アグレッシブな個での打開と、前線で起点となる力強さを見せた金崎。周囲との連係も問題なく、“初セッション”にもかかわらず多くのチャンスに絡んでみせた。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 さながらニューヒーローの誕生だった。
 
 20分、左足を豪快に振り抜いてネットを揺らすと、一目散にベンチへダッシュ。喜びを爆発させる輪の中心には、見慣れない青のユニホームを着た金崎がいた。

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 岡崎、武藤を押しのける形で1トップに抜擢された背番号15は、指揮官の期待にしっかりと応えてみせた。アグレッシブな個での打開と、前線で起点となる力強さ。他にはない強みを存分に見せつけたと言えよう。
 
 ゴールは別格として、なにより目を引いたのが周囲とのスムーズなコンビネーションだ。3分に本田の縦パスを引き出すと、7分には早速ポストプレーで決定機を演出。得点直後には長谷部のアーリークロスから惜しいヘディングシュートを見舞えば、右サイドを上がった清武への落としでチームの2点目にも絡んでいる。
 
 これまでの日本代表にも個性豊かなCFはいたが、“初セッション”でこれほどチャンスに絡んだ選手は珍しい。シンガポール戦ではチーム全体で「サイドアタック」が約束事とされ、ある程度CFに合わせる意識が共有されていたとはいえ、ぶっつけ本番でハイレベルな連係を見せた金崎の対応力は特筆ものだ。
 
 一方で、守備も怠らなかった。猛然と前に仕掛ける積極性は、前線からのプレスにも活かされていた。前半だけで見れば、マン・オブ・ザ・マッチ級の活躍だ。ただ後半はガス欠に陥って前線からのプレスをかけられず、チームとして守備の重心が下がってしまったのは反省材料だろう。
 
 とはいえ、試合終盤になると再び動きに鋭さが増しており、あえて若干“サボっていた”のかもしれない。残念ながら、ひと言もしゃべらずペン記者のミックスゾーンを通り過ぎたために真実は確かめようもないが、もしあえて休んでいたのだとしたら……逆にそのあざとさを頼もしくも感じる。
 
 驚くほどチームにフィットし、新風を吹かせたのは間違いない。にわかに競争が激しくなった攻撃陣において、金崎の存在感は増していきそうだ。
 
取材・文:増山直樹(サッカーダイジェスト編集部)