2015年11月16日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)

最近、クライアントから「自社サービスのアプリを作りたいがどうしたらよいか」と問われたので、「やめたほうがいいです」と答えた。

ゲーム開発をするならまだわかるが、例えば自社製品を知らしめるようなカタログやメディアをアプリで作るのは、全くもって意味がないからやめたほうがいい。

なぜか?

それは、自社アプリを作って「消費者に告知し」「ダウンロードしてもらって」「使い続けてもらう」ことのハードルが恐ろしく高いからだ。

今の消費者は特定のアプリしか使っておらず、ダウンロードしても放置されて骸のようになっていくアプリばかりだ。ゲーム以外であれば、FacebookやInstagramのようなソーシャルアプリ、LINEのようなメッセージングアプリ、YouTubeなどの動画アプリ、あるいは2〜3のニュースアプリ以外は、ほぼ使われないと思ったほうがいい。
であるならば、Webで頻繁にコンテンツを配信し、FacebookやTwitter上で閲覧してもらうことを考えたほうがよほど効率的なのである。

2015年11月の時点で、コンピューティング(コンピューターを使うこと)とは、≒ インターネットを使うこと、と言っていい。そして、インターネットを利用する主たるプラットフォームは、PCからモバイルへとシフトしたこともまた、周知のことだろう。

同時に、モバイルでインターネットを活用するうえで、最も重要なアイテムはアプリであって、Webではない、Webはもはや死んだも同然である、と考えている人も多いはずだ。

しかし、そうではない、と僕は答えよう。
今後数年間にわたり、モバイルインターネットにおいてもアプリではなく、引き続きWebがさらに重要な存在となっていくと予言する。僕が言っているのは、アプリ vs Webであって、アプリ vs ブラウザーという意味ではない。

現在、一般的なモバイルユーザーがネットのトラフィックを消費する場は、概算だが、アプリが85%、ブラウザーが15%という状況らしい。アプリのうちゲームが30%程度で、残りはFacebookやInstagramなどのソーシャルアプリとメッセージングサービス、YouTubeなどが占めている。

しかし、ゲームはやむをえないとして、全体のトラフィックの50%以上を占めるソーシャルサービスの上を流れているニュースコンテンツのほとんどは、パーマリンクを持つデータ、すなわちWebベースのコンテンツなのだ。つまりブラウザーは確かに現時点ではアプリの中でマイノリティ化しているが、Webそのものは、いまだに大きなトラフィックを発生しつづけているのである。

アプリを開発し、ダウンロードしてもらうことが直接ビジネスにつながるというのであれば、それはそれでいいだろう。しかし、一般の企業にとってみれば、Web上でオウンドメディアを構築して、コンテンツを量産し、一般消費者が好んで使うアプリのうえでシェアしてもらうことに専念したほうがよほどいいのだ。

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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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