後半から出場した柏木は、シンガポール戦に続いて輝きを放った。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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「皆さんご覧になったように、彼が入っただけでゴールに近付けたし、PKも得ることができました」とハリルホジッチ監督が称賛するのは当然だろう。間違いなく柏木は悪い流れを変え、チームを救った。
 
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 後半から登場すると、ファーストプレーで相手の裏にボールを蹴り込み、セカンドボールの競り合いから香川がPKを獲得。これは岡崎が止められてゴールならずも、柏木はその4分後、今度は正確なFKでチームに先制点をもたらしている。
 
 時に一発のフィードで裏を狙い、時に細かいパスで組み立てる。なにより際立ったのが、プレーメーカーとしての貢献だ。状況を的確に読み、攻撃の流れを作った。また、ポジショニングも的確だった。ボランチコンビを組む山口が持ち味を活かしてセカンドボールを拾えていたのは、カンボジアの選手の疲労だけが理由ではないだろう。
 
 シンガポール戦で魅せたゲームコントロールは、カンボジア戦でも健在だった。しかし、柏木本人から言わせれば「毎回言っているけど、この相手にならできて当たり前」となる。同時に、「3回ミスがあったから、そういうのはなくさないといけない」と反省も忘れない。
 
 カンボジア戦の決して満足できない勝利のなかで、唯一の救いとも言えるようなパフォーマンスを見せた柏木。間違いなくこの男は、アジアを勝ち進むうえで重要なピースになる。
 
 しかし、その裏でふたつの課題が浮かび上がる。
 
 第一に、さらに上のレベルの相手と対峙した時、柏木は同様に輝けるのか。11月シリーズの2戦は、ともにプレッシャーの少ない局面で優雅にボールに触れる背番号7が印象的だった。より激しく球際に来るアジアの強豪国や、日本が受けに回らざるを得ない世界レベルの国を相手に通用するかは、今のところ未知数だ。
 
 その一方で、この11月の2試合では攻撃面で柏木への依存度があまりに高く、背番号7を経由しなければ攻撃はまるで形にならなかった。これがふたつ目の課題だ。カンボジア戦の前半は遠藤にチャンスが与えられたが、残念ながらそのパフォーマンスは及第点には及ばなかった。慣れない連係やボランチとしてのタイプの違いなどエクスキューズはあるものの、このレベルの相手に通用しないようでは先が思いやられる。

 ここに来て、“柏木依存”とも言うべき問題が生じてきた。
 
取材・文:増山直樹(サッカーダイジェスト編集部)