11月13日にプリキュアの「オールナイトイベント」がバルト9で行われた。もちろん会場内にいるのは大きいおともだちだけ! みんなミラクルライトをスチャ!と構えている。
制作スタッフのトークと、歴代プリキュア劇場作品5本の上映(公開中の「映画Go!プリンセスプリキュア Go!Go!!豪華3本立て!!!」&映画「スイートプリキュア♪」「スマイルプリキュア!」「ドキドキ!プリキュア」「ハピネスチャージプリキュア!」)と、もりだくさんだった今回のイベント。第1部と第2部のトークを中心にレポをお届けする。


大人たちの「あつく・しぶとく・どろくさく」。映画のこだわり


今回の映画は史上初の3本立て。第1部は3人の監督のクロストークだ。「キュアフローラといたずらかがみ」の貝澤幸男監督、「パンプキン王国のたからもの」の座古明史監督、「プリキュアとレフィのワンダーナイト!」の宮本浩史監督が登壇した。司会はアシスタントプロデューサーの二階堂里紗P。

貝澤「プリキュアをやるにあたって目に飛び込んでくる言葉は『つよく・やさしく・うつくしく』。ただ、劇場作品を作っていくと、だんだん『弱弱しく・小言が多く・髪ボーボー髭ボーボーで汚らしく』なっていきました(笑)」
座古「かれこれ10年くらい、プリキュアに食べさせてもらっております! とってもプリキュアが大好きなので、(その気持ちが)作品になっていると思います」
宮本「ずっとプリキュアでCGをやりながらドラマを描くのをずっと『やりたい』と言い続けてきて、実現することができました。『つよく・やさしく・うつくしく』の中に、さらにもうひとつテーマを決めて、『あつく・しぶとく・どろくさく』(笑)。大人も子供も勇気づけられるような映画になるといいなと思って作り上げていきました」


作品のこだわりについても質問される。

貝澤「『いたずらかがみ』は無声映画。アニメで声の魔法は重要。それがなく、しかも5分という短い時間の中でフローラがまるで言葉を発しているかのように見えるように、アニメーターさんにはかなりがんばってもらいました」
台詞の代わりに、フローラの気持ちや言葉を表すのは「音楽」。音楽をフローラの気持ちに代弁させ、対話している雰囲気も出した。
貝澤「フローラの表情や動作は、『ドキドキ!プリキュア』でキュアソードを演じた宮本佳那子さんにスタジオに来ていただいて、演技をしてもらった。むっとしたり、驚いたり……本編でかわいらしいフローラの顔があったら、『宮本さんの顔なのかな?』と思ってもらえたら」
座古「プリキュアたちとはまたちがった形の、パンプルル姫の強さをうまく出せたらいいかなと思っていて。アクションも物理攻撃もできないけれど、あの物語の中でただひとり心が折れなかった。それもプリンセスらしさじゃないかと」
宮本「こだわったところはとにかく表情。くずした表情表現にもこわがらずにどんどん挑戦していきました。映画を見た感想をたくさんいただけたんですが、お母さんが入院してしまうから毎日泣いていた女の子が、映画を見たら『私も頑張るから』と泣かなくなったと……すごく嬉しかったです」
宮本監督自身、プリキュア映画から勇気をもらった経験がある。
宮本「『スイートプリキュア♪』の映画を見に行ったら、子どもたちが一生懸命ライトを振ってプリキュアを応援してくれていて感動した。子どもたちはプリキュアが実在する人間だと思っている。そこにウソはつけない」


長年愛されているシリーズで、監督をやるということ


ファンからの質問も読み上げられた。

──プリキュアを作るうえで一番大事にしていることは?
宮本「長年愛されているシリーズ。僕は途中からの参加なので、過去作品をDVDで全部見て、勉強しました。シリーズごとにスタッフの人間性がすごく出てくる。レジェンドである西尾大介さんや、作品の初期を作り上げたスタッフの方とは会ったことはないんですが、キュアブラックやキュアホワイトを見ながら『西尾さんってこういう人なんだな……』と妄想しながら見てみたり(笑)」
座古「子ども向けの番組なので、子どもたちが楽しく見てほしいなというのがあります。……大きいおともだちの前で言うのはあれですけど(笑)。一番大事なのは、キャラクターがまっすぐかどうか。そこを大切にしています」
貝澤「今回初めてプリキュアに関わって、プリキュアの何が皆さんに受け入れられているのかということを考えました。女性の中にキラリ!と光る美しさかなと。キラッとしたところを映像の中で描ければ、みんなが好きになってくれるんじゃないかな……と描きました」

──お互いの作品を見て、感想や「やられた!」と思ったことは?
座古「長年作画の演出をやっているので、CGさんの作品を見たときに『これはおそろしいな!』と思いましたね。僕、明日からごはん食べられなくなるかもしれない……と真剣に考えます! 去年70分、今年50分。来年30分、その次20分、2秒……ってなったら、という恐ろしさというのは、手書きのアニメーションに関わってる人はみんな思っているんじゃないかな。素晴らしい作品でしたよ、みなさん!」
貝澤「中編の感想は、まず僕が5分なのに20分でうらやましい(笑)。20分の中で宮本監督がやりたいこととやれることを時間の許すかぎり詰め込んでいる。長編は、50分の中に座古監督のやさしさが……本当に優しい男ですよね、見た目も優しいし……」
座古「あ、あ、あ、ありがとうございます……」
貝澤「女の子のキラッとするところが出ていて。座古監督らしい作品になっていましたよね」
宮本「短編は、リアル系のCG。もともと僕がやっていたのはトゥーン系ではなくてリアル系だったので、自分がやりたかった感じのものをやられてしまってハンカチをキーッと噛みました(笑)。長編のいちばん好きなシーンは、お妃さまがプリンを食べて『パンプルル……』と呟くカット。あそこが何度見ても鳥肌が立つ。あそこでフィルムの温度が一気に変わるんですよ。この辺り、相当座古さんは計算されてコンテを描いてると思う。やられた!と思いました」
座古「あ、ありがとうございます……仕事ください!」
ちなみに宮本監督、今回の映画はすでに6回劇場に行って見ているとのこと!


プリキュアで「大事にしたいこと」をシャワーのように浴びて


映画「プリンセスプリキュア」の上映(一度見ているのにもかかわらずやっぱり大泣きしてしまう……)をはさんで、第2部のトークイベントへ。
登壇するのは鷲尾天プロデューサーと、テレビシリーズを担当している神木優プロデューサー。
鷲尾「みなさんのご期待に応えて……ごきげんよう!」
観客「ごきげんよう〜〜〜〜〜!!!」
ドレスの裾を引くようなしぐさで挨拶する鷲尾Pに、今日一番の大きな「ごきげんよう!」が飛ぶ。
鷲尾「みなさん、今日はたくさんライトを振っていただけたと思います。なかなかそういう機会がないと思うので、存分に振ってくださいね!」


まずはテレビシリーズの話。
鷲尾「今回のテレビシリーズはプリンセスというテーマをストレートに出している。珍しいですよね」
神木「プリンセスというモチーフを作品に入れるのは、当初からやりたいと思っていた。プリンセスは女の子にとって特別なものだし、魅力的なので、直球で伝えたいと思いましたね。でもプリンセスというと高貴なイメージがついてしまうので、頭に『Go!』をつけたのは、勢いを足したかった!」
椅子から立ち上がらんばかりの勢いで「Go!」と言う神木P。
神木「プリキュアとプリンセスは両方とも人を指す言葉。どう折り合いをつけるか、どういう価値観でいくか……はすごく長く話し合いましたね」
鷲尾「毎日遅かったもんね。だんだん顔色悪くなっていって……でも顔色だけならまだね、髪の毛の色が変わったりするからね、誰のことは言わないけど」
もちろん鷲尾Pのことだ。プリキュア以前では黒かった鷲尾Pの髪は、プリキュア開始以後は……。
神木「本当に『ふたりのプリキュア』の1年で白くなったんですか?」
鷲尾「1年ではないよ、2年くらいかけてじんわりとね……誰が監督だったかは言わないですよ!」

長く続くプリキュアシリーズのプロデューサーになることについて、神木Pはどのように思っていたのか。
神木「アシスタント時代に、『スイートプリキュア♪』と『スマイルプリキュア!』の立ち上げに携わっていたので、プリキュアチームにはいたことがある。どういうものを大切にしているのか、こういうことは守りたい、というのはシャワーのように浴びながら仕事をしてきたので……」
鷲尾「シャワーのように(笑)。痛そうだね……」
神木「そういった先人たちの考えや、鷲尾さんの作品作りへの気持ちも教えていただいていたので、それは引き継ぎたいなと思っていましたね。なおかつ新しいこともやりたいという気持ちが半々でした」


「プリンセスプリキュア」どの話数が好き?


どんどん盛り上がっているテレビシリーズ。話は「好きな話数は?」に移る。
神木「いろんな意味で印象的な話数は6話ですね。カナタ王子とシャムールが出てくる回。みんな揃って、今の世界はどうなっているのか?と情報を提供する。プリキュアがみんな集まって同じ部屋にいるという感動と、カナタが投影で出てくるんですよ」
鷲尾「トウエイ? うちの会社?」
神木「〜〜〜投影されて、出てくるんですね! そこではるかと話すんですけど、その会話に月日の流れやいい意味での生っぽさがあって、印象的でした。あとシリーズ始まってから気づいたんですけど、『カナタ王子』というキャラがいて、うちの監督もシリーズ構成も『タナカ』なんですよ! ほんとにやられたなと思って! 自分が王子だと思ってやってたんだ!」
鷲尾「私は5話が好きだったね〜。きららが走ってくるシーン。きららの表情がすごくよくて。必死になって走っている状態とかって、すごく好きですね。何にも代えがたい気持ちを持ってる感じ」
神木「良いシーンですよね。必死感が出ているきららはあそこが初めて。それまではずっと余裕がありましたから」

最新の39話について語る2人(まだ見てない人はちょっとネタバレ注意)。
鷲尾「いい話ですよ……。変身する直前の台詞、オレすっごく好き。ぽつりと言う、『レッツゴー、プリンセス』。自分にだけ言い聞かせている」
神木「シナリオの時にはあの台詞が入ってなかったので、田中裕太さんのオリジナルで描かれた内容なんですけど……嶋村侑さんのポツリという言い方もすごくよくて」
鷲尾「かっこいいな〜!と思ったの。子どもの頃を思い出して、自分の中でプリンセスになりたいと思っていたことを決意して、あれを言う。あの流れがすごくよかった」
神木「39話に関しては、カナタやほかのプリキュアに励まされて立ち上がるというよりは、はるか自身に立ち上がらせたいというのは当初から決まってたんですよ。前にただ進むというよりは、ドレスを着て凛としてるけど歯を食いしばって切り開いていく感じにしたいと思っているので、ああいう内容になりました」
38話、カナタの言葉に絶望しかけたはるか。そしてその翌週、映画の公開週に、テレビはまさかの駅伝での放送休止! ちょっぴり複雑な想いで劇場に足を運んだファンも多いかもしれない。でもそのぶんのドキドキハラハラモヤモヤを吹き飛ばすような39話だった!


「ふたりはプリキュア」は、西尾SDと鷲尾Pをミキサーにかけてできたもの


第1部の監督トークを振り返る鷲尾P。
鷲尾「初代のなぎさとほのかは、どっちも西尾監督。本人は否定しますけど、明るい部分がなぎさに出ていて、物事を突き詰めて考えるところがほのかに似てます。あれはどっちも西尾さん」
神木「私、昨日、西尾さんと焼肉を食べに行ったんですけど! 鷲尾さんがそう言ってることを伝えたら、『違うんだ』って。西尾さん、『2人の感性をミキサーにわーっとかけて、なぎさっぽいものをかき集めたのがなぎさで、逆はしかり。2人の感性を詰め込みまくったんだ!』という話をすごくされていた」
鷲尾「まずその前に、西尾さんと私をミキサーにかけるのやめてくれる!?」

テレビシリーズについてだけではなく、やっぱり映画についても語ってほしい。
鷲尾「私はピクサーの映画がすごく好きで。あれって前に短編がついてるでしょう。私が一番好きなのは『カーズ』併映の『ワンマンバンド』。ああいう話をやってみたくて、最初にやったのが『3Dシアター』です。あの冒頭についていたSDキャラのスイートのふたりは、あのイメージを持ってます」
「プリキュアオールスターズDX 3Dシアター」は、「スイート」までのプリキュアが集まってダンスするショートムービー。冒頭には鷲尾Pが語るようにSDキャラによる一幕がある(監督は宮原直樹さん)。
鷲尾「なので、今回も貝澤監督に押し付けたということですね、ほんとすみません(笑)。長編は座古監督と一緒だったので、気心を知った仲で作り上げましたね。中編は、15分程度のライブビデオをイメージしていたのですが、宮本監督とCG班から『ストーリーものをやりたいんだ!』という熱意のある申し出をもらって、じゃあやるか!と」
そうして現在の3本立てが生まれた、というわけだ。
鷲尾「そうしているあいだにも、宮本監督からものすごい数のボードやキャラクターが上がってくる(笑)。わ、わかった、じゃあそれでやろうか……!と押された感じです。すごかった、宮本監督。熱意がありました」

夢は「記憶に残りたい」


鷲尾Pと神木Pへの質問コーナーも。

──家族との食べ物に関する思い出話はありますか?
神木「母が作ってくれるハンバーグですね。私食べるのがすごく好きなので、ごはんをたくさん食べられるものということで、大好きでした」
鷲尾「神木さんの名言があって。ごはんを食べる時に無口だからどうしたのかと思ったら『食べ物と真剣に向き合いたいんです!』(笑)私の好きなのはホットケーキの焼く前のタネ。舐めると絶対怒られるんだけど、盗み見をしながらペロッと食べるのがすごく好きでした……」
そういったエピソードが、「パンプキン王国」のはるかにつながっているのだ。

──宮本監督のテレビシリーズ作品はいつ実現しますか。
鷲尾「宮本浩史! これ書いたのお前だろ〜!」
会場内で拍手が起こる。一瞬本当に書いたんだ!と思ったが、宮本監督のツイッターによるとネタのもよう。

──日本でいちばん人気なプリキュアは誰ですか?
鷲尾「それはあなたはフローラって言うよね」
神木「そうですね、フローラではないでしょうか」
鷲尾「みんなそれぞれ、自分が担当した代のプリキュアがいちばん大事です。私は言いづらいけど(笑)全員大事。このシリーズが続いていること自体すごく幸せ」
エコーを入れたら42人(鷲尾&神木談)のプリキュアたちは、みんなきらきらしていてみんな素敵だ。

──プリンセスプリキュアは夢がテーマ。みなさんの夢を教えてください。
神木「作品で、お客さんに喜んでもらえて、作っているスタッフも、どっちもすごく幸せになれる作品を作る、携わる、提案することが夢ですね」
鷲尾「意外と近い。お子さんにとっても、今日来てくれているみなさんにとっても、自分が携わった作品が忘れられない作品になったらいいなと思います。それは生涯の夢ですね」
女児向け、少年向け、大人向けと、さまざまな作品に関わってきた鷲尾P。どの作品も同じくらい大切で、同じくらい誇っている。
鷲尾「この夢は毎日持ち続けている。作る時に大変なこととか、大変なスタッフとか……(笑)とにかくいろんなことが起きるけど、それを登る力をみんなに覚えていてもらいたい。みんなの記憶に残る作品にしたい、その思いだけですね」
神木「会社に社内報がおいてあるんですが、鷲尾さんが入社したときのを見てみたんです」
鷲尾「げっ」
神木「そこにも同じことが書かれてました! 視聴者の人にとって忘れられない作品を作りたい、と」
鷲尾「一貫しててよかった(笑)」

制作陣の愛情がめいっぱいつまった「プリキュア」シリーズ。だからこそ、おとなもこどももおねーさんもおにーさんも、ずっとプリキュアが大好きなのだ。

(青柳美帆子)

【エキレビ!ではさらにくわしく映画についてインタビューしました。l座古監督インタビュー後編は11月15日(日)、宮本監督インタビューは来週末公開予定です】