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日本大学の名誉教授の男性(77)が指定暴力団「山口組」の元幹部から2000万円を借りていた問題で、同大学は11月上旬、処分を決めた。男性は日大の大学院法学研究科の非常勤講師をつとめていたが、「大学の名誉を傷つけた」として解雇された。

報道によると、男性は現職の法学部教授だった約10年前、山口組系暴力団の組長だった人物から2000万円を借りた。「反社会的勢力」であることを認識していたが、そのまま付き合いを続けていた。大学側の調査に対して「脇が甘かったことを後悔している」と話したという。

今回のケースで、男性は非常勤講師を解雇されてしまったが、そもそも暴力団と個人的につきあうことは法的に問題なのだろうか。暴力団と交際すると、解雇されても仕方がないのだろうか。大川一夫弁護士に聞いた。

暴力団との交際は違法ではないが、「解雇」はやむなし

暴力団と個人的につきあうこと自体は、違法ではありません。

いわゆる『暴力団対策法』は、どういう団体が暴力団であるかを指定し、そのうえで、いろいろな行為を規制するという手法をとっています。その中に暴力団との交際は含まれていません」

大川弁護士はこう切り出した。暴力団との交際は法的に問題ないということだろうか。

「しかし、東京都を始めとする各地の暴力団排除条例では、その基本理念として、暴力団との交際を禁じています。もちろん、交際しただけで直ちに処罰されるわけではありませんが、暴力団排除条例が『暴力団との交際禁止』という理念を持っているということは、注意しなければなりません」

では、暴力団と個人的に交際すると、解雇されてしまうものなのだろうか。

「一般的に、仕事と関係ない私生活上のことは、直ちに解雇事由となりません。

ただ、その行為の態様が重大で、使用者の信用・名誉を著しく損なう場合、解雇事由となります。また、企業などは、暴力団からの被害を防ぐために、就業規則で『反社会的勢力』との交際を禁じています。

今回のケースについては、

(1)暴力団排除条例の理念に反する暴力団との交際があること

(2)大学の法学研究科であること

(3)借り入れた額が2000万円と高額であること

などから、条例も含めた現行法の体系上、解雇やむなしとされると思います」

暴力団排除条例そのものに課題はないのだろうか。

「これまでの説明は、暴力団排除条例が『合憲・合法』であることを前提としたものです。しかし実は、この条例自体が、暴力団には人権がないかのごとく厳しく社会から排除するもので、いろいろな問題を含んでいます。

たとえば、よく『暴力団をやめればいい』という人がいますが、社会で更生できる仕組みを作っておかないと、ただ排除するだけでは問題の解決になりません」

大川弁護士はこのように指摘していた。

弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士
大川 一夫(おおかわ・かずお)弁護士
大阪弁護士会所属、元同会副会長。
労働問題特別委員会委員、刑事弁護委員会委員など。日本労働法学会会員、龍谷大客員教授。連合大阪法曹団代表幹事、大阪労働者弁護団幹事など。
事務所名:大川法律事務所
事務所URL:http://www.okawa-law.com