偉大な記録の更新に意欲を見せる西川。川島不在時の日本のゴールを守り続け、今や風格さえ漂わせるようになってきた。写真:徳原隆元

写真拡大

 冒頭15分だけの練習公開の間、GK陣はバスケットのドリブルゲームを行なった。コーチが邪魔をするなか、ペナルティエリア内でボールを突いて逃げ回る。ピッチとボールの感触を確かめるためだ。
 
「短い人工芝なのかなと思いましたが、意外とフカフカしていてボールが転がらない。GKとして特に気になるのは、グラウンダーやバウンドしたボールが素直に転がってこないこと。ゴムチップがあるので『キュッ』と止まったりもする」
 
 カンボジア戦の会場となるオリンピック・スタジアムのピッチ状態を、西川はそう説明している。さらに、今回はボールも特殊だ。見たことのないメーカーの、見たことのない青いボールについて問われ、西川は「Jリーグで使っているボールよりは重いかな。意外とブレるので、そこも注意しないといけません」と気を引き締めた。
 
 カンボジアもまた、シンガポール同様に守りを固め、攻撃はロングボールに頼ってくるはずだ。GKとしては、攻め込まれる機会は限られるが、同時に万が一の失態も許されない。ある意味でハイリスク・ローリターンな仕事を課せられている。
 
「頭の片隅には、なにかが起こると想定しておかないと。良い準備をして、なにが起きても想定内と思えるように。DFがミスをするかもしれないし、頭をクリアにしてやっていきたい。審判の笛もどう転ぶか分かりませんし、多くのお客さんが入ったなかで声が通らないかもしれない」
 
 あらゆる事態を想定し、ゴールマウスに立つ。これまでの予選4試合で無失点を貫く西川は、カンボジア戦を零封すれば、日本代表のワールドカップ予選における連続完封記録に並ぶ。川口(現・岐阜)、松永(現・横浜GKコーチ)ら偉大な先輩たちと肩を並べるのだ。
 
「そういう記録があるのであれば、並ぶのではなく超えていきたい。偉大な先輩たちの記録を超えられるチャンスなら、次も完封で日本に帰りたい」
 
 並ぶのではなく、超える――。そこに、日本代表の正守護神として自覚が芽生え始めた男の矜恃を見た。
 
取材・文:増山直樹(サッカーダイジェスト編集部)