三木義一『日本の税金』(岩波新書)

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 厚生労働省が4日、2014年の「就業形態の多様化に関する総合実態調査」で、パートや派遣などの非正社員が労働者にしめる割合が初めて4割に達したと発表した。非正社員の割合は40.0%。民間のみの調査だった前回は38.7%。非正社員の約6割をパートが占め、次いで契約社員や定年後再雇用などの嘱託社員が多い。

 朝日新聞デジタル11月4日付「非正社員、初の4割 雇用側『賃金の節約』」では、高齢世代が定年を迎えて正社員が減るなか、人件費を抑えたい企業が非正社員で労働力を補っている実態が浮き彫りになったと分析している。

 今後、ますます、この傾向が加速しそうだ。消費税のしくみが人件費を抑制させ、非正規雇用を増加させてしまうからだ。三木義一『日本の税金』(岩波新書)には「注意しておかねばならないことがある。消費税は派遣労働を税制面から促進してしまうことである」と記されている。

 どういうことか。わかりやすくいえば、正規の従業員に給与を払うと(課税仕入ではないために)その分に消費税がかかり税務署に消費税を払わなくてはならなくなるが、派遣社員を使った場合には給与ではなく「労働者派遣料」となり(課税仕入となり)、派遣を受ける会社はその分の納税を税務署にしなくていい(控除される)のだ。

「消費税は付加価値税だと説明したが、事業者の課税売上から課税仕入を控除した付加価値に実質的に課税される制度である。そうすると、課税仕入が多いと、消費税も減るので課税仕入に何が含まれるかが重要になる。会社が従業員に支払う給料は課税仕入ではない。人件費は企業の付加価値の一つで、サラリーマンは事業者ではないからである」(同書より)

 このため企業は、消費税を減らすために「派遣労働を『活用』することになる。なぜなら、労働者の派遣を受ける会社とその会社に派遣されてくる労働者との間には原則として雇用関係がないので、派遣を受ける会社が支出する金銭は、労働者派遣法の適用のある労働者の派遣に係る対価(労働者派遣料)になり、給与ではなくなるからである。対価を支払った会社は仕入税額控除ができることなる」(同書より)

 仕入税額控除ができるとは「課税仕入に含まれる」ということだ。

 また、藤巻一男氏による「特別論文 消費税増税に伴う滞納増加の懸念とその発生原因及び対応策」(「税経通信」2014年5月号/税務経理協会)によると、付加価値に占める給与の割合は、約6割だという。

「財務総合政策研究所の法人企業統計調査の統計によれば、付加価値に占める給与の割合は、約6割を占めている。法人税の赤字申告法人(全体の7割超)であっても、消費税を納税するケースが多いのは、上述の給与の取扱いが大きく関係していると考えられる。民間における給与総額は平成10年分をピーク(223兆円)に逓減し近年では190兆円台で推移しているが、長期的に見ると安定的であり、これが消費税の税収の安定化の主な要因になっていると考えられる」

 つまり、赤字法人でも給与を払っていればその分の付加価値を支払わなくてはならない、政府にとっては理想的な税金だが、それが現在の中小企業の滞納の増加の一因になっているという。

 なお、法人税の場合は、「益金から損金を控除した所得に課税され、損金の中には当然従業員給与も含まれる」(前出『日本の税金』より)ので、給与を払った分には法人税がかからないのだ。

『日本の税金』の著者である三木義一氏は青山学院大学法学部教授で租税法のスペシャリストだ。氏は「消費税率を引き上げるときは、労働法制の方で適正な規制をしないと、派遣労働がさらに増える可能性がある」と懸念している。

 しかし、政府は労働法制での適正な規制もなく、さらなる増税に動き出している。

 3日には、菅義偉官房長官が東京都内で講演し、再来年2017年4月に予定している消費増税について、大きな経済の混乱がない限り、軽減税率と同時に実施することを改めて明言したという。

 安倍政権の消費増税でさらに非正規社員が増え、貧困層が増大する。ますます潤うのは安倍政権に近い大手派遣会社ばかりなのだ。
(小石川シンイチ)