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11月11日は中国で「独身の日」。日本のバレンタインのように商業化されたイベントで、特にネット販売業者が破格のバーゲンセールを行う。今年は例年になくヒートアップして、最大手アリババ集団は、なんと1.7兆円相当を一日で売り上げた。

そこで、私がアドバイザリーを務めてきた中国の大手商業銀行や取引所に勤める若手社員たちに、「独身の日」の意味を聞いたところ、二つの答えが返ってきた。まず、結婚する前に「独身時代を謳歌する日」。この意図が商業化されビッグイベントになった。次に、独身時代に終止符を打ち、いよいよ婚姻登録する日。婚姻登録所に長蛇の列が出来るという。

更に、独身にサヨナラしたくても出来ない人たちのために上海市は2011年から「届婚恋博覧会」と銘打ち、いわゆる婚活イベントを開催してきた。背景には、一人っ子政策で、結婚願望はあるが独身の身に甘んじている男性が増えてきたという人口動態が指摘される。特に女性胎児の中絶が増えた結果でもある。このイベントは第一回目から数万人規模で開催され、知り合いの30代前半の若手行員も参加してきた。親同伴も目立つという。

中国では男性間の競争が激しく、マイホーム購入が結婚の前提とされる。そこで彼も、住宅購入のために貯金に励んできた。結婚が決まるまでの期限付きでその資金を株で短期運用してきたが、御多分にもれず、上海株暴落局面でかなり目減りしたと嘆く。性格は至って真面目なのだが、職場結婚も日本ほど一般化しておらず、未だに伴侶に恵まれていない。

「いまや独身の日といっても、アリババの株価を支える商業的手段」と、金融関係者らしいコメントで語る。友人たちもまとめ買いしているが、粗悪品を掴まされた例も珍しくないという。返品を要求しても、「粗悪品と認定される証拠書類を出せ」と挙証責任を要求され、泣き寝入りのケースが多いようだ。

○「独身の日」特需の意味とは?

中国政府は一人っ子政策を廃止して、二人っ子政策に切り換えたばかり。一人っ子政策は、産み過ぎで人口が多すぎて国として養えない時代の発想だが、いまや中国も少子高齢化が進み、経済成長を維持するため労働人口を増やさねばならない状況になった。

とはいえ、「二人っ子政策に転換といっても、現状の婚活男女比の偏りが直ちに解消されるわけではない。結婚して第二子まで許されても、中国経済がハードランディング(バブル破たん)すれば、それどころではないだろう」と、経済知識のある銀行員は冷静に将来を見通している。独身の日セールといっても、ぜいたく消費は一部の勝ち組に限られる。普段から倹約して必要品を廉価でまとめ買いするという傾向が強い。「マクロ的に消費拡大とは言いかねる」と経済的評価も厳しい。銀行員ゆえ、国民の所得格差、企業の「デフレ・マインド」、不良債権の実態などを「知り過ぎて」いるのだろう。

すなわち、「独身の日特需」の意味とは、単に将来の消費の先食い現象なのかもしれない。

更に、独身の日「大バーゲンセール」は、中国経済のデフレを象徴する出来事ともいえる。10月卸売物価はマイナス5.9%。消費者物価上昇率も1.3%に留まる。一時は6%を超えてインフレ懸念と言われたが、さま変わりだ。モノの値段が上がらないと、企業の売上も増えず、生産を減らし、将来に向けての設備投資も控える。リストラも始まり、消費者の財布の紐も締まる。だから、独身の日のバーゲンセールに殺到する。住宅も売れず、在庫がたまるばかり。まさに、デフレの負の連鎖なのだ。

なお、経済が悪化しても、金に対する文化的愛着は変わらないのが中国。北京の最新ショッピングモールでも、入り口の一等地に、スタバ、マクドナルド、そしてチャイナ・ゴールドという全国1000店以上の金チェーン店が並ぶ。経済が不安だからこそ、人民元より現物の金に頼るのだろう。

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○著者プロフィール

●豊島逸夫
豊島逸夫事務所(2011年10月3日設立)代表。2011年9月末までワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表を務めた。1948年東京生まれ。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。 三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラーとなる。豊富な相場体験をもとに金の第一人者として素人にも分かりやすく独立系の立場からポジショントーク無しで金市場に限らず国際金融、マクロ経済動向についても説く。またツイッターでも情報発信している。
○【連載】25歳のあなたへ。これからの貯”金”講座

25歳。仕事や私生活それぞれに悩み不安を抱える年齢ではないだろうか。そんな25歳のあなたへ、日本を代表するアナリスト・豊島逸夫とウーマノミクスの旗手・治部れんげがタッグを組んだ。経済と金融の最新動向をはじめ、キャリア・育児といった幅広い情報をお届けする特別連載。こちらから。

(豊島逸夫事務所)