柏木の冷静沈着な姿勢は、日本代表で長く背番号7を付けてきたG大阪の遠藤を思わせた。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 11月12日のシンガポール戦で攻撃を牽引したのは、間違いなく柏木だった。「運動量やゲームビジョンやパスが素晴らしい」(ハリルホジッチ監督)と期待を寄せられてメンバー入りした左利きの司令塔は、そのストロングポイントをいかんなく発揮した。
 
 守備でも鋭い出足で相手を潰し、ピンチを未然に防いでいる。ボランチでコンビを組む長谷部からは「球際とか守備の部分でかなり貢献していた」と評された。
 
 ボールを持てば周囲の状況をいち早く把握し、バリエーションに富んだパスを通す。逆にピンチと見るや、先の展開を読んで身体を張る。優れたボランチはよく“ピッチを俯瞰する”と表現されるが、まさにその言葉がぴったりのパフォーマンスと言えよう。
 
 ただ、プレー以上に驚かされたのが“自分自身を俯瞰する”柏木の姿勢だ。シンガポール戦後のコメントが印象的だった。
 
 ハリルホジッチ監督が柏木を称賛していたと記者から伝えられると「僕は満足してないですし、もっと強くなった相手に対して自分がどれだけできるのかを試していきたい」と即答。また、ボランチのチーム内競争を問われた際にはこう返している。
 
「昔と違って、(試合に)出ても出なくても自分は良い準備をしているという気持ちを持って過ごせている。出たらしっかり結果を出すし、サブでも途中から出てなにができるかを観ながら考えている」
 
 決して1試合のパフォーマンスに一喜一憂しない。積み重ねてきたことに自信があるから、周りに流されない。ややサプライズ的な起用で結果を残した柏木に対し、取り囲む取材陣は景気の良いコメントを欲したが、本人は「満足はしていない」と繰り返した。
 
 一夜明けた練習後のミックスゾーンでも「自分は常に良い準備をして待っておくだけ。出ても出なくても、常に準備はできている」と揺るがぬ信念を垣間見せた柏木。プレーだけでなくどこか飄々とした頼もしさもまた、代表の“背番号7”らしくなってきた。