わたしがスター・ウォーズを愛する理由:Grimesからのラヴレター

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カナダを拠点に活動する音楽家・アーティストのGrimes(グライムス)。さまざまなジャンルの音楽や映画からの影響を公言する彼女は、ジョージ・ルーカスが生んだ“神話”、「スター・ウォーズ」からも多大な影響を受けていた。新3部作の公開に先立ち、彼女が寄せたスター・ウォーズへの恋文。(雑誌『WIRED』日本版VOL.18より転載)

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拝啓
グライムスといいます。

わたしがスター・ウォーズに初めて夢中になったのは、まだ歩けるようになる前のことでした。スター・ウォーズは父のお気に入りの映画のひとつで、わたしは、そのDVDのボックスセットやリマスター版とともに育ちました。

父はわたしにメイキング・ドキュメンタリーをたくさん見せながら、カメラのレンズにピーナツバターを塗って乗り物が浮かんでいる映像がつくられたことなど、この映画がもたらしたイノヴェイションについて熱弁をふるったものです。家には、マシンやキャラクターの描き方を解説した詳細な本などもあって、これはイラストレーターとしてのわたしに大きな影響を与えることとなりました。

旧3部作のスター・ウォーズは、内容的な豊かさと視覚的な斬新さを伴った、数少ない映画のひとつです。新作もその伝統を受け継いでほしいと思いますし、予告編を観た限り、そうなりそうです。

最近、映画と色彩について猛勉強しているので、新作の視覚技術の高さには衝撃を受けました。色彩補正の素晴らしさは、ここ数年の代わり映えのしないディストピアSFの予告編とは比べ物になりません。

それは単に、CGの技術がおそろしくリアルなレヴェルに到達したからかもしれませんが、コスチュームや特殊メイクに力を入れているから、というのも理由のひとつとしてありそうです。チューバッカは明らかに俳優が演技しているので、CGキャラクターにありがちな不自然さはどこにもありません。

でも、もしかしたらこう感じるのはわたしの年齢のせいかもしれません[訳註:グライムスは現在27歳]。いまの風潮では、着ぐるみの怪物キャラクターは骨董品に見えるのかもしれませんが、わたしが子どものころはまだそれが普通で、わたしもそんなキャラクターたちにすっかり魅了されたのでした。

コスチュームはこれまでもずっとスター・ウォーズシリーズの最大の魅力のひとつでした。前日譚の新3部作にも、印象的なコスチュームが登場します(プリンセス・アミダラの衣装は、モンゴルの王族衣装に強い影響を受けたものですが、言うなればこれはヒューマニティというもののファッション表現のひとつの到達点です)。

そして新作の予告編では、なによりストームトルーパーの姿がほとんど変わっていなかったことに興奮しました。新たなスター・ウォーズでもコスチュームの多くが旧3部作に忠実なのは、旧3部作のデザインが時代を超越していた証なのです。

出演者もとても楽しみです。グウェンドリン・クリスティとルピタ・ニョンゴは大好きな女優です。2人は女性らしさやセックスアピールを押し出すことなくいまの地位をつかんだ女性たちです。最近のアクション映画のヒロインには珍しいタイプです。レイア姫のキャリー・フィッシャーもそうでした。最高にかわいい、最高の戦士でした。

とはいえ、スター・ウォーズ最大のイノヴェイションといえば、人間ではないキャラクター、特にドロイドたちです。R2-D2(Artoo-Deetoo)と他の登場人物たちとのやりとりの素晴らしさ。Artooは、性別がなく、言葉もしゃべらない奇妙なロボットですが、ほかのキャラクターと同じくらいたくさんのことを伝えられるだけでなく、言葉を話すほかの登場人物であればふさわしくない状況でも対話を生み出すことができます。

例えば『帝国の逆襲』で、ルークと一緒に惑星ダゴバにやってくるシーン。ここではルークがひとりでヨーダに会いに行くのですが、もしあの場にArtooがいなければ、観客はルークの気持ちを十分に理解することができなかったと思います。

このストーリーテリングの手法は、いまもSFではおなじみです(『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のグルートがいい例です)。スター・ウォーズは、ある意味いつも「かわいさ」と「こわさ」の間を行き来していますが、それは、言葉を話さないキャラクターたちの非言語コミュニケーションを通して表現されてきたのです。

もうひとりの主役ドロイド、C-3POは、昔からわたしの大のお気に入りです。他のなににも増して、わたしは、彼がつねに抱いている死への恐怖に共感します。未来にやがて登場するであろう意識をもったロボットは、はたしてC-3POほど人間に親切で、思いやりのある存在となるのでしょうか。Artooと同じように、C-3POも特別な存在です。

彼の翻訳能力を通して、ノンヒューマンな登場人物たちとの間にユニークな会話が生まれ、そのことで作品で描かれる宇宙は、より身近でホンモノらしいものに感じられるのです(だって、宇宙でみんなが英語を話してたらバカみたいじゃないですか)。

大人になってからあらためてシリーズを観返すと、C-3POのぎこちない人間らしさこそが、この作品の暴力や激しさを包み込んでいるのだと感じます。恐さや暴力は、いつも身の安全について不平をこぼす、この心配性でへんてこなロボットがいることで緩和されます。Artooと同じように、C-3POも性別を判別することができません。プログラミング次第で彼、もしくは彼女は、何歳にでもなれるのです。つまり、観客はどちらのドロイドにも感情移入する余地が大いにあるというわけです。これもスター・ウォーズの人気の秘密かもしれません。

というわけで、この手紙の文面から、みなさんがお察しする通りです。新作が待ち遠しくて待ち遠しくてなりません。

敬具
グライムス

グライムス|GRIMES
カナダ・ヴァンクーヴァーを拠点に活動するソロアーティスト。独学で作曲を学び、宅録で曲づくりを始める。ポップスからインダストリアル、エレクトロ、K-POPまで、さまざまなジャンルの音楽から影響を受けており、そのオリジナリティ溢れるセンスが評価されている。上記のヴィデオは、2015年11月6日にリリースされたアルバム『Art Angels』からの1曲で、本人自ら監督を務めた。2016年1月には待望の来日も控えている。
http://www.grimesmusic.com/

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