紅葉の季節、京都も観光客でいっそう賑わっていると言いたいところだが、京都は年がら年中観光客だらけ。
歴史ある神社仏閣でも年中何かしら催しが行われていて、いつ行っても楽しめる。
中でも、世界遺産であり、京都最古の神社のひとつ上賀茂神社も11月は行事がたくさん。とくに13日の相嘗祭、23日の新嘗祭や、22日の鎧着初式などに立ち寄ってみたい。


上賀茂神社は今年式年遷宮(社殿を新しくして神様にお遷いただく祭儀)が行われたばかりで、それを記念して去る10月23(金)〜25(日)に上演された奉納劇も、興味深い行事だった。


野外劇を宮本亜門が演出


重要文化財の境内のなかで、二の鳥居を入ったところ、神が降臨する場といわれる「立砂」のある重要文化財のひとつ「細殿」、「土舎」などを使った野外劇を宮本亜門が演出したのだ。
鳥居をくぐると、参道を隔てて左右に客席がしつらえられ(キャパ750)ている。そこから眺める、背景に豊かな樹木がそびえた建造物込みの舞台空間は圧巻だ。さらに、右手から月が上ってきて、それが美術のひとつにもなっているような贅沢さ。もうこれだけでもかなり満足。
作品は、「山城国風土記逸文」のなかにある、玉依姫が賀茂別神社(上賀茂神社の別名)の子供を処女懐胎する話「賀茂社」を元に書き下ろされたもの。
小雪が物語の語り部になり、お芝居と踊り、竹笛、能管、和の打楽器などの楽器による演奏で、神と人間が邂逅する幽玄な世界が立ち上る1時間弱のストーリー。

戦で建物が燃える場面は社殿にプロジェクションマッピングで表現されるのは、歴史的な建造物と現代の最新技術との融合。京都では既に、二条城のプロジェクションマッピングが行われているのでそれほど驚きはしないものの、神が降臨するところを、3D 眼鏡のようなものを使って、観客参加型にしたところに「降臨」の面白さがあった。
クライマックス、神が降臨する場面があって、そのとき、観客にあらかじめ渡された「目元にかざず【葵】」という名で、「偏光フィルム」を使った眼鏡をかけると、布で覆われた向こうに、神様の影が見える。このトリックに高まった気分はやがて厳かな思いに昇華した。

神々のために生まれた


当日券獲得に並ぶ観客も多く、注目度の高いことが窺われた、この催しを手がけた宮本は、公演の意義をこのように語っている。

「いくつもの重要文化財の歴史的建造物と、古代から受け継がれて来た自然と共に織りなす奉納劇です。上賀茂神社は平安京が出来る前から、京都を見守って来た最古の神社です。その神社境内で代々語られてきた山城の風土記の舞台化は、それぞれの皆様の思いがあるだけに大切に演じられなければと思います。また宮司がよくおっしゃる『不易流行』のように歴史を守りながらも、新たな方法で現代の、これからも人々に単なる昔話ではないと感じていただけるよう、物語、精神の素晴らしさを伝えることを大切にしました。新たなテクノロジーと、古代から流れてきた場の気の融合をみていただきたい。

稽古は、京都、大阪含め 大学 合唱団と多く方と 小雪さん、尾上さんはじめ素晴らしいプロの役者さん方との混合です。それも式年遷宮後の新たな未来に向けて意味あることだと思います。もちろん、場所が、時間が、生活のリズムが違う方々と一つの作品に作り上げるには、スタッフの大変な努力があり、それは苦労でもありました。しかしこの苦労が報われ、それぞれ参加した方もご覧になっていただいた方々も一生忘れる事のない 感動と体験を受け取っていただければと思います。この乱世の世だけに、何が大切なのか、聖なる空間でもう一度感じていただく それが風土記を舞台化した理由です。舞台、照明作り、常に参拝者に賑わう上賀茂神社で徹夜で、作り上げました。

はじめての野外劇、はじめての奉納、はじめての境内での劇、私にとって全てはじめてずくしで戸惑うことも多くありましたが、多くの方の協力で完成しました。もともと劇は、世界中どこも、神々のために生まれたと言っても過言ではありません。その意味でも、本当に原点に立ち返れた喜びを感じています」


神様に祈りを捧げるいい機会


また、宮本は劇の開幕前に様々なひととのトークも行った。
23日は上賀茂神社宮司・田中安比呂、24日は京都市長・門川大作、在京都フランス総領事・シャルル=アンリ・ブロソー、25日は小雪。


私が見た日は門川市長の回で、宮本は“神の降臨を、境内のなかで演出するなんてこんなプレッシャーはない“と告白し、“神は心の中にある”ということを大事に降臨の場面の演出を変えたと語った。
門川市長は、交通整備のために行う上賀茂神社のそばの御薗橋の拡幅工事についても語り、理解を呼びかけた。
この橋の工事に当たりケヤキが伐採されることがニュースにもなっているので、地元では気になる出来事なのだろう。

式年遷宮で社殿を新しくするのと同時に橋も新しくすることについても、神様に祈りを捧げるいい機会だったのかもしれない。
こうして橋が広くなると、観光客もますます動きやすくなって、観光都市京都はいっそう盛り上がるだろう。
(木俣冬)