「もう、オレは終わったのか?」 今年、グレーム・マクダウエルは、そんな自問自答を続けてきたという。北アイルランド出身、米国アラバマ大学出身の36歳。2010年に全米オープンを制したメジャーチャンプでさえも、成績低迷が続けば、やっぱり弱気になる。
「HSBCチャンピオンズ」を制した苦労人ラッセル・ノックス
 今年始めのマクダウエルの世界ランキングは15位だった。しかし、優勝はおろか、トップ10入りからもすっかり遠ざかり、先週の世界ランキングは85位まで下降していた。
 「もう、ゴルフは僕の人生における最優先事項にはなりえない」
ショットもパットも病んでいたが、ゴルフに対するモチベーションを失いかけていた理由の1つは、2014年に娘が生まれ、私生活が一変したことにあった。妻と娘と3人で過ごす幸せがゴルフへの情熱を上回り、「ゴルフをやる気が徐々に失せていった」とマクダウエルは振り返った。
 だが、それが不調に対する都合のいいエクスキューズ、逃避にすぎないと気付き、再びやる気を起こしたところが、さすがはGマックだ。例年、この時期の彼は欧州ツアーのレース・トゥ・ドバイの締め括りの数試合に出場していたのだが、今年は「悪い流れを過去へ葬り、新シーズンのいい流れを早いうちに作り出そう」と心に決め、欧州ではなくメキシコへ赴き、米ツアーのOHLクラシックに出場した。
 大会は雨天順延で月曜フィニッシュという不規則進行になったが、マクダウエルはラッセル・ノックス、ジェイソン・ボンとのプレーオフを1ホール目で制し、米ツアー3勝目を挙げて、2年ぶりに勝利の笑顔を輝かせた。それでも世界ランクは62位でトップ50に入り切れなかったが、「大きく向上できたし、何よりオーガスタへの切符をしっかり掴んだことがうれしい。年の終わりが新シーズンのいい始まりになった。僕はまだまだやれるんだ」と喜びを語った。
 1年の終わりが新シーズンのグッドスタートになったのは、マクダウエルだけではない。開幕4試合の優勝者は、すべて初優勝者ばかりで、彼らはみな最高のキックオフを切ったことになる。
 先週のHSBCチャンピオンズを制したラッセル・ノックスは、2007年のプロ転向以来、ただの一度も勝てなかったのに、一度優勝したら2週連続優勝に王手をかける活躍ぶり。「僕は勝てるんだ」という実績と実感がどれほど大きな自信になり、その自信がどれほど大きな力を生むかをノックスとマクダウエルが私たちに教えてくれた。
 ノックスとともにプレーオフで敗れたジェイソン・ボンにも同じような春が来る日は遠くないだろう。ボンは米ツアー通算2勝の実績はあるものの、ちょっぴり短気で激昂型だ。今年1月のフェニックスオープンでは、観客席から口汚い野次を飛ばした酔っ払い客に向かって、思わず卑猥なジェスチャーで派手に応戦。その様子がTVカメラに捉えられ、米ツアーから罰金を科せられる騒ぎになった。
 ボンといえば、その騒動が一番目立ったというぐらい、ゴルフにおいてはパッとしない1年を過ごしたが、新シーズンを迎えてからは開幕4試合中3試合でトップ3入りの大活躍を見せている。
 「優勝争いをしていれば、いつかチャンスが到来する」とは、多くの米ツアー選手たちが口にするフレーズ。その通り、成績が下がっても、勝てなくても、踏みとどまり、がんばっていれば、いつかチャンスは訪れる。そして、小さな自信が大きな自信へと膨らんでいき、自信が次なる勝利へ、成功へと導いてくれる。1年の終わりに新シーズンのいいスタートを切った選手たちは、掴んだ「自信」を武器に、どんどん大きくなっていく。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)
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