シンガポール戦では状況に応じてクロスを打ち分ける狙いを見せた。あとはいかに精度を高められるかだ。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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「崩しの部分はすごくできていたので、あとは僕の仕上げのところだった。練習するしかない。合わなかった場面があったので」
 
 11月13日、シンガポール戦翌日のクールダウンを終えた酒井宏は、真っ先に反省を口にした。90分を通して前線へと果敢に駆け上がったが、ほとんどのクロスが味方へ届かず。結局、日本の右SBは最後までゴールには絡めなかったのだから、下を向くのも無理はない。
 
 酒井宏のクロス精度の物足りなさは、以前からたびたび指摘される。そしてその悪癖は、シンガポール戦でも顔を出した。ただ一方ではクロスに、より明確な意図を込めようとする姿勢が伝わってきた。これまでは大きくファーに蹴り出してしまう明らかなミスキックばかりが目立ったが、シンガポール戦では状況に応じてボールを“打ち分け”ている。
 
 ハリルホジッチ監督からは、ニアに「低いグラウンダーのボールでGKとDFの間に上げろと言われた」(酒井宏)ようだ。これを受けて「でも、それはシチュエーションによるし、深く攻め上がったらニアのコースは絶対空いていない」とあえてチョイスに幅を持たせた。残念ながら結果には結びつかなかったものの、この能動的なスタンスは悪くない。
 
 また、クロスを点で合わせるには当然、受け手と出し手の連係が不可欠だ。実際にシンガポール戦の31分には指揮官の注文通りにニアへのグラウンダーを送ったが、中央で待ち構えた金崎との呼吸が合わなかった。後半にも酒井宏のマイナスへのボールに周囲が反応できないシーンが見られた。出し手だけではなく、受け手の準備が悪いケースも少なからず散見した。
 
 いずれにせよ、「合わせる」ではなく「合わせろ」と言わんばかりに鋭いボールを放り込んでいた柏時代の輝きを取り戻すために、酒井宏は精度だけでなく連係も磨く必要がありそうだ。
 
取材・文:増山直樹(サッカーダイジェスト編集部)