先発起用された宇佐美だが、突破のシーンもほとんどなく、不完全燃焼。チームとしても横の揺さぶりが足らなかった。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 カンボジア戦は、ハリルホジッチ監督がまだまだアジアの戦いを把握し切れていない、という現実が浮き彫りになった試合だったと思う。

2015.11.17 W杯アジア2次予選 第6戦|カンボジア 0-2 日本

 勝利は最低限の“ノルマ”。ボールが転がらない人工芝、中4日での疲労、蒸し暑さ、相手の守備的戦術を考慮しても、FIFAランキング183位のカンボジアとの実力差(日本は同50位)ならば、5点、6点は取ってしかるべきだ。
 
 ハリルホジッチ監督の目指すサッカーにおいて、最優先事項は縦の攻撃である。ただし、カンボジアや先日のシンガポールのように、中を固めてスペースも時間もない状況では、無理をして縦を狙うのではなく、キープしながら機を見てサイドを使うのが効果的だ。前半は5-4-1のブロックを敷くカンボジアに対して、一本調子でタメがなかった。個人的には、宇佐美に突破の場面を作ってほしかったが、チームとして横の揺さぶりも見られなかった結果、崩し切れずに得点につながらなかったわけだ。
 
 そんななか、突破口を切り開いたのが後半開始から出場した柏木だ。彼は、最初の15分ほどで左右にボールを散らし、守備でリズムを掴み始めたカンボジアに横の揺さぶりをかけた。そこからカンボジアに足を攣る選手が出たり、疲労の色が濃くなったのは明らかだった。攻守の切り替えが遅くなり、徐々に間延びしていく相手に対し、すかさず動き出しの早い岡崎や両サイドの選手にボールを供給して、崩しにかかるあたりは抜け目がない。
 
 つなぐパス、相手を誘い出すパス、サイドに捌くパスの巧みな使い分けは前回も触れたが、カンボジア戦ではとりわけサイドに捌くワンタッチプレーが秀逸だった。ワンタッチとツータッチでは、受け手が相手から詰められる距離が大きく変わってくる。FWやSBからすれば、アタッキングサードで相手を振り切る動きをした瞬間に、精度の高いボールが出てくるから、本当に楽だと思う。選手の特長を引き出す配球は実に的確で、長谷部や山口、遠藤とは一線を画す存在だ。
 
 カンボジア戦ではオウンゴールを誘うFKを蹴り込み、パスを散らして相手をバテさせた。柏木の配球による“ジャブ”が効いていたから、終盤のカンボジアはカウンターに出る力すらなかった。ゲームを決めたのは柏木であり、今回の遠征で最も株を上げたのも彼だ。十分レギュラーに割って入る可能性を示したと言っていい。
 
 日本は、アジアでは守りを固める相手を崩す側だが、世界に出れば一転して相手にポゼッションされる展開に変わる。ある意味で、非常に難しい立場だ。相手の状況を見ながらゲームマネジメントを変えていく「柔軟さ」は、個人ではなく、チーム全体で共有しなければいけない。
 
 今すべきは、自分たちが目指すサッカーができなかった時の共通理解を深めること。例えば、中央を固める相手にサイド攻撃を仕掛けるにしても、その方法はオーバーラップだけではない。チリやメキシコがやっているように、走って追い越して、ペナルティエリアの中で起点を作る、あるいはパスの本数を増やしながらしつこくサイドを攻めるなど、バリエーションが求められる。前線にターゲットとなれる選手がいない状況ならばなおさらだ。
 
 また、ロシア・ワールドカップを見据えるなら、強豪国とのマッチメークも必須だ。率直に言って、アジア2次予選は強化にはならない。ヨーロッパやアフリカ、南米の代表チームといった強者と対峙してこそ、選手の真価は見えるもの。11月シリーズで存在感を示した柏木や金崎も、そういった相手に通用する姿を見せて真の「戦力」だ。日本代表が現状に満足しているとは思わないが、このままではまた本番(ワールドカップ)で同じ過ちを繰り返してしまうリスクは膨らんでいってしまう。
 
 今後、強豪国とのアウェーマッチは必須。例えばEURO2016の出場権を逃したオランダあたりは格好のターゲットではないだろうか。
 
 また、「高さ対策」についても考えないといけないだろう。ザッケローニ前監督は前線のパワープレーは採り入れなかったが、対世界を考えたうえでは備えておくに越したことはない。ある程度結果を残してきた選手にチャンスを与えて強化するのも、監督の仕事。ハーフナーや豊田あたりは使い切れないとしても招集すべきだし、そうでなければプレーする側もストレスが溜まってしまう。2016年はハリルホジッチ監督にあらゆる意味での“マネジメント”を追求してもらいたい。