背後を突かれてピンチを招いた吉田。カンボジア相手に後手を踏むようでは、先が思いやられる。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

写真拡大 (全3枚)

 シンガポール戦同様に押し込む展開が予想されるなか、いかに攻撃に絡めるかが評価軸となるはずだった。だがそれ以前に、守備で不安定さを露呈。相手の持ち札はカウンターとセットプレーだけだと分かっていながら軽率なミスでピンチを招いたのでは、とても合格点は与えられない。

【PHOTOギャラリー】W杯アジア2次予選 第6戦|カンボジア 0-2 日本

 最大の誤算はCBのパフォーマンスだ。9分、前に出てボールをカットしようとした吉田が一発でかわされる。22分には槙野の不用意なパスが奪われ、エリア内からシュートを放たれた。カンボジアのシュート精度の低さに助けられたが、どちらも失点しておかしくないシーンだった。あっけなく中央で裏を取られる脆弱さは、アジア最終予選では致命傷になる。
 
 フィジカル不足も深刻だ。シリア戦やイラン戦ならいざ知らず、カンボジアの9番相手に競り勝てないようでは、不安が募るばかり。スピードで振り切られる場面も散見し、カバーリングも徹底されていなかった。
 
 慣れない人工芝のピッチやボール、暑さからくるコンディション不良など、言い訳を探せばいくつも見つかる。「予選において簡単な試合はない」(吉田)のも事実だ。それでも、カンボジア戦で見せた守備は、世界を目指すアジアの強豪として恥ずべきものだった。
 
 そんなCBに比べれば、SBのふたりはまずまずの出来だと言えよう。「昨日の夜に(先発だと)聞きました」と語る長友は、代表では珍しい右SBでも大人なプレーを見せた。藤春はもう少し積極性が欲しかったところだが、「前半も決められる場面があったが、なんとか最後にアシストできた」と本人が振り返るように、ふたつの決定機に絡んでいる。11月シーリーズの2試合で、クロスからダイレクトにゴールが生まれたのはこの日の2点目のみ。指揮官が求めるサイドアタックは体現できていた。
 
 ただし、両サイドともに攻撃のほとんどの局面で相手に数的優位を握られ、効果的な細かい崩しが見られなかったのは反省材料だ。“即席感”の強い顔触れだったとはいえ、ウイングやボランチとの連係には詰めるべき点が多く残っている。
 
 暗いニュースという意味では、CB以上のセクションかもしれない。“救世主”柏木の登場により事態は好転したが、前半の3人の関係にはまるで良いところがなかった。
 
 キャプテンとゲームメーカーの不在は如実に表われていた。引いた相手を崩す場合には、当然ボランチが組み立ての中心になる。しかし、山口と遠藤は5人のDFの隙を突くどころか、その前に位置する4人のMFの網さえ破れなかった。組み立てのリズムが上がらず、苛立った香川がポジションを下げるという悪循環にも陥っている。
 
 リスク管理も不十分だった。ボランチふたりの役割分担が曖昧で、一度ボールを奪われると相手のロングフィードを潰せもせず、かといってCBのフォローにも回れていない。ただ頭上を越すボールを眺めていた印象が強い。
 
 また、香川のトップ下は、残念ながら改善の兆しが見られない。ボランチとの距離感が悪く、周囲とのコンビネーションという生命線を断たれ、思うようにパス交換ができなかった。時折はキレの良い反転を見せるものの、シュートが枠に飛ばないのも見慣れた光景だ。何度も天を仰いだ背番号10は、試合後のミックスゾーンを無言で通り過ぎた。
 
 ハリルホジッチ監督は「いろんな選手をトライし、補完関係のない選手を使ったのは私の責任だ」としたが、チャレンジした指揮官を責めるのはお門違いだろう。むしろ、この失敗で選手起用が凝り固まってしまっては、せっかく生まれつつある競争意識が再び鎮火してしまう恐れがある。
 
 シンガポール戦に引き続き、柏木が違いを生んだのは喜ぶべきこと。しかし、今度は逆に“柏木依存”の色が濃くなってきている。
 
 まず気になったのが、サイドでタメを作れず、“幅”を使えていなかったことだ。確かに両翼の原口、宇佐美はともに縦への勝負で力を発揮する選手である。とはいえサイドアタックという観点では、あまりにSBとの相互理解が足りなかった。
 
 単騎の突破に固執しても、それが結果につながれば許される。しかし、待ち構えるDFにスペースを消されて裏に走り込めず、前を向いてボールを受けてもふたり以上の相手をかわしてフィニッシュに持ち込む場面は限られた。宇佐美に言わせれば、「すべて良くない方向に行ってしまっていた」。
 
 ならば、SBのオーバーラップを待って数的不利を解消すべきだった。SBが高い位置でボールを持った際には、同サイドのウイングまでエリア内でクロスを待ち構えるなど、無駄の多さも目立った。
 
 もちろん、サイドアタックの成否はボランチの配球によるところが大きい。後半は多少改善されたことを見ても、両ウイングの孤立は宇佐美と原口だけの責任ではないだろう。それでもシンガポール戦の本田と武藤に比べると、数段落ちのパフォーマンスだった。
 
 1トップに関しては、岡崎の乱調が思わぬ副産物を生んだ。本田の起用である。本人は「FWって、練習してできるようなポジションなのかなっていう疑問がある。野生の勘みたいな、そういうのを僕はほとんど持ち合わせていない」と否定するが、ボールキープと決定力は客観的に見て頭抜けている。
 
 柏木同様に格上の相手に対する不安はあるが、南アフリカ・ワールドカップで結果を残した“CF本田”は、より可能性の高いソリューションと言えよう。ただ、これがチームにとっての進化なのかと問われれば怪しいところだが……。