浅田美代子に「うつむいたってしょうがないでしょう。やれることをやるしかないのよ」と叱られ、食事を取り上げられそうになる。

さらに、終盤では、早瀬刑事と一緒に「大の大人がご飯食べる余裕もないわけ? それじゃ仕事できなくても当然ね!」とハッパをかけられ、片付けられそうになって慌てるというシーンもあった。こうしたノンキなシーンがはさまれることで、原作の暗さや重く苦しさがかなり和らいでいる。一方で、緊張がとぎれ、謎に集中しきれなくなるというリスクもはらんでいる。和らげるのか、尖らせるのか。ドラマ自体はもちろん、世間の空気を探るヒントとして、このフォーマットがどこまで多くの人をつかむのかが最終話まで見守りたい。


さまざまな作品に描かれてきた「無痛症」


ヒロイン・菜見子を慕う、異形の青年・イバラ。原作のタイトルにもある”無痛”は、イバラが生まれながらにして、痛みを感じない「先天性無痛症」であることに由来する。

無痛症はこれまでも、さまざまな作品に描かれてきた。例えば、マンガ「ヤング・ブラックジャック」(原作:手塚治虫、脚本:田畑由秋、マンガ:大熊ゆうご/秋田書店)。3刊所収の「苦痛なき革命」に登場する黒人解放活動のリーダーを務める青年ジョニーは、無痛症。ただし、先天性ではなくベトナム戦争の最中に起こった、あるできごとがきっかけで無痛症になったという設定。また、クァク・キョンテク主演の韓国映画「痛み」(2011)では、交通事故の後遺症で痛覚を失った男と、血友病で痛みに敏感にならざるを得ない女が出会い、惹かれ合っていく姿が描かれた。


「無痛症」は実在する難病だ。生まれながらにして痛みを感じることができず、発汗機能の低下をともなう「先天性無痛無汗症」は平成27年7月から障害者支援法(厚生労働省)の対象疾病にも加わった。

ただし、作中で描かれる"体ばかりか精神面の痛みを感じない”というイバラのキャラクターは、あくまでもフィクション。むしろ、精神的痛みは人一倍あり、傷や腫れ、流血から視覚による痛みも感じるという(NPO法人無痛無汗症の会トゥモロウ公式サイトより)。


さて、第7話では、佐田の手首が菜見子のロッカーから見つかる。一気に猟奇性を帯びてきたが、このまま、そちらに大きく舵を切るのか、それともほのぼの路線でバランスをとるのか。今夜10時から!
(島影真奈美)