タラちゃんはアスペルガー症候群? おもしろそうだから買ってみた新刊

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先週、おもしろそうだからとりあえず買ってみた新刊文庫+新書!(大半はこれから読む!)


芥川賞効果で羽田圭介の文庫化が進む進む


芥川賞受賞で文庫化ラッシュが続く羽田圭介は、会社小説集『御不浄バトル』(集英社文庫Kindle)とSM小説集『メタモルフォシス』(新潮文庫Kindle)が前後して文庫化。前者の表題作のブラック(企業)感はかなり「きます」。


戌井昭人『俳優・亀岡拓次』(文春文庫)は来年1月に映画公開が予定されている(公式サイトでは大友良英の音楽もちょっと聴ける)。作者は文芸誌で活躍する小説家である以前に、自身も鉄割アルバトロスケットの俳優・脚本家。


新潮文庫は、今月はもっぱら『村上春樹 雑文集』が話題だけど、個人的には金原ひとみの性愛短篇集『マリアージュ・マリアージュ』が気になりつつ、「介護+震災」を題材とする佐伯一麦の長篇『還れぬ家』(新潮文庫Kindle)にも目が奪われてしまう。


ハードカヴァー・文庫・電子書籍で同時刊行!


第1次大戦直後、ざっと100年近く前の「戦後」を舞台とするピエール・ルメートルのゴンクール賞受賞作『天国でまた会おう』(平岡敦訳、ハヤカワ・ミステリ文庫上巻下巻/Kindle上巻下巻)。1冊本の単行本版との同時刊行は異例のことだ。作者はこの秋来日して各地で講演したナイスガイ。僕も聴きに行きました。


『なんでもない一日 シャーリイ・ジャクスン短編集』(市田泉訳、創元推理文庫Kindle)。後味最悪な小説で有名な作家の短編23篇と随筆7篇(カヴァー表4には5篇とあるが、序と跋も独立した随筆なので7と数えた)。


この作品集には明るい作品も収録され、厭小説だけでない多面性が味わえるらしい。来年は生誕100年。既訳があるものは4篇のみで、長らくジャクスンの短篇集として愛された『くじ』(深町真理子訳、早川書房《異色作家短篇集》第6巻)とのダブりはいっさいなしです。

エミール・ゾラの『水車小屋攻撃』(朝比奈浩治訳、岩波文庫)は、短篇小説8篇を集めた。『パン屋再襲撃』みたいな題だなー。


数か月前に出た『オリヴィエ・ベカイユの死 呪われた家 ゾラ傑作短篇集』(國分俊宏訳、光文社古典新訳文庫)に続き、どちらかというと長篇のイメージが知られているゾラの短篇集が今年は2点刊行されていることになる。

《ポケットマスターピース》創刊! 翻訳文学は新訳ラッシュ


集英社文庫《ヘリテージシリーズ》内の新レーベル《ポケットマスターピース》は、各巻800ページ前後で西洋の文豪のベスト版サンプラーを作ろうという企画だ。ポケミスでなくてポケマスね。


第01巻『カフカ』(多和田葉子編)は話題を呼んだ多和田訳『変身(かわりみ)』を冒頭に、短篇10篇と書簡選、そして今回のある意味目玉(?)となる公文書選(勤め人カフカが書いた書類)を収録している。
 第02巻『ゲーテ』(大宮勘一郎編)では『若きヴェルターの悩み』から始まるのはいいとして、『親和力』(柴田翔による全訳は講談社文芸文庫Kindle)の第2部のみを収録、加えて戯曲『ファウスト』(集英社文庫にはすでに池内紀による第1部第2部の全訳がある)の第2部を抄録している。 ヘンなセレクトだけど、だいじょうぶかしら?


いずれも口絵資料・編者解説・収録作解題・著作目録・文献案内・年譜と、並の文学全集より充実した手厚い編集となっている。毎月1冊刊行で全13巻、僕はとりあえずコンプリートします。

《O・ヘンリー傑作選》第2巻『最後のひと葉』(小川高義訳、新潮文庫Star Classics)。


大久保康雄訳で出てる『O・ヘンリ短編集』(棒引なし。第1巻第2巻第3巻)に加えて、今年から小川訳の《O・ヘンリー傑作選》(棒引あり)がスタートした。2巻は表題作をはじめ全14篇を新訳。第1巻は『賢者の贈りもの』(Kindleはこちら)。

古典の新訳では、ガストン・ルルーの密室トリック小説『黄色い部屋の秘密』(高野優訳、ハヤカワ・ミステリ文庫Kindle)もおさえときました!


「面白い人」・三島由紀夫


書評だと『井上ひさしの読書眼鏡』(中公文庫)、回想なら北杜夫『見知らぬ国へ』(新潮文庫Kindle)と 尾崎士郎『小説四十六年』(中公文庫)。


徳岡孝夫『五衰の人 三島由紀夫私記』(文春学藝ライブラリー)の帯はかなりの吸引力がある。

〈あの日、市ヶ谷の死地に赴く直前、
『檄』を託された著者だけが知る
「作家」でも
「憂国者」でもない
「面白い人」
三島由紀夫の姿〉


前回の文庫化のときには買わなかったけど、こうまで書かれたら買うでしょ!

森鴎外は大正時代のポータルサイト管理人


森鴎外は公私ともに多忙な人だったが、100年以上前に西洋の新聞雑誌をたくさんチェックして、雑誌にそれをそっけない短信としてまとめて発表しはじめた。軍医であり文豪であるとともに、海外情報のポータルサイト管理人でもあったのだ。
その短信欄『椋鳥通信』が、池内紀(今年話題のアラブ学者池内恵[さとし]氏の父君)の編・註で岩波文庫になり、このたびめでたく完結した(上巻中巻下巻)。


ニュースのヴァラエティがおもしろい! 註も叮嚀。
池澤夏樹の『むくどり通信』(朝日文庫、雌伏篇雄飛篇)の題も、ここに由来するんだよね?
僕のこの新刊文庫(+新書)チェック記事も「むくどり文庫通信」のつもりで書いてます。

その鴎外は和歌を結構作っていて、なかには従軍先で作ったものもある(軍医として日清・日露戦争に出征)。最晩年の奈良帝室博物館総長在任中の作を、万葉集と日本近代文学を研究する著者が解読する平山城児『鴎外「奈良五十首」を読む』(中公文庫)。こういう分野を文庫化してくれるうちは中公文庫を信じよう。


タラちゃんはアスペルガー症候群? 今週のノンフィクション


〈終戦直後、皇居前広場は巨大な野外性愛空間だった!?〉
という惹句に惹かれて井上章一『愛の空間 男と女はどこで結ばれてきたのか』(角川ソフィア文庫Kindle)をゲット。井上さんの本がおもしろくなかったことがない。


吉祥寺クローバークリニック備瀬(びせ)哲弘院長の『大人の発達障害 アスペルガー症候群、AD/HD、自閉症が楽になる本』(集英社文庫)は発達障害チェックリストつき。冒頭の「タラちゃん発達障害疑惑」にちょっと驚く。

香山リカ『マインドフルネス最前線 瞑想する哲学者、仏教僧、宗教人類学者、医師を訪ねて探る、マインドフルネスとは何か?』(サンガ新書)は、永井均(日大教授)、アルボムッレ・スマナサーラ(スリランカ上座仏教長老)、永沢哲(京大教授)、熊野宏昭(早大応用脳科学研究所所長)との対談集。とくに近年、ヴィパッサナー瞑想への接近(あるいは、それとの対決?)を見せている永井さんの発言読みたさで買いました。


香山さんの対談相手のひとり、アルボムッレ・スマナサーラ長老がブログ界の炎上王イケダハヤトさんと対談した『仏教は宗教ではない お釈迦様が教えた完成された科学』(Evolving)は先行するKindle版(前篇後篇)の合本です。
同じく初期仏教がらみで、 宮本啓一『ブッダが考えたこと 仏教のはじまりを読む』(角川ソフィア文庫Kindle)も、まだまだ日本ではポピュラーではない初期仏教の紹介本。


といったところがおもしろそうだからとりあえず買ってみた!
(千野帽子)