「破壊と再生」に舵を切れ! 比類なき和製3DCGアニメ「ガンバ」、その挑戦の舞台裏

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TVアニメやミュージカルにもなり、世代を超えて親しまれる日本の児童文学『冒険者たち ガンバと十五ひきの仲間』(岩波書店刊)が、CG映画として生まれ変わった。その名も『GAMBA ガンバと仲間たち』。中身は100パーセント和製だが、現場は邦画の常識を逸脱していた。(本誌『WIRED』VOL.19より転載)

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2/2今後は大画面液晶ペンタブレットCintiq 27QHDでの作業も視野に入れる。技術的なチャレンジに白組は貪欲だ。

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キャラクターは何度も練り直した。Photoshopによる2Dデザイン(画面内左)にまで立ち返り、3ds Maxで3DCGモデルへ落とし込んだり、その逆も行った。

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今後は大画面液晶ペンタブレットCintiq 27QHDでの作業も視野に入れる。技術的なチャレンジに白組は貪欲だ。

紆余曲折を経て完成した映画『GAMBA ガンバと仲間たち』は、制作会社白組の挑戦的な姿勢が生んだ希にみる傑作。その出来映えを象徴するのが、脚本やキャラクターの大胆かつ入念な修正だ。

「手始めに3分のパイロット版をつくりました。チームとしては凄くいいものができたと感じた。ところが蓋をあけてみれば散々な結果。子ども向けには怖すぎると。特に子どもたちが寝てしまったことはショックでしたね」(監督・小森啓裕)

「そこでいったん人員を縮小し、デザインから出直すことになりました。すでに試作したフィギュアもあったのですが、すべて見直さざるをえなかった」(CGテクニカルスーパーバイザー・初鹿雄太)

完成が遅れるほど人件費がかさみ、公開が延びれば収入も遠のく。制作途中で出直すという判断には、かなりの勇気が必要だ。とはいえエンターテインメント作品には必要な痛みといえるだろう。

本作において挑戦的といえるポイントはまだある。海の表現が不可欠なCG作品はハードルが高い。本作では企画当初から海を課題に掲げ、R&Dに膨大な時間を割いた。そもそも白組という会社自体が技術に貪欲。難易度の高い映画やCMを手掛ける気概にあふれ、泳ぎながら鍛えるのが社風。日々是「ビルド」なのだ。

「当時、まだ日本で手に入らない最先端の流体計算ツールの開発者と会うためにカナダまで行って、直接交渉して導入したんです。ところが本作を制作している最中にそのツールが大手に買収されて、翌日から新規購入できなくなった。ライセンスを保持していたので、間一髪助かりましたが…」(初鹿)

道具やスキルに妥協はしない。とにかく攻める。簡単ではないだろう。日々の繰り返しを洗練させつつ、一方でそこに疑問を抱き挑戦を怠らない。守備範囲にも限度を設けないのが白組流だ。

映画『GAMBA ガンバと仲間たち』(10月10日より公開中)の完成を記念して、表参道にある白組本社の看板上にGAMBAのキャラたちがお目見え。


映画『GAMBA ガンバと仲間たち』予告編動画。

「モデリングの担当者は早い段階で手が空きます。だから各自最低2つの工程を担当してもらいました。なるべく少人数で最後まで。大変だけど、満足感は上がる。最後には映画宣伝のために全国に飛び、自分たちの手でチラシ配りまで行いました」(小森)

実写合成もアニメもやる。技術開発も宣伝もやる。流れを止めず、こだわらず。そして常にスクラップ & ビルド。既存の枠にとらわれず、臆することなく前に進むのが白組のモットーというわけだ。GAMBAはいわば会社ぐるみの自主映画であり、内部のメンバーだけでつくり切るという決意の下、いわゆる「手弁当」で仕上げた作品。日本でトップクラスのクリエイター集団によるハンドメイドの豊穣を、ぜひ劇場で味わってほしい。

ところで、驚くべきことに本作の作業は「ビルド」で終了しなかった。最後の最後に大胆な「創造的破壊」が待っていたという。

「アヴィ・アラッドのプロデュースのもと、かなりの量を編集段階でカットしました。お客さんに感動してもらうための判断。監督も断腸の思いだったと思います」(初鹿)

映画づくりは船で大海を渡るようなものだ。映画『GAMBA ガンバと仲間たち』は15年の長旅、幾度もの破壊を乗り越えて劇場公開というゴールに辿り着いた。でも冒険は終わらない。精鋭たちは次の目的地へ向かい、新たなビルドを始めている。その証拠に、最新の大画面液晶ペンタブレットCintiq 27QHDに触れた途端、彼らは一斉に目を輝かせた。

「いままで板型ペンタブレットを使ってきましたが、これなら画面に直接ペンで描き込めるので、ZBrush(スカルプトモデリングツール)は勿論、最近導入したMARI(テクスチャペインティングツール)といった直感的なツールをもっと生かせるでしょう。それに大画面も魅力。画面半分にPhotoshopを、残り半分に3ds Maxを立ち上げ、同時に作業できるのもいい」(初鹿)

白組の歴史は冒険譚そのものだ。未知の世界に興味を抱き、自ら体験して経験を築き、最高の作品を世に送り出す。組織の一体感にも目を見張る。デジタルなものづくりは、チームで乗り越えるストーリーにあふれていた。

全面フラットの27インチガラススクリーンが没入感を生み出す、液晶ペンタブレットCintiq 27QHD。解像度2,560×1,400、Adobe RGBカヴァー率97パーセントという色再現性も魅力だ。

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